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ヤハラ、合流

まったく、馬鹿馬鹿しいというかなんというか。

勝手にイズモの御子息と斬り合いをしたかと思えば勝手に仲直りをして、こちらの気苦労を台無しにしてくれる。

便利なのか面倒くさいのか?


ナンブ・リュウゾウからは目が離せないというのはこういうことなのだ。

とりあえず私は同席させてもらうことにした。

アヤコには、マスター・キララの護衛を命じておいた。


「さて、殿。これはどういうことですかな?」


イズモ・ダイスケに挨拶を済ませると、私は単刀直入に切り出した。


「ま、まあな、いろいろあるのさ。いろいろと」


さすがのナンブ・リュウゾウも罰がわるそうだった。


「マスター・キララのかどわかしが計画されているやも知れぬ今、私たちはそれをなんとかせんものと乗り込んできたのですぞ? それが派手な立ち回りですか?」


「いや、やむを得ない事情があってな。ヤハラどの不在というのにダイスケどのが現れて、それ、どうにかせねばと……」


「なるほど、このヤハラにも事情は飲み込めました。その結果がこれですか」


「いやさ、他所の事情に口出しするではないが」


と、イズモ・ダイスケ。


「ヤハラどの、ナンブ領で新型銃を三十丁欲しいというのは、真ですかな?」


「あればまあ、越したことはありませんな」


「しかし鉄砲の制作には時間がかかる。三十年とは言わないが、かなりの時間がかかるぞい」


「そうであるならば、何故我々に相談しないかな?」


みちのく屋総裁、ミズキ・タカシが現れた。

同席失礼すると頭をさげて、総裁は椅子に腰掛けた。


「国中の鉄砲鍛冶に部品を注文して、それをマスターが組み立てる。そうすれば時間の短縮にならないかね?」


「そうなると物流の力が欲しくなる」


「そのためのみちのく屋であろう。人材はある」


「しかし部品だけとはいえ、心血注いだ発明を、マスターが外注するだろうか?」


「秘伝の流出かね? それならば鉄砲鍛冶ではなく、まったくの門外漢である普通の鍛冶屋にまかせれば良い。……それに」


総裁は若い者に目配せ。

銃を取り寄せた。


「現物はすでに手に入れてある。ここから複製も可能であろう」


その鉄砲には火薬を乗せる受け皿も火縄も無かった。

新式の鉄砲ならば火薬に点火するための雷管を取り替える必要があるのだが、そのような気配も無い。

というかその鉄砲は「くの字」に折れ曲がっていた。


「なんで鉄砲が折れ曲がってるんだ?」


ナンブ・リュウゾウでなくとも疑問に思うだろう。

しかしイズモ・ダイスケは訳知りな笑みを浮かべた。


「それがこいつの肝ってやつよ。薬莢というものにあらかじめ弾と火薬と雷管を仕込んでおく。そいつをこの筒っぽのケツから挿し込んで、銃を伸ばす。それだけで装填完了って寸法よ」


なるほど、それは時間短縮できる。

しかしそんな新兵器、こんな場所で大っぴらに見せびらかしていいものだろうか?


「なに、薬莢という発想が頭になければ、折れたポンコツの鉄砲にしか見えんさ」


それよりも交渉だ、マスター・キララとの。


「いかがでしょうか、ダイスケさま。マスター・キララの人柄というのは?」


そこが知りたい。

やはり交渉役は私になるだろうし。


「人柄かね? やはり奇跡的な発明をする方ゆえ……」


「他に類を見ない?」


「そう、それだ」


変人と見て差し支えなかろう。

それであれば私とてナンブ・リュウゾウの家臣だ。

いささか変人慣れはしている。


「例えばそう、故障した鉄砲に『お〜よしよし、痛かったでしょう?』と話しかけたり……」


なるほど、鉄砲は生きているんだ! とか言い出すタイプか。

ナンブ・リュウゾウとは勝手が違うだろう。

自分の作品に異常な執着を示す、孤独な人間かもしれない。


「かと思えば、作業中は飲まず食わず眠らずで鉄砲に専念してるし……」


愛の詩を送るだけあって、よく観察している。

おかげでマスターが鉄砲狂だということだけは理解できた。


「いかがかな、ヤハラどの?」


ナンブ・リュウゾウが深刻な顔を向けてきた。


「交渉は上手く行きそうかな?」


「総裁、御同席いただけますか?」


「よかろう」


「あ、殿は御遠慮ください。交渉がこじれますから」


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