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絡み酒

騎士団長はおそらく更迭。

現在の副隊長か若く優秀な人材がその責に任じられるであろう。

がっくりとうなだれて役人に連れていかれた。


さて伯爵さまをオヤジどのと呼び、次は誰を斬るかと迫るナンブ・リュウゾウ。

それに対し伯爵さまは「なんと頼もしい娘婿か」と目を細めた。


「恥を承知で申し上げるが、領内においてはなかなか私の目が行き届かぬところもある。それなるダイスケとともに、治安秩序の回復に務めてはもらえないだろうか?」


義兄となるダイスケどのは親しげに大将の肩に手を置き、「こちらへ」と招いた。

失礼しますと述べて、私もあとに従う。

私たちが招かれたのは、ダイスケどのの執務室であった。


壁にはイズモ領の地図、さらにはワイマール王国の地図。

そして周辺諸国を描いた地図があった。

ダイスケどのは執務机にグラスを置き、トプトプと酒を注いだ。


そのひとつをナンブ・リュウゾウに、そしていまひとつを私にすすめてくれた。

ナンブ・リュウゾウはグビリと飲む。

私は唇をつけるだけ。


「さすがに伯爵領、地図を見るだけでも広大ですな」


大将は惚れ惚れと地図を眺めた。


「広いということはそれだけ総身に目が行き届かぬのさ」


「イズモさまの領地でも、人材不足なので?」


「ということは、ナンブさまの方でも?」


「お恥ずかしながら……」


二人の兄の領地で、大暴れしたことを恥じている。

それだけナンブ領でも治安は乱れていたのだ。


「みんな胡座をかいちまってるからなぁ……」


「長男が爵位を世襲するという風潮ですからなぁ……」


ダイスケどのも次男である。

それは捕物の際に述べていた。

妹御キョウカさまをめぐって本気で斬り合いをしたという二人だが、いまはすっかり打ち解けているようである。


「リュウの字、この世の中がいつまで続くと思う?」


この世の中とは、王制貴族制のことであろう。


「さあ……」


大将は言葉を濁した。


「身分の低い者にも元気なヤツはいます。いますぐひっくり返るということはありますまいが、油断していると足元をすくわれますぞ」


なかなか本題に入らない二人。

しかしダイスケどのはナンブ・リュウゾウの本音を探っているようでもある。


「そのときはどうする、リュウの字?」


「そうさなぁ、兄者……」


夢を語るような眼差しで、ナンブ・リュウゾウは言う。


「国王陛下をオンブして、山を駆け上がりますかな」


もちろんそんなことはできない。

男爵家の三男に、御目見えの資格は無いのだから。


「吹かしやがるな、コイツめ」


それをしっているから、ダイスケどのは笑う。

……私は、ここにいていいのだろうか?

不意にそんなことを思う。


男と男。

腹蔵無く本音を語り合うような場所だ。

そんな場所に、私のような異人種が腰をすえていていいものか。


むしろクサナギ先生が二人を取り持ち、シロガネ・カグヤが酌をする方が良いのではないか?

いや、こんな席だからこそ私が居なければならないのだ。

ナンブ・リュウゾウというサルを止めるのは、憚りながらこの私しかいないのだ。


「しかしリュウの字、マスターの鉄砲を手に入れたな?」


どう使う? と問い掛けてきた。

状況によりますと、大将は答えた。


「現状では先込め式の鉄砲が主流だ。こいつは再装填に時間がかかる。しかも一〇〇メートルも離れれば当たったものではない。それでも鉄砲隊がいるのは何故か?」


「矢ならば斬ることも避けることもできます。しかし鉄砲の弾は避けられぬ故」


「そうさ、だから鉄砲隊の運用は大量投入。しかしてナンブ軍は三〇丁しか仕入れることができていない。これをいかにするか」


「兄者、まずはマスターの鉄砲を他所へ流さぬこと。これが第一にござる」


「他所とはいえ、王室本隊から請われれば断れなかろう。ナンブ卿、その鉄砲を本隊に預けよ、とかなんとか……」


「……………………」


「どうだ? 断れまい。言っておくが、俺はお前を説得に回るぞ。リュウの字、本隊で御所望であるぞ、と」


「なんの、我らは剣を鍛え、刀の痩せるほどに磨いておる故!」


「それで鉄砲に勝つ気かよ。マスケットったって、敵にも銃はあるんだぜ?」


「兄者、兄者に無く我らにある秘密兵器がござる」


「おう、そりゃなんでぇ?」


「同席しておりまする、ヤハラにございます」


なんて振りしやがる。

ンなことホザいたら私に矛先が向くだろう!


火縄銃が当たらぬ距離を一〇〇メートルに修正しました。

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