第一村人
農業大国のアルビオン王国の辺境の地。
開拓の村。
大きな森と隣接する辺境の小さな町。今日も太陽の温かさの中で新しい一日が始まった。
簡素な柵で囲まれた村は、広大な農地の中に存在している。
数人の子供たちが木でできた玩具の剣を手にし、石造りの建物から飛び出して、村の広場に集まった。
賑やかな子供たちの中から、一番大きな体を持つ少年が姿を現した。彼は自信満々に広場の中央にある木箱の上に立った。
「今日は勇者と魔物を退治するゲームをしよう!俺が勇者だ!」
「おお!勇者よ!聖剣がないとはなさけない!」
「これが聖剣だよ!」
「僕は魔法使い!大魔導師だ!」
「じゃあ、俺は剣士!」
「えと…僕は!」
「それでは、出発だ!魔物退治に行くぞ!」
一行はチームを組み、盛大に出発した。
子供たちの目的地は、村の一角にある古びた小さな教会。
教会は古びた石壁に蔦が這い上がり、一部が崩れ落ちている。しかし、壁に這う蔦から、ここが長い間放置されていたことが伝わってくる。しかしながら、ある程度は手入れが行われているようだ。
彼らはすぐにその目的を見つけた。
それは繊細で、白い少女だった。
彼女は粗い布で作られた大きすぎる服を着ていた。袖は巻き上げられ、裾は紐で締められている。彼女の髪は雪のような白さで、太陽の下で輝いていた。他の子供たちと比べると、彼女の肌は非常に白く、太陽の光の下でほんのりとピンク色に輝いていた。
少女は大きな赤い目で近づいてくる子供たちを不安げに見ていた。彼女は持っていたほうきを強く握りしめた。
「敵を発見!弓兵、射撃!」
大きな少年の指示で、子供たちは少女に向かって物を投げ始めた。木の枝、小石、砂土が銀白色の少女に飛んでくる。少女は怯えて頭を下げ、腕を伸ばして防御した。
「…やめて!」
「効果あり!攻撃を続けるぞ!」
子供たちが笑いながら少女に向かって次々と物を投げつけた。少女はやがて膝をついて頭を抱えるようになり、大きな目から涙がこぼれ始めた。
「敵が弱っている!今だ、突撃!」
少年たちは手に持った木の枝や木の剣を持って、少女に突撃を開始した。
少年たちの攻撃が少女に届く寸前、教会の扉が「バタン」と開いた。
「何をしているんだ!」
鋭い声で叱責されると、一人の女性が教会から怒った顔で出てきた。彼女は黒い修道服を着ており、胸には天秤と剣の紋章があった。この紋章は、秩序の女神を象徴している。この女性はこの小さな教会を管理する神官であった。
「うわっ!大魔王だ!」
「うーん、まだ力が足りないか…」
「勇者よ、魔王の前で逃げるとは情けない。」
「撤退、撤退!」
子供たちはあっという間に四方八方に散ってしまった。
少年たちが去った後、神官は深く息を吸った後、心配そうに少女に近づいた。
「大丈夫か、ララリア。」
「うう…グレイシャ様…」
「ごめんね。もっと早く来ればよかったのに。あの子たち、いつも礼拝が終わるのを待たずに来るんだ。どこか怪我をしたか?」
「どうして?」
「え?」
「なぜ大神ユフィリアが彼らを罰しないの?」
「それは…」
少女は涙を流しながら続けた。
「彼らが不公平なことをしているのに、なぜ公平と秩序を司る神が彼らを罰さないの?」
「ララリア!」
立ち上がり、神官の呼び掛けを無視して。少女は歯を食いしばり、目の隅から涙をこぼしながら大きく足を進めて走り出した。
ララリアは、村の低い柵を越えて、その後ろの森に入った。
森の中、太陽の光は葉っぱの間から差し込んできた。そんな幻想的な光景の中でも、彼女は足を止めず、目的地へと突き進んでいった。
ララリアは複雑に絡み合う木の根や高く飛び出た石を巧みに跳び越えた。その動きはまるで小さな鹿のように敏捷だ。銀白の髪は太陽の光の中できらきらと輝いていた。
少女は、熟知している森の中の巨木を縫って、広場のような場所に出た。彼女の目の前に現れたのは、小さな丘だった。その丘を見て、ララリアは明らかに安堵した。
この丘は彼女の秘密の基地だ。
この丘からは暖かな太陽の光が当たり、村の全景もばっちりと見渡せる。ララリアはこの丘の上からの景色が大好きで、悲しいことがあるたびに、ここに来て考え事をするのだ。
涙を袖で拭い去り、前に進もうとした瞬間、以前になかったものが彼女の注意を引きつけた。
「赤い、門?」
来たときには気づかなかったが、それは確かにそこに立っていた。
それは奇妙な造りの赤い建造物だった。二つの柱が短い方と長い方の2つの横木を支えている。横木には、紙の飾り付けられた紐がぶら下がっている。まるで何かの境界を示しているかのようだ。
ララリアは一瞬、ためらった。彼女は慎重に一歩を踏み出した。
ララリアがその建造物を越えた瞬間、息ができないような感覚に襲われた。まるでその境界の先の空気が薄くなったようで、彼女は少し呼吸がしにくくなった。体の不調を我慢しながら、彼女は丘を登り続けた。
そして、彼女はそれを見た。
それは黒い、人の形をした存在だった。
その黒い存在は丘の上の石に座っていた。ララリアを感じ取ったのか、それは気まぐれに頭を振り返った。
それは、ララリアよりも少し年上に見える少女だった。
今まで見たことのないスタイルの長い袖の服を着ていた。腰までの長い髪、鋭い目、まるで人造品のような繊細な顔。
そして何よりも、頭の後ろで青白い光を放つ光輪が浮かんでいる。
ララリアは神官グレイシャの神学の授業での絵本を思い出した。絵本の中の神々は、そのような光輪を頭の後ろに浮かべていた。
ララリアの頭は混乱していた。
「どうして…もしかして、これは…」
「**,**********?」
涼しい声で理解できない言葉を話しながら、黒い少女は驚いたように目を開け、そして微笑んだ。それは美しく、純粋な、しかし何を考えているのか読み取れない笑顔だった。
その笑顔を見て、ララリアは身震いした。