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罪と罰と新体制

さて翌朝、我々が占拠した旧長兄邸宅。

そこにはぞろぞろと自首する役人たちが列を作っていた。

よもや役人がいなくなるなどというのはさすがに冗談と高をくくっていたのだが、その冗談が現実になるのではないかという勢いだ。


「とはいえヤハラどの。連中もよく自首する気になったものだな」


「やはり、我らに与すればつみに問わずとばかりの宣言、さらにはさらし首と斬奸状が効いたのでしょう」


恭順するなら罪を許す。

逆らうならば死を。

そのはっきりとした方針がわかりやすいものだったのだ。


二度と悪事に手を染めるまいぞ、と約定をして罪を許してるのだが、どうせまた悪事を働くに決まっている。

ではどうするか?

ナンブ・リュウゾウ直轄の治安組織を配置することだ。


この人選こそ早急を要する案件である。

まずは兵、これを臨時にあてる。

長兄どのも兵は有していた。


北区域における親衛隊のような組織である。

これはすでに北区域親衛隊の焼きが入って、すっかり腹をみせていた。

さらにはナンブ・リュウゾウの手の者、つまり忍びを配置しておく。


ついでに、ナンブ・リュウゾウこれまた直属の町方を、南領の次男坊三男坊で組織。

農民町民の評判、あるいは市井の苦情などをひろわせるのだ。

悪事は必ず庶民を苦しめる。

市井の反応を敏感に察知する組織を置いておくのだ。


「この策は、ほれヤハラどの。あの町娘が北領地にもいたよな。あれを参考にしておる」


町娘とは……モミジのことか?

確かにあの連中、子飼いとして欲しい手であった。

が、ナンブ・リュウゾウの私を見る目がスケベったらしい。


「なかなかに美しかったな」


「嫁にとれと?」


「なにを申しておる? 俺は昨日相手を頼んだ、カグヤの痴態が美しかったと言っておるのだが……ヤハラどの。誰が美しく誰を嫁にすると?」


チキショウ、いらねぇサル知恵つけやがって。

舌打ちしたい気分ではあったが、シレッと答えてやる。


「北領地に残しておりまする、モミジという娘のことを連想いたしておりました。あの者たち、殿に対する忠義も厚く、なかなかに便利です故に……」


「そろそろ仕込まんか?」


「その暇がありませぬ故」


言って失敗したと思った。


「暇があれば成敗するのか? よしよし、暇を作らせよう」


どうにもこの男、イズモ伯爵令嬢キョウカと婚約してからこっち、私の嫁とりに気持ちがむいている。

私としては今しばらく、仕事に専念したいのだが。

もちろん私とて、突っ立っているだけのカカシではない。


性欲というものはある。

人恋しさのようなものもある。

故に「女」が欲しいときもある。


しかし妻を娶るまでには気持ちが行かない。

まだ嫁よりも女が宜しゅう御座る、とだけ答えた。


「ならば宿舎を出て、休息所を持つといい。ヤハラどのも働き詰めだからな、仕事を離れてくつろぐ時間も必要であろう」


まあ、それくらいなら。

アヤコにばかり頼んでも仕方ない。

あれは処理を頼めばしてくれるが、本業は忍びである。

あまり私用で使う訳にはいかない。


ではどこの女を囲うか?

それを夢想するのは胸おどる空想、妄想である。

それこそ朝の支度をするモミジの包丁の音で目覚める。

そんな空想も悪くない。


いや、今は仕事だ。


「殿、この地の治安組織。次男坊三男坊を中心に召し抱えるとはいえ、人選はいかに」


「だから今、親衛隊が採用試験で各剣術道場を見て回るというのだ。ヤハラどの、袴の前を突っ張らせるのもかまわんが、今は仕事だぞ」


クッソ、この男にスケベ扱いされるとは。

このヤハラ、一生の不覚。

そして罪人たちは次々と罪を許され、今後は不正悪事と縁を切ると誓いを立てることで現在の体制を維持することにした。


ただし、誰が、どのようにして、誰と不正を働いたか。

調べ書きにすべて記載しているので、今後の不正捜査に重要な資料が山積みにできた。

同じ悪事を働くならば、そのときは問答無用である。


ナンブ・リュウゾウという支配者の恐怖、存分に味わっていただくことになる。

そして実直な老役人が現地責任者となるのだ。

不正の情報はほぼ筒抜けになる。


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