表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/193

事後の見積りと即座の行動

そして長兄どのの身柄を、男爵さまに引き渡し。

意外なほどタンパクな手続きだけで、長兄どのは男爵さまに引き取られた。

まあ、御家騒動などどこにでもある。

男爵さまはそう言って話を替える。


「とりあえず南の区画は責任者不在ということになる。リュウゾウ、お前が見るか?」


「そうさせていただきます」


「長兄から甘い汁を吸った連中が、まだ生き残っている。用心いたせ」


「かしこまりました」


長兄どのの処分がタンパクなのは、次を見据えているからである。

別な言い方をすれば、いかなる罰を与えるか? それはすでに決まっていたのだろう。

なにしろ私たちがイズモへ出向いているうちに、長兄どのの企てを見抜いておられたのだ。

それくらいのことは造作もないだろう。


「して、リュウゾウ。どのように南をおさめる?」


「まずは私とヤハラでおもむき、具体的な方針を固めます」


「具体的には?」


「不正と賄賂の撤廃。大店おおだなであろうと高給役人であろうと、すべてひっ捕らえます」


「殺されるぞ、リュウゾウ」


「その手始めとして、郷士みちのく屋をもって、いまだ生存する無頼の輩をすべて叩き出します」


「まだいたのか? あそこには」


「山賊は壊滅させましたが、次兄どのの領地から逃げ延びた連中がたむろしていると」


「なるほど、まずは役人連中の手足をもぐのか」


「とはいえ暗殺は毒も用いますし、刀剣の腕前ばかりではないのが事実」


「ではどうする、リュウゾウ?」


「先行して忍びを放ち、怪しい役人の目星をつけておきます」


「して?」


「不正を片っ端から暴き、すべて処断いたします」


「役人が一人もいなくなるぞ」


「反省し、不正から足を洗うならば、役人として生かしておきます」


「骨が折れそうだな」


「その時のための忍びです」


情報収集により改革の速度をあげる。

ナンブ・リュウゾウの方針はそこにあるようだ。


「なに、悪事は一人でやるものではありません。一人捕らえれば芋づるですよ」


まあ、そういうものではあるが。

しかし一度悪事に手を染めた者が、信用できるのであろうか?


「故に悪漢を排除、さらには一度だけ更生の機会を与えます」


その機会で結果を出せなかった者は、墓の下で永遠の眠りにつくことになる。

もう、二度と彼を起用することは無い。

生きたければ恭順せよ、左に非ずんば死すべし。


ナンブ・リュウゾウらしい、単純明快。

かつわかりやすい舵取りであった。


「殿、拠点は南に移しますか?」


その方が仕事がしやすいだろうか? と考える。


「いや、北に置いたままで良い。南の連中に北まで報告承認決裁に来させよう」


完全に北が上位で南は恭順せよ、という姿勢だ。


「そうと決まれば、とんぼ返りで悪党退治に出掛けるぞ」


ナンブ・リュウゾウ殺害未遂、領主の逮捕と更迭。

さらに新領主の就任と悪党の殲滅。

南領地はほんの数日で大変な事態であった。


超高速とんぼ返り。

しかしその前に忍びのイズミに申しつけておく。

不正に手を染めている者を洗い出せ、と。


しかし忍者もまた、男爵さまと同じ意見だ。

役人がいなくなるぞ、と。


「それよりも大将、さっさと実力行使で悪党どもをぶった斬った方が、方針演説なんぞよりも、よっぽど雄弁だぜ」


私も忍者の意見に賛成だ。

新たなる管理者ナンブ・リュウゾウは不正を許さぬ。

悪事はすべて斬ってすてる故、心いたせ!


たとえ一服盛ることを考えても、こちらはすでに服毒のはかりごとを、一度見抜いておるぞ!

さあ、これでもなお不正を働く者あらば、前に出よ!

……うむ、ナンブ・リュウゾウによる剣の演説は、実に説得力がある。


どう考えても忍者の意見に一票だ。

そしてこの場合、とんぼ返りは早ければ早いほど効果的である。

なに、チンピラヤクザをどれだけ斬っても、「男爵さまがこの地の治安を早急に回復すべしと仰せである!」と述べれば、この程度のことは通る。


ということで、さっそく出発である。

今回は急ぐことが第一なので、変装も隠密行動も無い。

日が暮れて、私たちはふたたび南領地に突入した。


怒濤の勢いで大通りを駆ける。

新管理者ナンブ・リュウゾウである! 規律治安を乱す者はどれか!

そのように怒鳴りながら、忍者の手引きに従った。


親衛隊を二手に分ける。

一方は突入班。

もう一方は逃亡を許さぬよう、建物を囲む。


突入したのは宿であった。

御用改めを宣言して、問答無用でなだれ込む。

乱暴狼藉というなら、まさにこれがそうであろう。


しかし忍者の調べは完璧であった。

賭場が開かれており、ならず者どもが集まっていた。

私にとっては都合のいいことに、身なりの良い者まで博打に興じていたのである。


ならず者だけではない、そいつらまで斬った。

ここはそうすべきである。

例えそれが大店おおだなの主人だろうが、役人であろうが、ならず者とつるんでいるのだ。


そのような輩、ナンブ・リュウゾウは断じて許さぬ!

不正者には罰を。

それが新しい管理者の姿勢なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ