突入
さて、パレードだ。
告知をしていたため、街は大にぎわいである。
沿道には人が押しかけ、やんやの声を送っている。
屋敷の小者たちがノボリを押し立てて行進する。
南部無双流の剣士たちがそれに続く。
さらには天神一流剣士。
槍の道場からも人を集め、数少ない弓兵を添えて、いよいよ親衛隊が拵えも厳しい姿で行進を開始する。
精鋭に囲まれたのは貴族用の馬車。
ナンブ・リュウゾウとキョウカちゃん人形を乗せている。
馬車の後ろ台にはシロガネ・カグヤ、そしてクサナギ・シロウ先生が護衛に立っている。
そして私はというと。
パレード実行委員会テントで群衆を監視していた。
「ヤハラさま」
テントにモミジが入ってきた。
結局パレードに親衛隊を出すことになったので、会場警備は市井のものを雇うことになったのである。
モミジは一礼して言った。
「パレードが始まりました。会場には問題ありません」
「そうか、御苦労」
「少しくらいなにかあった方が、腕の見せどころもあるというものなんですが……」
「なにかあられちゃ困るんだよ、私が」
「そういうものなんですか……」
腕の見せどころの無いことが不満なのか、モミジは可愛らしく唇をとがらせる。
「いや、モミジはすでに腕を見せてくれているぞ」
少しはフォローしてやろうと思う。
それが人心掌握の術である。
しかしモミジは瞳をキラキラと輝かせた。
そのような目をされると、改めてホメるのが照れくさくなる。
「どこですか、ヤハラさま! モミジはどこで腕を見せましたか?」
「人数を集めてくれた。やはり広い会場での警護は、人海戦術だ。人がいなくては始まらないからな、礼を言うぞ、モミジ」
「イヤですよヤハラさまぁ♪」
ベシッと肩を叩いてくる。
仕草は乙女そのものなのだが、なかなか重い一発であった。
「アタシなんかホメたってなんにも出ませんよぉ♪」
そうはいうが、目尻が下がっている。
嬉しそうにブンブンと振る、幻の尻尾が見えてきそうだ。
そのとき、モミジの手下の小僧が慌ただしくテントに入ってきた。
「モミジの姐御、大変だ! おかしな連中が大将を狙ってるぜ!」
「なんだってっ⁉」
それ以上は聞かず、モミジは飛び出した。
私は後に続こうとする小僧を捕らえる。
「小僧、そいつらはどこだ!」
「東町の旅籠さ」
「どうおかしいんだ」
「もう身なりからして山賊さ! そいつらが大将に復讐してやるって、酒飲みながら話してたんだ!」
「そりゃ本当かい、ライゾウ!」
モミジが戻ってきた。
当然だ。
賊の居場所も聞いていなかったのだから。
「よし! アタシが行ってとっちめてやる!」
「待てモミジ! 人数を集めるのが先だ!」
「ヤハラのあんちゃん、敵は五人からいたよ」
「よし、モミジを追いかけろ!」
私は警備の配置を思い出した。
あちこちに配置しているので、道中人数を集めることはできる。
私はモミジの仲間に声をかけながら走った。
人数が増える。
六人になっていた。
この人数で勝負になるだろうか?
不安はあったが東町に入った。
モミジが一軒の旅籠に突入するのが見えた。
賊の宿泊しそうな宿に心当たりがあったのか、蛇の道はヘビというやつであろう。
「やいこら! ウチの大将亡き者にしようと企んでる、山賊ヤローはどこだ!」
一丁角離れているのに、威勢のいい声が聞こえてきた。
すると銃声が轟いた。
大丈夫か、モミジ!
私も足を励ます。
宿に到着すると、土間でモミジが尻もちをついていた。
「やいやい! ウチの姐御にナニしやがった!」
無手のクセに、ライゾウが突っかかろうとする。
すると二階の辺りから、またも銃声が。
目を上げる。
一階はバー兼レストラン。
正面には二階へ続く階段。
そして二階にはドアが並んでいる。
つまりこの宿は他所の領地の客も受け入れられる宿。
当然犯罪者も入り込みやすい。
そして階段を上りきったところに、山賊風の男が五人、火縄銃を掲げて立っていた。
五人とも火縄銃を持っている。
いまライゾウに一発撃ったから、残りは三発。
というか、ライゾウは?
「あ〜〜ビックリした〜〜……」
モミジのとなりで尻もちをついて、ライゾウも目を白黒させていた。




