再び魔王と
魔王! 覚悟!
と、腰に刺さった短剣を取ろうとして、パジャマ姿だったことに気が付いた。
短剣・・・忘れた・・
またしても終わった。
戦わずして、終わった。
私らしいといえば、私らしい。
役立たずの最期にはふさわしい。
諦めた私を魔王は抱き上げる。
そう。殺すために、抱き上げる?
「こんな恰好で。寒くないか?」
「えーと」
「ん?」
私、殺されないの?
「ま、魔王、さま」
「何だ」
「どうしてここに?」
「お前が一人でいたから、心配になって」
「え?」
心配、してくれたの? 何で?
「娘が夜に一人で外にいたら、心配するだろう?」
ストンと納得した。
魔王は、というか、魔族は、子供に優しいんだ。
だから、殺さないでいてくれたし、面倒を見てくれたんだ。
チリリ。何かが引っかかった。
そのほつれた糸を手繰ろうとすると、
「眠れないのか?」
また魔王が優しく問いかけてきた。
心臓から、何かが込み上げてきて、なぜか泣きそうだから、私は何も言わず、首を横に振った。
「私の寝所に行くか?」
「え?」
「一緒に寝るか?」
いっしょにねる? まおうと?
単語が理解できなくて、脳内で検索していると、
魔王が笑った。
「そんな顔したのは、お前が初めてだ」
そんな顔ってどんな顔?
「もうよい。あったかくして寝るんだぞ」
ふわっと身体が浮いて、私は自分のベッドの上にいた。
まただ・・・。またあの魔法だ。
私は今起きた出来事が理解できなくて、ちゃんと布団をかけて寝ながら、ぐるぐると考え続けた。
ぐるぐると考えて、考えて、そして寝た。