ジョブチェンジ! sideリン
一つだけわかったのは、勇者になりそこねの私だけど、もう一度魔王を倒しにいかなくちゃいけない、ということだった。
次の日、またおむすびを持って、今度は迷わずに魔王城に向かう。
「何だ?」
門番に気づかれた。
「あのー、中に入れたり、しませんか?」
「しない」
そうだよね・・・。
落ち込んでると、
「何だ? 働きたいのか?」
反対側にいた門番がそんなことを言った。
そうか! その手があったか!
「はい!」
「そうか・・・。ただここは紹介状がなけりゃ働けない」
ですよねー。
「知り合いのところでよけりゃ、紹介してやるが?」
見かけと違って、優しい門番さん。
せっかくだけど、他のところでは意味がないのだ。
「ありがとうございます。考えます!」
一度、宿屋に帰ろう。
魔王城に侵入するには、働くのが一番だ。
紹介状・・・どうすれば手に入るんだろう。
そんなことを考えていた私に、おかみさんが手紙を持ってきた。
「あんた宛だって」
封をあけると、それはなんと、魔王城で働くための紹介状だった
「ほ、本物?」
「どれ。あー、本物っぽいね。ご大層な印鑑まで押してある」
門番さんが送ってくれたのかな?
おかみさんに見送られ、私は魔王城で働くことになった。
ラッキーだな!
魔王城ではメイド、という職業を得た。
メイド、はよくわからなかったが、掃除したり洗濯したりするらしい。
またしても修行が役に立った。まぁ、修行ではないのかもだけど・・・。
城内を案内しているときに、気配を感じた。
魔力を感じない私でもわかるということは・・・窓からのぞくと、そこにはやはり魔王がいた。
「覚悟!」
窓を乗り越えようとすると、
「何やってるの!」
先輩に引っ張られ、お説教された。
「窓から身を乗り出しちゃ駄目でしょ!」
そうですよね。仕事中ですもんね。
私は仕事が終わるまで、魔王討伐を諦め、仕事に専念することにした。
夜。魔族も寝静まる夜。
ついにチャンスがやって来た!
支給された部屋を抜け出し、修行で習った忍び足で廊下を進み、庭に出て・・・
私は魔王の部屋を知らないことに気がついた。
そうだった。最初の時は、荷物として運ばれていたから、場所なんて知らなかった。
しょぼんとして、部屋に戻ろうとしたその時。
「何をやっているのだ?」
聞き覚えのある低音ボイス。
魔王が後ろに立っていた。