期末1
梅雨が終わりに近づき、蒸し蒸しした空気が薄々消えてきた。
あの例の事件の後、貯まった部費で液晶テレビを購入した。
部室の中は、なんだか愉快になったもんだ。テレビにソファにボードだと……もうくつろぐには十分すぎる場所だ。来遊部に来遊した者にはそれなりに対応できるだろう。今度はエアコンを買うべきだろう。去年のあれは散々だった。
「ちーっす」
部室に入ると、どうやら俺含め二名のようだ。昨日買いたてのテレビでゲームをあぐらをかいて独占している女だ。
俺は例の女の背後に立ち、目でゴミを見るように見下してやった。な、に!? 気づかずにゲームに没頭だと……。画面を見ると、格闘ゲームのようだ。ほー、危ねぇ。ギャルゲーとかそっち系じゃなかったぜー……。
どうやら俺の視線に気づいたらしく、例の女は後ろを振り向いてきた。
「うぉおお!!? びっくりさせないでよね!」
例の女とは、美波のことだ。そんなに驚かれても困るけどな。
「おまえ、ゲームとかすんだな。ちょっと意外」
「は? 意味わかんないんだけど。死んでほしいレベル」
そこまでの内容ではなかろうに……。顔ちょっと真っ赤だぞ、変なやつだぜ。
ふと、美波の横に置いてあるゲームの本体とそのとなりにあるものに目がついた。ん? 『あたしの大事なもの、あなたにあげるね』? なんだ、このゲームケース。裏向きだったもんだからついついケースを手に取り、表を確認してみたわけよ。そしたら、
「ひゃぁあああああ!!!??」
ビックリした! おおおおおまっ!? おまえ本気でギャルゲーもってきてんのな! そっち系だったわ、やっぱり。18禁だし!
「何見てんのよ、あんた。キモいよ。キモいよ」
「二回言うな! これな、全年齢対象の物語なの! こんな話ししちゃいけんの!」
「えへへ……」
何照れてんの。
「いいから、先輩ら来る前に直しとけって。マジで」
「……は? なんで松阪に言われなきゃいけない訳? 苛つくんすけど」
お前らのモデル事務所どこだ。お? 本気でおかしいやつらしかいねぇんじゃねぇか?
「テスト前だし、軽く勉強しとけよ。俺、もう疲れたわ」
「……」
ソファに座り、くつろいだ。ふぇー、疲れ取れるわー。俺も勉強しなきゃな……眠りに少しずつ落ちそうなところに、
「ねぇ、松阪」
「……ん?」
目を覚ましてくれてどうも。
「あたしが……こんなゲームやっててどう思った?」
そうっすねー、普通に普通だね。そう言う意味じゃないだろう。
なんか、そんな目で見られちゃ怖いすよ。何かを訴えかけてるようなその目が。
別にキモイとかそういうのはあるけど、人の趣味に口出しする気ないし、どうってワケでもない。自由が一番だろ。俺はそう思うんだけど、どうすかね。
「趣味は趣味でいいんじゃないか」
「あっそ……」
けっ、なんだそりゃ。そっぽ向かれちまったぜ。まぁ、でも嘘つくこともないし……
正しい判断だとは思った。
期末テストが近づき、クラスに勉強ムードが流れ始めた。
でも、来遊部は違うんですよ。
その真逆、遊ぶことに目覚めてしまう。
けど、期末テストの時はいつもとどこか違った空気が来遊部に流れたという話。
俺は部室で、問題集を解いていた。ここの問題はたしか……あれをやるんだっけ。他のみんなはPSP、PS3とかゲームばっかだ。
「よーし、みんな。こっちちゅうもーく」
ボードを引き連れて、皆の視線を集めただてみち先輩。
「今回は勉強会はじめマース」
ボードに丁寧に字を書いていく。とっても嬉しそうな顔で。いやいやいやいや……
「先輩」
「なんだ。嬉しすぎるか」
「違いますよ! この連中とどう勉強会を行なえと!!?」
テスト前=遊び時間と考えるやつらと勉強はないわ。普通ないわ。
「仲間を信じてこそだろ」
「オタクに小説読者、ゲーマーに礼儀知らずですよ!? 無理無理無理無理!」
「誰がゲーマーよ!!」
自覚してるとは宜しいですよ、美波さん。ちなみに、俺と麻由美とだてみち先輩は普通だから含めてないけどね。
「オタクとは誰を示している」
「だいきちだよ」
あんたは自覚することから始めような。
まず、個人的に勉強したほうが効率いいよね、普通に。
「今週の土曜日だな。俺の家に来い。時間は一時でいいだろう。メールでまた連絡する」
「おかしいって!!! もう無理っすよ」
よし、休んでやろう。
「ちなみに全員参加な。勉強道具は自由に持ってくること。以上!!」
俺の考えはお見通しのようだね。
おつかれさまでーす。期末1という題名でしたが2もあるって意味ですよ?




