軍師ヤハラ、生涯の恥部を背負う!
イズモ領東地区の無頼漢、ゴーギーの首をとって、伯爵さまの領地へ帰る。
ことの次第を報告すると、伯爵さまは「次は西へ」と申された。
東地区の管理者はダイスケどのの兄上だったはずだが、それについての沙汰を伯爵さまは述べない。
いや、すでに腹は決まっている。
ということか。
その上で西行を命じられているのだろう。
私たちは弟君の管理する西地区で、またひと暴れ。
伯爵さまの思惑通りか否か、義兄と義弟の協力により、イズモ領がまた改まったと評判になる。
そしてこの地においても、妹婿であるナンブ・リュウゾウどのの人気が上がってしまった。
侠客団を束ねるナンブの大侠客。
義に厚く、勇は余りある。
ワイマールきっての剣術の達人。
それはもう、芝居の演目になるほどの人気ぶりであった。
そこにはイズモ領の土木業者たちの後押しもあった。
なにしろナンブ・リュウゾウの口利きで、イズモ〜ナンブ間の直通道路工事が始まるのだ。
親方一同、リュウゾウ人気を押しているのは当然だ。
そして西領地を平らげたあと、伯爵さまの街へ帰るのだが、私は少し用事ということで単独行動をさせてもらった。
「ヤハラどの、女か?」
「まあ、女といえば女。されど商用に御座るゆえ……」
「クサナギ先生をつけよう」
「ありがたく存じます」
ということで、最強の剣士クサナギ先生の護衛で、マスター・キララの店へ。
「いらっしゃいませ……って、まだ鉄砲はできてませんよ?」
「存じております。今日は追加注文でうかがいました」
「まだ何かあるんですか?」
職人は少し不満そう。
どんな無茶を言われるか、警戒しているのだ。
「マスター・キララ、矜持もありましょうが、このヤハラの頼み、聞いてくだされ」
「なにごとでしょう?」
私の気迫に押されたようだ。
話を聞いてくれる態勢にはいってくれた。
「発射の音と煙だけしか出ないインチキ鉄砲、七〇丁追加で作って欲しい」
「は?」
「つまり、弾など出なくていいから、それらしいインチキを七〇丁作ってくれと言っているのだ」
「弾も出ない鉄砲に、意味はあるんですか?」
「ある! それも、新型銃と変わらぬ姿。そして装填方式のインチキ鉄砲でなくてはなりませぬ!」
私は必死の眼差しで応じた。
そしてこっそり、マスター・キララにだけ、私の秘策を伝える。
それを聞いたマスターは、「呆れた、馬っ鹿みたい」と呆ける。
「しかしこれより方策はありませぬ」
「必死なのはわかりますけど……」
「頼めるのですか? 頼めんのですか!」
「わかりました、引き受けます! ……まったく、何を言い出すかと思えば」
ブチブチもらしながら、マスターは作業場へ消えた。
私たちの会話を聞いていたクサナギ先生は、私の腹を見透かしたか、ニヤニヤとしている。
「軍師ヤハラ、大勝負ですなぁ」
「からかわないでください。私も必死なんです」
「だが、インチキ混じりの鉄砲百丁。これは効果ありと俺は見るぜ」
「兵法家にお墨付きをいただけましたか。ヤハラも百人力です」
「ただし、リュウの字への説明はヤハラくんに頼むぜ。俺は恥ずかしくってそんなマネはできないからな」
……そうだ。
殿に説明しなくてはならないのだ。
音と煙しか出ないインチキ鉄砲の利用法を。
……しかもそれは、とてもとても恥ずかしいことなのだ。
文章量が少し足りないかもしれませんが、そう、雑記帳でも更新しております!




