廃部
月曜日。妙にしんどいのは気のせいだろうか。部室のソファを独り占めして寝ていると気持ちいい。
「あんた、邪魔なのよね。独り占めすんな!」
俺の眠りを邪魔する悪魔が俺の前に立ってる……。なんだ、美波か。
「んー? あぁ、なんだ、美波か。ならいいや……。
そう言ったあとに腹に激痛を浴びた。自然と、目を開けさせられる。
どうやら、俺の腹をキッキングしてくれたみたいだな。怒る気にもなれんわ。
「あぁー、もうっ! 苛つく! 何回蹴っても起きない!」
美波さん。起きてます。僕起きてますけど起きません。
「よくあることだ。ほっといてやれ」
だてみち先輩が俺の味方してくれてるっ! 初めてやったことだけど、ありがてぇわ。
はぁ……こんな日がいつまでも……つづ……けば……。
ガラン! 部室の扉が思いっきり開けられ部室内に鳴り響く。ついでに俺の眠りも消し飛ばされた。
そこに立っていたのは、憎き存在生徒会長、真光信長だった。
跳ねた真っ黒髪に、整えられた制服。青色眼鏡でよく似合うぜ。風紀とよくつるんで人気はねぇのは確かだ。
なんだってこんな日にあんな顔面見なきゃなんねぇの? 地獄スカ、ここは。
「僕は生徒会長、真光信長だ。今日は君たちに用がある」
はっ? 月曜に生徒会だと。なんか悪いことしたかね。俺の学校では火曜日に悪いことしたやつが反省文を書かされる。月曜日に悪いことやった奴は朝早く来いと通告されるからそうかと思ったのだが……。
「廃部、の件だ」
一瞬空気が凍結された感じがした。えっ? なんで……八人いるお!? セーフだお!!? って思ったさ。
「俺たちは八人揃ったはずだ。潰すことは無理だ」
「なぜ幽霊部員まで含めなければならない」
「幽霊部員でも八人は八人だ」
「人数に加えることすら無理だろう。しかも、僕たちは幽霊部員を含めるとは誰も言ってないはずだ」
たしかに、幽霊部員を含めるというのは生徒間だけの噂でしかなかった。本来普通に考えれば、抜くのが当然だったかもしれない。
「明日、生徒会室に二名来なさい。どなたでも構いませんが、話のわかる人なら楽ですけどね」
礼を一度し、踵を返して部室から出て行った。
大変なことになった……。でも、チャンスはあるわけだ……。
「で、誰が行く」
「だてみち先輩なんでそんなに軽いんですか!? もうちょっと事態を把握してくださいよ!」
「俺は無理だ。明日、用事がある」
「なんでだいきちまでも……!」
こいつらおかしい……今まで、廃部って感覚が薄かったのは俺も同じだ。実際なってみないとわからない。けど、今はガチな方だ。廃部にしようとすりゃすぐにされるだろう。もうそこまで来てるのに……。
「あたしは伊達先輩と、そうくんでいいと思う」
「あたしも」
麻由美も美波も……。
「あたしもそれで」
美音もか。
「異論なし」
白土先輩……。
「そうすけ」
「……なんすか」
「今はこれしかできないんだ。大変だとか言ってたって変わんない」
確かにその通りだ。
大変だとかヤバイとか言って変わるなら言えばいい。けど、無理なのが現実なのだ。
これが最後の部活動になり得るのか。そうだとしたら今はめいいっぱい楽しむべきか。
「先輩」
「どうした」
「PSPやりましょ。一狩り行きましょうよ」
「そうだな」
今回は俺も持ってきてる。そういうお年頃なのだ。
皆はポケットからPSPを取り出して起動した。
「それじゃあ行くぞ?」
だてみち先輩はノリノリだ。もちろんみんなもね!
「一狩り行こーぜー!!!!」
熱が覚めることはないな。
ついに生徒会か。生徒会の連中は悪く見られがちだからねぇ。そうとは限らんか。風紀は大体そうだろうが。
次も会えたら会いましょう