贈物
「でっかいなぁー……」
秋葉モールに入って周りを見渡し心からそう思った。
土曜日の午前十時頃。白土先輩へのプレゼントを買うために遠くまでやってきた。電車で一時間程度でついた。 秋葉モールは食料品、衣服、グッズ、カフェなどなどたくさんの店が連なっている。店の隣に店って感じで、初めて来るならどこか目印を見つけておくと楽に中をまわれる。客層は子供から大人まで様々。オシャレな子もいれば、ちょっと見るにふさわしくない人までもいて、彼氏彼女がイチャイチャしてるとか。
とりあえず、一階には用はないから、エスカレーターで上に登っていく。
エスカレーターの半分ぐらいに来たあたりで、後ろの幼い子供が、
「たっかーい。お母さん、高いよー」
とはしゃいでまぁ……。たまに見かける光景だ。子供らしい子供は見ていて可愛らしい。
それに比べ前にいる中高生あたりの女どもときたら! 後ろに中見えちゃうよ? すっげースカート短いけど大丈夫っ? って言いたいよ。けど、言ったら「キモいんですけど~」とか言われるオチがある。ここは幼い子供を見て見過ごそう。
二階につくと、早速地図が置いてある場所へ向かう。
「先輩。何買うんすか?」
「ストラップだな」
ストラップを買うなら二階でいいかな。二、三個いいのが見つかるだろう。いやー、ほんといいね。秋葉モールは品揃えがいいっつーかね。来て楽しいんだよ、マジで。いつか、彼女ができたらここに来てみたいと渋々思うのであった。
さて、一軒目。中に入ると、動物の写真とかポスターが貼ってある店だ。動物フェチ向けの店だな。白土先輩は何の動物好きだっけな。
先輩が犬のストラップを持った。
「あっ、それ可愛いっすね」
ある程度、品をすすめるのが俺の役目だろう。って、店員かよってな(笑)。
「ダメだな。未華子は犬が嫌いなんだ」
「へ、へー……」
嫌いなのを知ってるのに持つってどうかと思うが、自分が興味あっただけなら別か。
次はシマウマのストラップを持つ。
「えっとー……」
シマウマについてはどう言えばいいかわかんねー……。可愛いわけでもないだろ? とりあえずは、
「いいっすね、それ」
シンプル・イズ・ベスト。
「そうか? でも、未華子は動物嫌いなんだよな」
……えーーーーーーーーーー……
それからたくさん回った。アイドルフェチ店、匂いフェチ店など。それで、結局、織田信長のストラップを買った。ストラップを買ったときには、もう昼だったから安いマグドナルドで休息をとることになった。
「ふぅー」
「疲れたなー」
「そのストラップで良かったんですか? どこでも行きますよ」
「いや。これでいいんだ。未華子は織田信長が大好きだからな」
「そうですか」
冷たいオレンジジュースを口に注ぐ。おいちぃおいちぃ! そして、マグドのハンバーガーにかぶりつく。
百円マッグによってワンコインプラス自動販売機で買ったオレンジジュースで二百五十円で昼食は済んだ。当然。オレンジジュースを飲み干さずに。
マグドを抜けて、エスカレーターに向かっている時だった。曲がり角から急に人が出てきたのだ。しかも、二人。両者ともども後ずさりする。しかし、その二人は今会っちゃいけない人がいたのだ。
「未華子……!?」
「……」
そして、俺も。
「麻由美……?」
「そうくん……?」
…………。
ええええええええええええええええ!!??
白土先輩に麻由美!!? なんでこんなとこにいんのぉ!?
俺よ! 俺よぉ!! 冷静になってみるんだ! これは、これはチャンスでもあるんじゃねぇの? 麻由美も慌てているが、アイコンタクトを送った。すると、麻由美は「わかったよ」と送り返してきた。
「せ……先輩。俺、用事あるんで先帰ります」
「……私も、用事を思い出したんで……」
俺と麻由美は早歩きでエスカレーターへと向かってその場を立ち去った。
秋葉モールを急いで抜けて、外に出た。
「……っぶねー!!!」
「ふぁあぁ……!!」
俺と麻由美はさっきの状況をうまいこと切り抜けた。アイコンタクトで「とりあえず、俺と麻由美で外行くぞ」と伝わってよかった。幼馴染というのは色々とやるんだよ。
「おまえ……なんでここにいんの?」
「ええっ? うーんとぉ……」
「まぁ、別にいいけど。外で待つのもなんだし、先帰るわ」
「わ……わたしも……!」
ん? なんか様子がおかしい。さっきからもじもじして……。まさか、おまえ……
「おまえさ、トイレ行きたいんじゃねぇの? 待っててやるから、行ってきな」
「べ、べつに……トイレじゃないんだけど……」
「そか。じゃ、帰ろうぜ」
「うん……」
なんか調子狂うなー……いつものちょっと馬鹿にしてくる方が安心できるのに……。
ちなみに、俺はドМじゃないかんね??
電車を降りて、家に帰る途中。いつもの一本道にはいった。なんだか、今日は疲れた。別に先輩からどうなったかとかは聞き出すつもりはないし、あれがきっかけで付き合い始めてもいいと思うし。決して、邪魔はするつもりはない。
横に並んで、歩く俺と麻由美。ちらっと隣を見ると、いつもと違うような無言っぷり。帰りはずっと無言でいた。なんとなく服を見てみると、今どき女子ではないだろう地味な服装だった。スカートとかはいいとしよう。色だよね、色。暗いの、色が暗いのよ。焦茶色やら、薄黄色やら、灰色やらと、これもオシャレの一環なのかね?
と、突然麻由美が足を止めた。背中から夕日が差して、顔が影で暗くなっている。また、もじもじして……なんなんだよ。
「そ……そうくん!!!」
「は……はいっ!?」
突然大声を出されてビビる俺。
「そうくんって誕生日……もう少しだよね」
「そうだな……そういえばそうだった」
白土先輩と俺との誕生日は結構近めだ。両手を俺に差し出してきた。手には包装された箱があった。訳が分からず顔を見ると、影で暗くなっていってよくわからなかったが、顔を真っ赤にしていた。ように見えただけかもしれない。
「誕生日……おめでとう」
「あ……ありがとう」
麻由美から誕生日プレゼントをくれたのは幼稚園時代だった。そんな頃は男女関係なく過ごしてたもんだったから何にも考えず渡せたんだろう。けど、性別を意識してしまうとやっぱり幼馴染でもプレゼントは渡しにくくなるのか、小学生半ばからプレゼント渡しはいつの間にかなくなっていた。
だから、もう二度とくれないと思っていた。けど、またこういう日が来た。
そして、なぜ秋葉モールにいたのかも――なんとなくわかった。
俺はプレゼントを受け取った。
「俺さ……二度とこういう日来ないと思ってた」
「毎年毎年、この時期がくるとね……プレゼントを渡そうと思うんだけど、引けちゃって……」
「マジありがとな。嬉しいよ、これ」
中がどんなもんでもよかった。気持ちが伝わってきただけ、十分嬉しかった。
これからも、よろしくな。麻由美。互いに笑顔で向かい合った。
夜。ベッドに寝転がって寝落ちそうになっていた時だった。
メールが届いて、ケータイが俺を呼んでいる。
重々しい体を起こして、机の上からケータイを取る。
ケータイを開くと、だてみち先輩からのメールだった。急いで、メールを開けると、
――俺、プレゼント渡したよ。未華子、喜んでくれた。
――よかったじゃないですか。思いは、伝えれたんですか
次の返信がくることはなかった。その次の日にだてみち先輩に会ったときは普通だった。
白土先輩も変わった様子はなかった。
結局、どうなったのかを俺が知るときは遠い先のことになるだろう。
終わり方には数パターン思いつきました。しかし、このエピソードは後後に引っ張っていくパターン、このまま続いていくパターンなど。しかし、今回は後後引っ張っていくパターンを選びました。
理由は、いろいろとありますが……いいとしましょう




