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名前のない住人たち

作者: 月蜜慈雨




 今日の詩はダメな気がする


 草臥れた老犬のように


 寄る年波に負けてしまったようだ


 惑いは乾風の中雨を乞うサボテンのように


 何かを熱望しているのかもしれない


 星は遠く 遠く 瞬いて


 どんなにジャンプしても掴めないように


 この心の一部が逸れたヌーのようになり


 牧羊犬ではない私はそれを追い戻すことが出来ない


 幾ら考えてもしっちゃかめっちゃかな頭の中は養豚場にも劣る


 この際だから飼料でも食い破ろうか 


 純白のベールを破るように静けさに溶けられたら


 いっそ駅伝のように誰かに感情をバトン出来たらいい


 歩いても歩いても 


 辿り着けない未踏の領域


 選挙カーのように五里霧中を宣言する


 ウグイス嬢が滑らかな声で話す


 分かりません 分かりません 分かりません 


 子どもが手放してしまった風船のように


 わたしの心の一部が離れていく 


 収縮し不定形となっていつかわたしの身体を覆い尽くすのだろうか


 わたしの身体をアパートに見立てたら


 きっとうらぶれたアパートだろう 


 蔦も絡まっているだろう


 廊下には点滅するばかりの蛍光灯があって


 錆びたドアノブが陳列され 


 トビラを開けると床板は禿げている


 その上に大きな雌猿が鎮座して金切り声を上げたいのに声が出ないから喉を掻きむしっているのだ


 別の部屋では息も絶え絶えなイルカだったり瀕死のツチブタもいる 


 わたしはそれを傷一つ付かず見る


 アパートには今日も名前のない住人が増え続ける


 見ている


 見ている 


 ここでは誰もが口無


 やはり今日の詩はダ





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