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山賊交渉

そういうことで、マスター・キララのショップ。

新式鉄砲三十丁の購入のため、交渉開始である。

ナンブ陣営は私とみちのく屋総裁、さらにナンブ・リュウゾウ。

それとイズモ・ダイスケに忍者のイズミである。


本当ならばナンブ・リュウゾウには席を外してもらいたかったのだが、目を離していると何をしでかすか分からないため、私の監視下におくことにしたのだ。


「……えっと、さきほど新式銃を三十丁ご注文いただいたお客さまですよね?」


マスター・キララは私たちの顔を見て、そう切り出してきた。


「それはこのサルが勝手に言い出したところではありますが、新式銃をそれだけ揃えたいのは事実です」


「無理です」


マスター・キララの返答は端的であった。


「無理な理由、よろしければうかがいたいのですが」


みちのく屋総裁と打ち合わせた通り、私は返す。


「さきほども説明しました通り、鉄砲というのは鉄の塊からヤスリ一本で部品から何からすべて削り出すものなんです。ですから通常のフリントロック銃でも年間に二丁から三丁の制作が限界。新式に至っては、年間二丁できるかどうかというものなんです」


「マスター・キララ……」


椅子にもかけず、窓の外を眺めたままみちのく屋総裁が割り込む。


「マスター・キララ、君は鉄砲制作が好きかな?」


「えぇ、愛しておりますけど……」


何を言い出すのか?

マスター・キララもキョトンとしていた。


「私たちの依頼を断ると、君は鉄砲を造ることができなくなるぞ」


「なんですか、それは?」


「確実に殺される、ということさ」


振り向いたミズキ・タカシは悪魔のような微笑みを浮かべた。

どういうことですか、とでも言いたかったのだろう。

腰を浮かしたマスターを、着流しの悪魔は制した。


「いま現在、遠国で戦争が起こっている。原因は宗教上の解釈の問題のようだが、いずれ我々もこの戦さに巻き込まれるだろう……」


マスターを見つめる鬼の眼差しは冷たい。


「そのとき我々が君の新式銃を使わなければ、きっと負けるに違いない」


「そうすると私は囚われて、新式銃を今以上に無茶な条件で制作しろ。さもなくば殺すぞと脅されるんですね?」


「理解が早くて助かる」


「それでも無理なものは無理なんです。手作業の職人仕事で組み上げる鉄砲、そう簡単には作れません」


「手伝いに鉄砲職人ガンスミスが百人いたら?」


「それでも仕上げと銃身制作は私がやらなければなりません」


「その条件で何日かかる?」


「確実に一年はかかりますが……それ以上見積もってください」


「引き受けてくれるんですか⁉」


私は先走ってしまった。

そのためマスターはうつむいてしまい、首を横に振る。


「それでも自分の分身のような鉄砲を、他人にまかせるというのは……」


するとナンブ・リュウゾウが立ち上がった。

立ち上がっただけではない。

刀を抜き付けてマスターの首筋にあてがっている。


「んな悠長なこと言ってる場合じゃないんだ。マスター、あんたは自分が狙われてることに気付いてんのか?」


顔を青くしたマスター・キララは首を横に振った。


「だろうな。あんたの逃亡を企画して接触している奴ぁな、あれは間者だ。あんたを拐かそうと企んでる、他所の間者なんだよ! いつまでも平和な鉄砲職人って訳にはいかねぇんだ!」


鬼か魔か、という勢いでナンブ・リュウゾウは迫る。


「国王陛下をはじめとしたン千万の無辜の民を奴隷身分に貶めるか、勝利に貢献するか! 選択肢はふたつしか無ぇんだ!」


山賊交渉ではあるが、功を奏した。

マスター・キララが承知してくれたのだ。


「ではさっそく、部品の発注をしよう。なに、私は商人だ。絶対に各地の鉄砲職人は承知してくれるさ」


マスターの気が変わらぬうちに、みちのく屋総裁はバタバタと話を進めた。

それにしても新式銃三十丁。

いったいどれくらいの値段がするものか。


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