このレベルで百人
邸内中庭へ、みちのく屋の人数を招き入れる。
選抜された選手は三十人だが、選ばれていない者まで含めるとやはり百人ちかくいそうだ。
当主を立たせておくわけにもいかないので、急遽椅子とテーブルが用意された。
その席にはみちのく屋の総裁も招いた。
ここでふと気づいたのだが、このミズキ・タカシという中年男。
どこかで見たことがある。
「どなたかと思えば、理事長先生ではありませんか」
先に気づいたのはナンブ・リュウゾウであった。
言われて私も思い出す。学生時代に何度かお見受けした、学園の理事長であった。
逆に言えばほんの数回しか見たことが無いので、覚えている訳が無い。
爵位こそ無いが豪商としても名高いこの男、どうやら人材派遣の口利きもしているようだ。
もちろんイチ豪商が王都の学園で理事長を務めているのにも、なんらかの裏があるであろうが、そこは話の本筋ではない。
まあ、国王陛下のお気に入りなのではと憶測するにとどめておく。
それよりも人材である。
まずは柔の組み打ちが始められる。
これが十試合。
審判長はクサナギ先生だが、これは殿のとなりで試合の解説をしている。
試合場での審判は柔術指南役が務めているのだが、なかなかに荒っぽい試合が多かった。
柔といってもお互いに衣服をつかみ合って投げ合いをするのではない。
まずは拳を飛ばし蹴り合うところから始まる。
現代における総合格闘技というところか。みちのく屋の手勢はどれも勢いがよく、親衛隊の手練でさえ、あわやという場面が幾度も見られた。
しかし終わってみれば親衛隊の十勝無敗。
辛くも面目を保ったというところか。
とはいえ親衛隊の精鋭相手に、見せ場は充分と私は見た。
これなら繋がりを持っても良かろうと考えていたが、クサナギ先生や大将はどう見ているのか?
ウムウムとうなずいている。
好感触なのだろうか?
試合は槍へと移る。
ここでもみちのく屋は大活躍。
何よりも気迫が素晴らしい。
観覧席まで伝わる気合いが、コケ脅しや格好だけ、というものに留まっていない。
もしかしたらこの人材、すべて人を殺めたことがあるのでは? と疑いたくなるほどであった。
槍の試合もすべて親衛隊が取ったが、大将曰く「負けてもなお闘志に衰えがないところが素晴らしい」とのこと。
戦闘行為においては、充分役立つとのことだ。
そして触れなば斬れんという条件で行われる剣術試合。
ここでもみちのく屋は凄味を見せつけてくれた。
勇者揃いである。
剣の素人である私にも、それは伝わった。
剣を摂っては専門家である親衛隊相手に、一歩も退かないのである。
強い、みちのく屋。
そして総裁ミズキ・タカシも潔い。
ただの一度も審判の判定に物言いをつけない。
ウチの大将もたいがいだが、あの男もなかなかどうして。
腹が据わっている。
剣においても親衛隊に負けはなかったが、大将は私にささやく。
「ヤハラどの、財布の事情もあろうが、ここはフンパツしてくれ」
つまり、全員採用ということだ。
ウム、たしかに財布は厳しい。
しかし手はある。
イズモ〜ナンブ間の工事だ。
平時はそういった作業で稼いでもらう。
そして乱時には兵として闘ってもらう。
王国でもっとも新しい制度、『郷士』という存在の誕生であった。




