天白家の日常 2
ノリで書いた第二弾
今日は土曜日。
僕がだれだか言ってみろ!
どうも、世紀末覇王です。本日は天白家二階からお送りいたします。月刊! 世紀末覇者! を世紀末覇王の部屋からお送りいたします。
ドン!
おお、これはかの有名な壁ドンというやつですね。心ときめきます。
『エンジェル、うっさい』
「名前ネタはやめろぉぉぉぉ!」
壁の向こう側からの然の発言に絶叫する。名前ネタは……名前ネタだけはダメなんだ。
僕が項垂れているとコンコンというノックの音が聞こえてきた。
「……開いてるよ」
僕の許可が下りたからか扉が少しだけ開けられ、その隙間から然そっくりな顔立ちの女性、天白パルが顔を覗かした。
「なんだよ。母さん」
「……天白にする? 使郎にする? そ・れ・と・も、天使にする?」
「呼び方⁉︎ それ呼び方なの⁉︎ 母親なら使郎にしろよ!」
「あら使郎にしろよってさぶいわよ? エンジェるん」
「ギャグじゃないよ⁉︎ あと呼び方変わってるね?」
「今日の朝ごはんはこの季節ならではの鍋だから早くしてね〜」
そう言いながら母親は視界から消えた。
「ちょっと待て! 今梅雨っていうか初夏!あとなんで朝から鍋なんだよ!」
呼び名に衝撃を受けていた僕は母親が言っていた朝ごはんを思い出し我に帰り叫びながら部屋を飛びだし、機嫌が悪そうなパジャマ姿の然と顔を合わせる。
「使郎、朝からうるさい」
「うっさい! 使郎って呼ぶな!」
「朝から騒がしいな、然、使郎」
そう言い爽やかにむかつく笑顔で父親、天白莉音がやってきた。
「「蹴るぞ、父よ」」
「パパに対しての扱いひどくない?」
「私と使郎を放ったらかしに500円しか夕食代に置いていかない父親なんてその扱いで充分」
「然、お腹減ってるのか?」
どうやら然の機嫌が悪いのは空腹のせいらしい。
「ええ、おかげで朝から使郎が楽しみに残していたいちご大福を全部食べてしまったわ。げぷぅ」
「お腹へってないじゃん! というかなに人のやつ勝手に食べてるんだよ!」
ああ、よく見ると然の口元に大福の粉ついてるし! おのれ! 僕の大好物を!
「安心して使郎」
「え、」
そう言ってニッコリと無表情なりに笑顔を浮かべた然は袋を僕に手渡してきた。
あ、食べたってのはうそだったのか。
「粉は残しといたわ」
「片栗粉じゃねぇかよ!」
こいつに気遣いとか無理! せめて砂糖も貰わないと。
「早くリビングに行かないとママが怒よ。怒」
「そりゃまずい」
顔色を変え父親がリビングに向かう。
「あれ、才華は?」
「家出した」
「はぁ⁉︎」
末っ子の天白才華はまだ小学生だ。世間に絶望するのはまだ早いはずだけど。
「教会の神父さんにマジカル八極拳を習いに行ったわ。夕ご飯には帰ってくるって」
「マジカル八極拳⁉︎ というか家出すらない!」
というかマジカル八極拳! なにそれ⁉︎ 強そう!
「でも昨日まであいつ空手家になるっていってなかったか?」
「揺れ動く小学生だから仕方ない」
そういうと然は興味がなくなったのかリビングに向かい歩き出した。
リビングに入るドアを開けた瞬間、視界が揺らぐ。
「「暑⁉︎」」
部屋の中のはずなのに空気が揺らめいているしなにこれ! めちゃくちゃ暑いんだけど。
リビングのテーブルにはガスコンロに乗せられた鍋がグツグツと音を立てていた。
「あらようやく来たの? 遅かったわね」
そんな地獄のような空間でも天白パルは汗一つかかずニコニコと笑っていた。となりの父親はすごく汗をかいてて不健康そうにしながら鍋を食べていた。
「……なんで冷房つけないの」
すでに汗をかきつつあるので僕はエアコンを指差し尋ねた。こんなに暑いんだから入れてもいいと思うけど。
なぜか横の然が冷房から視線をそらしてるけど。
「冷房さんはね。今日はおやすみなのよ」
「冷房が?」
ニコニコ笑いながら言うと母親に聞き返した。冷房が休み? ついに冷房はストライキを起こす時代が到来したのか。
「最近冷房さんの調子が悪いみたいでよく休むのよ」
「それ、休んでるんじゃなくて故障してるだけだよ!」
やっぱりストライキじゃなかった! ただの故障だし。
「それで触ってみたらとっても熱かったのよ!」
「まぁ、電気製品だからね。故障してたのなら付けてたら熱を発するだろうし」
「だから然ちゃんに相談したのよ」
「然に?」
横の然を見ると暑さのせいかダラダラと汗を流していた。なんだろう、嫌な予感しかしない。
「然ちゃん言ったわ。『私達でさえ熱中症になるんだから冷房なんてもっと熱中症になりやすいに違いない』って」
「然……」
「風が呼んでいるわ」
僕が睨み付けると然はわけのわからないことを言いながらリビングの隅に設置されている扇風機の前に陣取った。
「そうして然ちゃんは冷房さんに日頃の感謝を込めて……」
「ファぁぁぁぁぁ〜 ワレワレハテイジンダアアア」
然が扇風機に向かいなにやら言っている。なんで地底人なんだよ!
「水をぶっかけたのよ」
「然ぃぃぃぃぃ!」
我が家な貴重なクールダウンの手段をこいつは壊した! というかトドメをさしやがったのか!
「あの冷房、喜んでたわ」
「ほほう? どこがどう喜んでいたか僕に教えてくれよ」
「火花だして喜んでたわ」
「感電の危険性を考えろ!」
「防水じゃない冷房が悪いのよ」
「そこまで家電は防水に対応してねぇ!」
くそ! だから周りがなんか湿気てるのか! それとなんかベタベタするのはなんだ?
「然、水になにか混ぜたの?」
「母さんがなにか入れてたわ」
「ああ、入れたわよ〜」
然の言葉に母さんがポンと手を叩き答えた。
「日頃の激務におつかれだろうとリンゴジュースを混ぜたの〜」
「あなたもトドメ指すのに協力してるんじゃないですか!」
そうだ。天白家の女性は致命的なまでに機械と相性が悪いんだった。
「とりあえず、電気屋に電話してとあ、然と母さんは電話触るなよ? 父さん、電話か、け……」
僕の目に入ったのは異様なくらい汗を流したせいか危ない顔色をした状態で机に突っ伏した父親だった。
「父さん! どうしたの!」
「な、鍋があ、あばぁ……」
何かを伝えようとした父さんはがっくりとし意識を失った。
「父さん、一体、なにを……」
父さんのよそっていた器の中を見ると甘ったるい匂いを放つ塊があった。
こるは一体……
「ああ〜、当たりのいちご大福を食べたのね〜」
隠し味と言わんばかりに笑顔で母さんは告げる。
「犯人はおまえかぁぁぁぁぁぁ!」
「さすがに食べれないわね」
むんむんとするリビングに僕の絶叫と然のつぶやきが響いた。
天白家は今日もいつも通り平和です。(父親食あたりと脱水で入院)
受けがよかったらまた考えます