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夏に

 夏の始めに弁当っすか? しかも、ツッコミ入れんの俺かよ!!

 夏休みだぜぇ!!! うひょっほー!!!! 楽しいぜー!!!

 ……なんてな。騒がしい夏休みだぜ。外で子供がキャーキャー叫んでるぜ。

 俺か? 楽しかねーな。別に夏休みって言ってもさ、大したことねえんじゃねえのかな。どこに行くって訳でもないし? 部活とか訳わからんし? 家にいても暇だし? いろいろあんだよ。

 しかも今は恐ろしい状態にあるわけだしよ。

「はぁあ? おまえ本気で言ってたらぶっ殺すぞ」

 元ヤンの母さんにリビングで詰め寄られていた。何でかっていうとだな、母さんが俺に今日は買い出しに行かせるつもりだったんだが、俺があいにく用事を入れていたもんでキレ始めたんだよ。勝手すぎるわ! そんで俺は今、殺されかけてんの!

「親として言う言葉じゃないな!! 昨日約束したんだよ。だから今日は出かける!」

「それ本気で言ってんのか?」

「おうよ」

 ぐふっ。溝に拳が一発はいる。それに動じていては母さんは許すわけがねぇ。

「とにかく! 俺はこの家から今日はいないから! よろしく!」

「ふざけたこと言わなくていいから。買い出しと遊ぶのどっちが大事よ」

「遊ぶ方だよ」

「明梨でも買い出しを選ぶわよ。兄として恥じろ。ぶっ殺すわよ」

「そっちが言えたことか!!」

 まったく変な親だな。

 なんだかんだで許してもらった俺は部室へと向かった。



 部室へ向かう途中、偶然に美波と会った。

「ん。あぁ、美波か。今日は仕事じゃないの?」

 答えはわかってんのに一応聞いてみた。

「は? いちいち言わなくてもわかるっしょ?」

 ……こいつ。

「そういや、今日は弁当作ったんだろ? 今見してくれよ」

「バカじゃないの? みんなであんたに食わせるんでしょうが」

「ですよねー」

 母さんといい、美波といい……世の中には変な人が生まれたもんだな!!

 確かにこいつには一目惹かれるよ? けど、本当に一目だけ!!

「どういう感じのを作ったかは教えれるだろうよ」

 こういうと美波はドヤ顔で答えた。

「冷食が入ってない全手作り弁当」

 ……え。ちょ、何? めちゃくちゃ気合入ってるよこの人!! 

「……これってなんか勝負事なの?」

「さぁ?」

 おいおい……。

 そして、訪れる沈黙。そう。俺とマンツーマンで話すときは大抵こうなる。俺のせいだよ、ごめんね!!

 話題、話題……。

「そういやさ。俺ずっと思ってたんだけどさ」

「なに」

 なんか目怖いんすけど。

「おまえがこの部に入った理由ってちゃんと他にあるんじゃね?」

 こいつがこの部に入ってきた理由は楽しそうだから、と。

 こういう人生勝ち組が学校で潰れかけだった部に、そんな理由で入ってくるとは思えないんだよな。

 最初は普通な理由で許せた。けど、日を重ねるにつれておかしいと思っちまったわけよ。

 別の理由があってもおかしくないと思うんだが……別にそんな深い理由は期待してないけどね。

 美波はしばし黙り込んでいた。そして、

「……なんだと思う?」

 答えじゃないよ!! ……なんて言えるわけなく、少し考え、

「す……好きなやつとか……いたとか?」

 ぐふっ。はい、パンチ一本ね。

 美波は謎の笑みを見せた。

「ま! 言う気になったら言ったげる」

 ほんっと……じらすよな。




 やっと部室についた。あの後も、話し続けんのに精一杯でよ。あいつから話をつくろうとしないから困るんだよな……。

 こんな苦労も知らず、美波は陽気に部室に入ってった。

「こんちわー!」

 俺と話してた時と全然違うテンションなんですが? なにさっきまでのとの温度差。

 部室にはもうみんながいて席についてテレビ鑑賞をしていた。

 美波は俺の心の中の嫌味なんて聞こえてるわけもなく普通に席に着いた。

「うぃーす」

 俺も一応礼儀としてしておく。

 だてみち先輩が一番に俺に気づき、俺への第一声が、

「だれだ、きみ」

 これよ。

「そういう神経痛めるようなことはやめてくださいよ!」

「知らない人へかける言葉だと思うんだけど……ちがったか?」

 はいはい。こういうのは気にしたら負け! 

「早速だが、そうすけも来たことだし弁当をだしてくれ」

「ノリがいきなり崩れてますけど??」

「「はーい」」

 俺の意見は無視するのね。

 だてみち先輩がのんびりと指示を出す。

「田中ちゃんから出してもらおうか」

 お。一番いい感じのからですね? さすがっすね先輩!!

 だてみち先輩が麻由美の弁当箱を持ってくる……って。

 ちょっと待て……弁当じゃなくておせちの箱置かれたのおかしいだろ!

 俺は恐る恐るふたを開ける。

 ……す、すげー。……なんだこりゃ。

 たくさんの具材が色鮮やかに弁当……じゃなくおせちの箱に敷き詰められている。

 これぞ弁当と言えるような見事な配列。そういうのは全然詳しくないけど、素人目でもそう感じた。

「えっと……ツッコミをするとこがないんですけど……」

「えへへ……うれしいなぁ」

 麻由美は今のを褒め言葉と解釈したみたいだ。まぁ、そうなんだけどね。

 ツッコミを準備していたから返す言葉がない。どうしようか……。

「…食べていいっすか?」

「まだ駄目だ」

 だいきちが地味にそういった。

「へいへい」 

 何かとみんなツッコミを期待してたっぽいから空気が重い……ごめんね!!

「次、美音ちゃん」

「は……はいーっ!!!」

 テンション高ぇな、美音さん。

 美音の弁当が俺の前に置かれる。どきどき。

 今度は普通のピンクの弁当箱。過度な期待は避けておく。

 ぱかっ。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 納豆ごはん!!! くせえええええええええええええええええええ!!!

 おかずは確かにきれいだよ? でも、納豆ごはんのおかげで香りが納豆一色!

 でも、せっかく弁当は作ってくれたんだし、傷つけるようなのは言えないな。

「……どう?」

 美音が期待の眼差し。ツッコミを待ってない目だな。

 よしよし。

「普通にうまそうじゃん」

 俺の神対応に誰かお褒めのお言葉をください。

 美音はこの対応に何故かものすごく動揺していた。

「え、え? うん、えっ、そうっ!!? ……ならよかった……」

 ほうほう。普通に喜んでんじゃん。やっぱり俺は神かもしれん。

 すると、なぜか珍しく峯坂が絡んできた。

「松阪。おまえは女ったらしか」

「ちげーわ!! 突然なんだよ!」

「どうせ次も同じような反応だろ。こいつらはツッコミを楽しみにしてるんだよ」

 ……マジなの? え、じゃあ普通に喜んだ反応するのやめてもらえます?

 よしそんじゃ次からはどんな普通の弁当でもツッコミ入れてくぜ。

 そしてだてみち先輩がまた指示をする。

「次、未華子よろしく」

 よし! この人ならいいツッコミができそうだ。さてどんなだろう。

 紫色の弁当箱。ちょっとどころの怪しさではないが……開けるぜ。

 ぱかっ。

「白米だけかっ!!!」

 もうこれは弁当とは言えない次元に入ってますよね? ふりかけもなしに白米敷き詰めただけって……。

 一種の嫌がらせだな。

 はぁ……もう。白土先輩が喜んでくれてるだけまぁいいか。あんまり人の弁当とかにケチつけたくない性分の俺はさっきの一言だけでツッコミを終了しておいたのだった。

「美波……おまえが最後か……」

 俺はこのときすでに弁当の批評をすることに疲れ切っていた。

 あーもう、さっさと出して……さっさと終わらせてくれ……。

 そう思ったとき、だいきちが俺にこう言った。

「そうすけ。早くしてくれと顔に出すぎだ」

 え。エスパーですかあなた? もう交代してくれよ。

 俺はその台詞を目で受け流した。

 まぁ、美波の弁当からどんなんが出てくるかは気になるけどね。

「さぁ。ラスト来い!!」

「……きもいからそういうのやめてよね」

 はい、すみませんね美波さん。

 俺の目の前に弁当が置かれる。ほうほう、ピンク一色ですか。

 ぱかっ。

 っておいおいおい……。

「美波さん」

 俺は不思議な顔をして問うた。

「なに?」

「この愛妻弁当はなに?」

「あ……愛妻弁当じゃないわよ!!!」

 ものすごくキレた美波さん。

 いやいや……このオムライスの上にあるハートマークは何よ? 愛妻弁当にしか見えない。俺はそう思うんだけど? 違うんすかね。

「じゃあなんなんだこれは。なんというべきなんだ」

「お……オムライス……弁当」

 異常なほどの無理矢理感。

 深くは追及しないでやるけどよ。

「先輩……終わりましたよ」

 俺は脱力してそう言った。

 けど、だてみち先輩は俺の気も知らずにテレビを見ていた。そして顔だけで振り返る。

「ん? あぁ、そうなの」

「他人事ですね! 俺もうショックですよ……」

「どうした? あいつらにまたやられたのか?」

「かっこよく聞こえるけどすっとぼけだな!」

 もうホントやだよこの人……。

「そうくん?」

 俺は麻由美に突然呼ばれた。

「なに?」

「どれが一番おいしそう?」

「……そういう修羅場にもってくのやめろよな!!」

 いつの間にか俺はこの部のいじられ役になっていたとさ。めでたしめでたし……ってめでたくねぇわ。



 弁当はスタッフの皆さん(来遊部部員みんな)でおいしく頂きました。



 夕方。俺は家に帰宅した。

 部活で疲れた心身を休めるためにだ。弁当はおいしかった。意外にも納豆ごはんがうまかった。納豆が異常に味が強く、国産白米とよく合っていた。今日の主役は納豆ごはんだったのかもしれない。

 俺はリビングに入った。

 母さんと明梨は机の上にあるメモに書かれているとおりであれば買い物にいっているらしい。

 受験生連れて何してんだか……。

 ……リビングで立ち尽くす俺。一人でいるとたまにこうなる。

「はぁ……よし」

 俺がリビングから出ようとしたときだ。俺のケータイが鳴り響いた。

「はい、もしもし」

「もしもし、松坂さんのお宅でしょうか」

「はい、そうですが」

 だれだてめぇ。何俺の電話番号知ってんの、とは思わなかった。俺の男の勘ってやつだ。

「松坂さん。落ち着いて聞いてください」

「…………」

 俺は返事ができなかった。



「明梨ちゃんが、交通事故にあいました」

 


 

 昔の俺のトラウマが再び蘇る。

 

大分長く日があきましたね。次も結構日があくと思われます……。これからもよろしくです。

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