アヤコ、ようやく旅立つ
しかし兄上の殺意、男爵さまは御存知なのだろうか?
薬売りに変装して、今まさに出て行こうとするアヤコを呼び止める。
「男爵さまですか? これは私たち忍び部隊が調べ上げた話ですので、男爵さまもそこまではお考えではありませんでしたよ? ただ注意だけはしておけと」
「そんな重要な話はひとつも出て来なんだったぞ?」
「リュウゾウさま? それはどこぞの鉄砲玉が参謀とともに逃亡したせいで、教えることができなんだと、男爵さまは申してましたが」
「悪い鉄砲玉もいたもんだなぁ、ヤハラどの」
「まったくですなぁ、心当たりはまったく御座らぬが」
「ときに殿、忍びというのはイズミとアヤコ以外にもいるのですかな?」
「そちこちにな、しかし兄上たちは忍びを所持しとらん」
「なにゆえでしょうか?」
賢いからだよ、とナンブ・リュウゾウは言う。
賢いから自分はなんでも知っていると思っている。
だから忍びなど、他人の秘密を覗き見するイヤらしい種族だと追い出したのさ。
「ちなみに兄上のところには参謀も居らん」
「どうやって策略を練るのですかな?」
「自分でなんでもできると思っているのだろう、自信家だからな。参謀などは自分が男爵になってから、お手伝いとして雇うと言っておった」
「二番目の兄上は?」
「次兄のところには魔物がはびこっておる。あの連中もどうにかせんとな……しかしヤハラどの……兄上の企みを暴いて、その後はどうする?」
「お白州へ」
「やはり死罪か?」
「良くても閉門の上で幽閉というところでしょうな」
事実上の死である。
あるいは幽閉と語っておきながら食事に一服盛る、というものだ。
当然処理のやり方で言えば、蟄居中に病死という扱いになる。
「そのためにも、殿には生き残っていただかねばなりませぬ」
「例え毒を食らったとしてもな」
「そう、殿の肩にはナンブ領の住民、さらには王室国家の運命が託されているとお考えください」
「ずいぶん話が大きくなったな」
「それだけの働きをしていただかなければ、ヤハラも殿に与した甲斐がございません」
「そろそろ出発してよろしいでしょうか?」
アヤコがうかがってくる。
「うむ、引き止めて悪かった。もしも先方で毒なら間に合っていると出てきたら」
「出てきたら?」
「毒と精力剤をすり替えるのだ」
「最初からそうした方が早いのでは?」
「いや、先方が毒を欲した。もしくは毒を入手しているという事実を押さえたいのだ」
わかりましたと答えて、アヤコは出て行った。
短い更新ですが、作者少々混乱していたための失態ですので笑ってやってください。ありゃ? なんじゃこりゃ? な感じでミスがありました。




