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0話「わたしには……」

 SASUKE全国大会、最終予選でひよりはスタートしようとしていた。

 私の前のメンバーはみんな頑張ってくれた。だから、行ける。違う、行かないといけない。私はリーダーだし、リーダーだからとかじゃなく私が始めたことだし。……違う、私は勝ちたい、誰にも負けたくない。


──プッ……プッ……プッ……ピィー

 

 スタートのブザーが鳴り響くと同時にひよりは短い助走を全力で駆け抜け、最初のエリアへと飛び移る。


 まずは右へジャンプ、そしてすぐさま左へジャンプ。左右交互に取り付けられた台を器用に飛び跳ねていく姿はまさに忍者。細かい動きはひよりにとっては楽なものだった。


 続くエリアはジャンプハング。トランポリンを使い遠くにあるネットに飛びつくというエリア。水平方向への飛距離の長さ、垂直方向の高さは女性にとっては厳しいものである。

 

 ひよりは一呼吸置くと、ネットの中心に吸い込まれるように一気に走りだした。右、左、右、左──ジャンプ! 地面から離れた足はそのままトランポリンへと放物線を描きながら吸い込まれていく。


──ドンッ!

 

 トランポリンを思いっきりに蹴る。トランポリンがその力でそのままひよりを空中へと投げ返す。一瞬にしてひよりの手がネットへと近づく。


「んっ!」


 ネットを掴めば、やり場を無くした下半身だけがそのまま前へと突っ込んでいく。これに腕の力だけで耐えなければならない。身長が低い分相当な勢いで飛んでいるため、かなりの負担となったはずだが、顔色は全く問題ない。


「がんばって、ひよりちゃーん」


 ビショビショに濡れタオルにくるまれたわこが応援しているのが見える。頑張ってくれたところを思い出して少し目が潤むが、集中するために今は忘れる。勝たないとわこの努力が意味なくなってしまう。


 ネットを下からクモのように這い、渡り終えると先には5本の棒があった。足元から階段のように上がっていくその棒はログサンダーと呼ばれ、回転する細い丸太を階段のように駆け上がらなければならない。非常に高難度なバランスエリアである。


「ふぅー」


 体から息を抜き、集中力を高める。普段の私なら行ける、バランスは大丈夫!


「ハッ!」


 お腹から全力で叫んで丸太を登っていく。右足で一段目、左足で二段目、もう一度右足で三段目──!


 何だ行ける、全然回らないじゃないか。


 そう思って左足を出したとき、次の丸太が足を拒んだ。左足は行く先がなく、そのまま前へと落ちていく。


 5本目の丸太には右足ではなくひよりの顔が近づいていた。ああ、また落ちてしまうのか。今回も頑張ってきたし、自信がないエリアもいっぱい練習した。みんなが助けてくれて、あのコーチもいっぱい応援してくれた。


 全身の力が抜けてきた、このままだともう水面にぶつかる。負けたくなかったな、でも運が悪かったか。バランスエリアなんて運だよね……こんなのどうしようもないよ。


「諦めるなっ! 今のひよりは諦める権利なんてないんだ!」


「ひよりちゃんっ! いけるよ絶対にっ!」


 ひよりは手を伸ばした──目の前に迫る、その丸太へと。

JKひよりが仲間やコーチと一緒にSASUKE完全制覇を目指すサクセスストーリー、ここに開幕。


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