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ロゴスとの授業・その3

『パッと見では分からないようになっている。とりあえず――そうだな、その辺の木の枝でいいか。右手を翳して収納することをイメージしろ』

『分かりました。やってみます』


 ルーチェはロゴスに言われた通り、落ちていた木の枝に右前足を翳し、バッグに仕舞うようなイメージをしてみる。すると、シュッと木の枝が消えた。


『……これで収納できたんですか?』

『ああ、できている。今度は木の枝を出すことをイメージするんだ』


 今度はバッグから取り出すようにイメージする。と、右前足からポトッと先ほど収納した木の枝が出てきた。


『慣れればイメージなしでもできるようになるだろう』

『便利なものですね……』


 ルーチェは感慨深げに呟いた。


『これで一通りのことは教えた。あとは――』


 そこで言葉を区切るとロゴスはルーチェに向き直り、表情は猫なのでよく分からないがニヤリと笑った気がした。






『わぁ、すごいです。本当に飛べるなんて!』


 ――空でも飛んでみるか。


 そう言われてルーチェはロゴスの指導の下、自身の翼で空を飛んでいる。ロゴスに翼はないが魔法を使って飛んでいる。


『フッ、お前でもそのようにはしゃぐことがあるのだな』

『はっ……』


 何ということだろう。ロゴスに指摘されて気づいた。普段は常に淑やかに優雅に、と気をつけていたというのに年甲斐もなくはしゃいでしまった。


『悪いとは言っていない』

『ですが……暗殺者としましては、気配を殺すように感情も殺さなければいけませんのに……』

『ふむ、暗殺者か。今日会ったばかりだが、お前は暗殺者には見えないな』


 それはそうだろう。例えばその辺を歩いている者が明らかに暗殺者であると分かってしまったら、そっちの方が大事だ。暗殺者が暗殺者に見えてはならない。

 ――暗殺者は演技ができてなんぼ。

 これは死んだ父と母の教えだ。

 ルーチェの前世での父と母は揃って暗殺者であった。表向きは俳優と女優だったが。

 暗殺者が暗殺者だと悟られてしまったら、殺しの対象に警戒されてしまう。そうならない為に演技を身につけろ。どんな相手にも警戒されないよう、お淑やかに優雅に。

 それが父と母の教え。

 そんな話をぽつぽつと、ルーチェはロゴスに話した。


『私は暗殺者の中でも特殊な、言霊使いの一族として生まれました。ですが、言霊も万能ではありません。同じ言霊使いだった母も、事故で亡くなりました』

『父親は?』

『父はわたくしが高校の時に、仕事先で』


 ルーチェの父親は仕事先で負傷し、帰宅した時は虫の息だった。治療する間もなく、そのまま亡くなったしまった。


『お前にとって両親はどんな存在だ? いい両親だったか?』


 ルーチェにとっての両親。それは――


『強くて、かっこよくて、優しくて……殺ししか取り柄がないようなこんなわたくしを愛してくれた、最高の両親です!』

『……そうか』


 そう一言だけ零したロゴスの目元は優し気だった。


次回は4/11に投稿します。

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