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まだ語るヤハラ

私の一人語りをいま少し続けさせていただく。

私は中央で全寮制の学生時代を送った。

しかし卒業後はナンブ領地で男爵さまに仕えている。


ズバリ言い切ってしまうと、他の領地のことはあまり知らない。

少なくとも浅い知識だけで軽々しく語るつもりは無い。

だがナンブ領地に限って言うならば、妙に忠誠心が強いように思える。


少なくともここの領主の低い爵位、男爵というところから考えると、あまりに忠誠心が高いと感じられた。

学園の同期などは公爵さま御子息御令嬢であっても、ここまで忠誠心は高くなかったと思う。

高等な学問を積んでいないにもかかわらず、高い社会性と道徳心を、下々の職種にある者でさえ持ち合わせていたのには驚いた。


クサナギ先生に訊いたところ、「そうした倫理観は寺子屋や学問所に通うより早く、親や祖父母から仕込まれるのさ」という答えが返ってきた。

親から子へ、そのまた子へと、倫理観や道徳観念は受け継がれてゆく。

つまり学問を始めるより早い時期から、ここの領民は道徳心を学んでいるのだ。


「A」という行為はやってはいけません。

「B」のような人間になってはいけません。

それは何故なのか?


子供心にも疑問に感じる、考える。

幼い時期から思考を要求されるのだ。

頭が悪かろうはずは無い。


そして他の領地と違い、ナンブ領の宗教観念はかなり曖昧だ。

「神さまがこのように仰るから、これが正しいんです」という教育方法が存在しないのである。

まるで、「それじゃあ考える力のある奴は育たないよ」と嘲笑うかのように……。


そして武術においても道徳心や倫理観が反映されている。

武術とは何か?

より効率よく人間を殺傷する技術である。


私たちのような多数派の種族は、ただ強ければいいとか、ただ目の前の敵を倒せばいいと、そのことだけに躍起になっている。

しかしナンブ・リュウゾウをはじめとした男爵領地の剣士たちは違う。

敵に対しても尊敬の念を忘れないのだ。

ただ、尊敬はしていてもその技術は目を背けたくなるほど徹底された残忍さがあるのだが。


多数派種族の武術は、敵を罵り人間として扱わないところからはじまる。

しかしナンブの武術にとって、それは最後の到達点なのである。

最後には敵の首を落とす。


それも残忍に。

敵を取り押さえて動けなくして、それから脇差で心臓を突き、抵抗力を失くした上で首を落とすのである。

非道と言えば非道かもしれない。


だが彼らはそうした残忍な戦いにおける恐怖心を、稽古による克己心の養成で乗り越えているのだ。

だから戦士、剣士は尊敬されている。

私たちの種族とは違う。


私たちの種族の剣士、戦士は単に「人を殺す能力があるので怖がられている」だけなのだ。


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