14/15
記憶 sideリン
赤い。
火だ。燃えている。
呼吸ができない。
その見覚えのある苦しさに、私は全てを思い出した。
村を燃やしたのは、魔王じゃない。
あれは、そう。
勇者だ。
私の両親は、勇者に殺されたのだ。
燃える村。自分の家。
院長が私の前に立って、
「全てを忘れろ」
と言った。
ごめんなさい。魔王様。ごめんなさい。
魔王様は、何も悪くなかった。
殺そうとして、ごめんなさい。
「まおうさま」
こんな私に、
何もできなくて、迷惑ばかりかけた私に、
優しくしてくれたのに、
何もお返しできなくて、
「ごめんなさい」
「違う」
その声が、私を暗いところから引き上げた。




