人間界 side魔王
狼藉を働いた勇者は、かろうじて生きていた。
「魔王様が止めを刺したいかと思いまして・・・」ムラタの気遣いは褒めたいところだが、殺すのではなく、生かしてやることになるとは。
しかもその為に、かなりの魔力を消費した。
ムラタは私の気がおかしくなったのかと慌てていたが、自分でもおかしくなったとしか思えない。
命拾いした勇者も驚くレベルの話だ。
そいつから聞くところによれば、勇者は王立勇者学院を卒業してなるものらしい。
兎もそこにいたというわけか。
リンを知っているかと問えば、知らないと言うことだった。
殺してよくないか?
頭をよぎったが、次はないと、人間にも自分にも言い聞かせ、蹴飛ばして帰した。
骨は折れただろうが、構うことではない。
兎の過去を調べるため、私は人間界へ行くことにした。
人間界は森によって、次元が隔たれている。
たまに迷い込む人間が、私の遊び相手になるわけだが、まさかこの私が出向くことになるとは。
瞳の色を変え、人間のような服装をし、さっさと次元を越えた。
なんとか学院は、それなりの建物だった。
院長らしき男を確保し、話を聞くのも鬱陶しいので、記憶を引っ張り出す。
結果は・・・その場で院長を潰すことにした。
過去を調べることが正解だったのか、わからない。
ただ私はその過去を封印することにした。
この世で、兎と私だけが知る事実だ。
それもいつかは、私の手で忘れさせてやりたい。




