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そもそも、私は sideリン

そもそも、私は魔王に襲撃された村の子だった。

たまたま生き延びた私は、近くを通りかかった院長先生に助けられた、らしい。

らしいというのは、それ以前の記憶が今の私にはないからだ。

残っているのは真っ赤なイメージ。


院長先生は、勇者を育てる学校を経営していて、先生のおかげで私は無償でその学校に入れた。

本来ならば、エリートしか入学を許されない。

それなのに私には、魔力がまったくなかった。

院長はそんな私でも見放さないでいてくれた。

私もそれに応えようと、必死で修行した。

でも・・・全然、ダメで・・・。

誰よりも早く稽古に出て、誰よりも遅くまで勉強した。

魔物討伐には役に立たないから、他のこと、例えば掃除とか洗濯とか、そういうことで役に立とうともした。

だけど、私たちは勇者になるために学校にいる。

使用人じゃない。

だからいつも、怒られてばかりだった。

当然だ。そんな私に存在理由なんてないのだから。


ある時、グループワークで魔物を倒す授業があった。

その時のリーダーだった子が言った。

「お前、魔物倒すまで、帰ってくるなって。院長先生言ってたぞ」

捨てられたんだ。

魔物どころか虫だって殺せない私。

今まで役に立たない私を育ててくれた。遅いくらいだ。

頷いて、チームから離れる。

魔の森は奥に進めば進むほど、強敵がたくさんいる。

一人でなんて自殺行為だ。

だけどもう、私なんて死んでもいいんだって、思って。


気づいたら、森を抜けていた。

信じられない。

森の先にあるのは魔族の町。

夢でも見ているのかと思って、町と、そこに住む人を眺めていると、

「どうしたんだい?」

声をかけてくれたのが、宿屋のおかみさんだった。

「おやまぁ。あんた人間かい?」

おかみさんはどこからどう見ても、普通の人間にしか見えなくて、でも魔族で、町行く人も皆同じだった。

おかみさんは私を宿に泊まらせてくれて、私は警戒したけど、そもそも死ぬはずだったから、腹を括って、出されたご飯を食べた。

おかみさんは、魔族だけど、今まで会った人の中で、一番優しくしてくれた。


「おかみさんは、人間みたいだね」

私が言うと、おかみさんは目をまん丸にした。

「うーーん。まぁ、見かけはね。けど、魔力がわかれば、違いがわかるかも・・・」

そう。魔力のない私には魔力の大小が感じられない。

「そっか・・」

落ち込む私におかみさんは、力持ちでもあるんだよ、と、大きな荷物を軽々と持ち上げてくれた。

魔族はすごいな!


「お嬢ちゃんは、何しに来たんだい?」

魔物を倒そうと思ったけど、魔物には会えなくて、魔族であるおかみさんは優しいから、倒す必要もなくて。

「魔王って会ったことある?」

この大きな町なら、魔王もいるかもしれないと思って試しに聞いてみる。

「あるよ」

やった!

「あんた・・・まさか、魔王様に会いに来たのかい?」

「うん」

頷く私に、おかみさんは顔色を変えた。

「魔王様は、怖い人だから、やめたほうがいいよ」

「会う」

決意の固い私に、おかみさんも折れて、おむすびを持たせてくれた。

「暗くなったら帰ってきなさいね」

会えないと思っているな!


とはいえ、宿を出た私に、魔王の場所などわかるはずもなく。

ウロウロしていると、大きなお城が見えてきた。

屈強な門番もいる。

どうにか入れないかと探っていると、大きな馬車がやって来た。

「魔王様への荷物かい?」

門番が聞く。

「へい。南の村からの貢物ですわ」

喜びで身体が跳ねる。

これに乗れば魔王に会えるかもしれない。

私は荷台に乗り込み、大きな箱を開けた。

幸い、箱には鍵などかかっておらず、中にも大小さまざまな箱が入っている。

そのスペースに入り込む。

修行が役に立ったな。

身体を小さく小さくして、じーっと待つ。

魔王に会える、その瞬間を。

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