始まりは鎖のように連なって (チャプター3)
前回の続きです もし読んでいないのであれば前回を読んでから見ていただきたいです
開いていただきありがとうございます
ここで物語の人物は鎖真修斗から
鈴木未来に変わる
鈴木未来は、いたって普通の少女だった。
普通に朝起きて、学校に行き、学び、部活をして、友人と友情を深めた。
一家の一人娘で、父と母とも仲の良い、理想とも言える家族だった。
普通の少女だった。
彼女が中学1年生の時、父は急病により亡くなってしまった。
そして、彼女と母は二人で助け合って生きていこうとし、彼女は部活を辞め
アルバイトを母は会社の正社員になった。
決して楽と言える生活ではなかったが、二人は幸せだった。
そこまでは良かった。
彼女の母は、父との死別から2年後、未来が中学3年生の時に再婚した。
その選択が、二人の人生を狂わせた。
三人で初めて顔を合わせた時、その男は真面目そうな若い男だった。
「未来ちゃん、これからよろしくね。君のお母さんとの結婚を許してくれてありがとう。君たちのことを最大限支えるよ」
男は爽やかな笑顔を浮かべた。
未来は、この人なら母も自分も幸せにしてくれるのではないか、そんな希望的観測を抱いていた。
だが、そんなものは幻想だった。
二人目の父は、決して二人のことを愛していなかった。
母は世間体と子供のために、男は美人な妻だけを求めた。
愛などかけらもない、最悪な結婚だった。
夫婦の仲が冷えていくのは一瞬だったし、当然、家での会話はないに等しかった。
しかし、男は特段酒癖が悪いわけでも、働かないわけでも、暴力を振るうわけでもなかった。
ただ、無関心だった。
自分の子供も妻も、彼にとってはいないも同然だった。
ただ二人の家を寝床として使うだけ。
大抵は、二人の知らない人と酒を飲み、あるいは女遊びをして二人が寝ている深夜に帰ってくる。
一家の父とは到底思えない行動だった。
仲の良かったはずの母と未来も、会話すら次第に減っていった。
家族全員が「これではいけない」と思っていた。
だが、誰も何もしなかったし、何も変わることはなかった。
彼女の母の心は、疲弊しきっていた。
ある日、母が仕事から帰ってきた時、未来は母に話しかけた。
まともに話すのは、二週間か、それ以上ぶりだった。
「お母さん、来月修学旅行があって、その話なんだけどさ……」
彼女は内心ドキドキしていたが、笑顔を保った。
「今、疲れているから明日見るね。未来、おやすみ」
「え……うん……おやすみなさい」
一瞬の沈黙の後、母は真顔で、
「何? え、って何か不満でもあるの?」
依然として真顔のまま話した。
「い……いや、そんなことないよ……疲れてる時にごめんね?」
母が夫と違う寝室に、いつものように行った後、彼女は一人で部屋のベッドの上で悲しんだ。
母が彼女に、あんな物言いをしたのは初めてだった。
(もう嫌だ……)
隠してきた本音だった。
彼女は家庭環境のことを、最も親しい友人にも、尊敬していた教師にすら言わなかった。
自分でも、そんな最悪の状況から目を背けたかったから。
いざ直視すると、彼女の胸は締め付けられた。
(あぁ、こうなるとわかっていれば未来がわかっていれば結婚に反対したのに...)
未来は、生きてきた人生の中で最も強く、長く、後悔した。
変わるわけなどない過去を
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