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4話 犯人はこれだと思います

「え、え、え!? ど、どうゆう事!?? Sランクアイテムでさえコルヴァニシュ国内に数える程しか存在しないのに……!?」


自宅で慌てふためきながらも急いで謎の超超々レアアイテムを亜空間からこちらの世界に引っ張り上げる。


「ん……これは……? 剣というよりは日本刀に近いのかな? でもすごく綺麗……」


目の前に現れた『天桜流刀』は僕が想像していたファンタジー世界の剣とはどこか違う雰囲気を持っていた。


剣と呼ぶにはあまりにも細く、薄桜色に陽の光を反射させる美しい刀身は武具と言うよりまるで美術品に近い部類にも思えるから。


でもなんでこれがSSRランク判定なんだろう……?

ゲームとかアニメによくある絶えず炎を発している剣だったり、永遠に溶けない氷の剣! みたいなアイテムに比べると少し地味な気もする。


「えい!」


試しに剣を振り下ろしてみた。


しかし何も起こりはしない。


空中に炎の軌跡を残すことも大気中の水分を瞬間冷却することもなく、ただただ綺麗な薄桜色が目の前を通過しただけだった。


「うーん。これ熟成カンストしたってだけでランク付けに忖度してないか?」


前代未聞の超高ランクアイテムのくせにパッとしない性能に不満を垂れていた時。

テーブルの方からほぼ同時に二つの落下音が聞こえてきた。


「――! これは……」


目線を向けると真っ二つになった木製のスープ皿が転がっていた。

その断面は熟練の職人がヤスリで丁寧に削ったかの如く滑らかに割れている。


距離にして3メートルは離れているテーブルから真っ二つになった皿が落ちた。


この状況で考えうる犯人は一つしかない……。


「まさか……」


右手に持った剣を再度眺める。

木片の微塵など一切付着していない綺麗な刀身に再度見入りそうになるが、本当にこの剣の仕業か確かめるべく外に出た。


タオルでぐるぐる巻きにした天桜流刀をびくびくしながら抱える様を見た人々は一様に首を傾げている。


「こんなレアアイテム……誰に狙われるか分かったもんじゃないもんね」


レアアイテムの真価を確かめたいけど誰にもバレたくない。

でも誰か専門家の意見も聞いてみたい。


子供のような勝手我儘を垂れているのは自分でも分かっている。


しかし、このわがままな心情に対応してくれる人物を僕は一人だけ知っていたのだ。


そうして目的の建物に到着。


「す、すみませーん。フィリナさんいらっしゃいませんかー?」


昼の12時だというのに相変わらず一切の陽の光が存在しない店内には一つだけ灯された蝋燭が唯一の光源。


壁一面に並べられた世界各地の武具や防具そして工具たちは寸分のずれもなく綺麗に整列している。


「わぁ……やっぱりいつ見ても凄い。これなんかどうやって使うか見当もつかないなぁ」


クネクネに湾曲した槍らしき物に触れようとしたその時。

カウンターの奥から消え入りそうな小さい声が聞こえた。


「く、く、クリシェ君……? な、な、なんで私のお、お店なんかに……? ま、まさかコルラン様の手記に出来損ないだった私の悪口があったとか……? それをわざわざ言いにきたんですか」


サファイヤのように濃蒼色の長い髪に顔が隠れている事が特徴的な女性。


よく分からない自虐ネタを吐き出しながらそのそと近づいてきた。


「お久しぶりですフィリナさん。今日は少しごそう――」


『ご相談があります』


しかし、この言葉を発する前にはもうフィリナさんの姿が目の前にあった。


「な、なんですかこのタオル……。と、とんでもないオーラ……」


「や、やっぱりフィリナさんくらいになるとタオルの上からでも分かります……?」


「こ、こんな禍々しくも繊細なオーラです。い、一端の武具商人であれば誰であれ気が付きますよ」


いつも長い髪で隠れている両目を拝んだのはこの日が初めてということもあり、キラキラと輝く瞳をジっと見ているとフィリアさんは恥ずかしそうに前髪を直す。


「こ、これは失礼しました。わ、私としたことが取り乱しました……」


「いえ。でもフィリアさんは瞳も髪と同じで綺麗な藍色なんですね」


「――!! こ、コルトン様のご子息とは言え年上の女性をからかうものでは……」


髪に隠れてよく分からないが、耳の赤さを見る限り照れまくっている。


「う、ううん……! と、とりあえず地下の試弾場に案内します。こ、ここでその剣を解放されては困りますので……」


「ありがとうございます」



あのフィリナさんが興奮するほどの剣……。


僕も少し心躍らせながら地下の試弾場へと向かう。


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