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帰還

町長は死ぬる、情婦は叫ぶ。

白いシーツは鮮血に染まると、場は一気に騒然となった。

なにごとかと駆けつけた使用人たちだったが、惨状を目の当たりにしてこちらは声を失う。


「使いの者は町長補佐の屋敷へ走れ! 町長急死、次の町長が決まるまでの間、補佐官が代行を務めよと! これは北領長ナンブリュウゾウからの指示である!」


使いの者が走った。

リュウゾウ親分は親衛隊に命じて布団ごと町長の亡骸を運び出す。


「イズミはいるか」


「これに」


天井の羽目板が外れ、鋭い目だけが現れた。


「北領の市町村長に触れてくるがいい。ロカタ町長、不義を恥じてナンブリュウゾウの眼前にて自害せり、とな」


「御意」


羽目板が閉じられた。

なにごとかと思っていると、大将が笑って言う。


「今のははシノビ、ニンジャと呼ばれる職種の者だ。情報収集、破壊工作、要人暗殺などなど、手広くこなしてくれる。以降ヤハラどのとも縁ができるやも知れぬ」


なるほど、つまり各市町村長に脅しをかけてまわるということか。

不正を働くならばナンブリュウゾウ、いつでも現れて成敗するぞ、と。

ここまで手際がいいとなると、計画的な行動としか考えられない。


なかなかにやり手である、ナンブリュウゾウ。

これはもう、バカさまなどと揶揄はできまい。


「しかしヤハラどの、町長は俺の家臣ではなく、男爵……つまり親父に仕えていると言っていたが、やはりどこもそういう考えなのだろうな」


「最終的には領地の者はすべからく男爵にお仕えとなります。しかし物事には順序というものがございますし、領長さまは男爵さまの子息。そして男爵さまに仕えていると言いながら不正に手を染めているのですから、語るに落ちたとはこのこと」


「いやさ、そうじゃねぇよ。ヤハラ」


急に平たい口調になる。


「この恐怖政治でどいつもこいつも子分にしてやるのが、一番早いのかな、ってよ?」


そういうことか。


「殿、それでしたら飴も与えてやるといいでしょう。さすれば民は殿に心酔いたします」


「なにか良い知恵はあるか?」


「考慮しておきます」


とりあえず帰還だ。

酒だ飯だ女だと、親衛隊は駆け足で帰還する。

そうなると私は帰りも荷馬車である。


つまり、回収した町長の亡骸と同乗ということになる。

この亡骸は領長邸宅で焼くということだ。

証拠は残さないという方針である。


親衛隊シロガネともども、夕暮れの人となった。

先陣を切るのは親衛隊長シロガネ・カグヤ。

そして荷馬車のとなりを走るのは北領の親分ナンブ・リュウゾウであった。


「おう、ヤハラ。お前さんならこの先、どうするよ?」

えらく気さくな口調で大将が訊いてきた。

これに即応できなくては、私のコケンに関わる。


「先ほど申しました飴を考慮いたします」

「先ほども訊いたが、良い知恵か?」

「左様、殿がシノビを使い各市町村長へ脅しをかけましたが……ゲフンゲフン」


「いや、良い。申せ」

「その効果が現れてからのことになりますが、年貢の値下げなどはいかがでしょう?」

「それでは富国強兵の方針に偽りは出ぬか?」


「そこは数字を睨んだ上での匙加減です。絞りすぎず弛めすぎず」

「その根拠が数字か」

なるほどこの大将、根拠を求める性質タチか……。


それを掴めただけでも良しとしよう。

そうこうしていたら、血と脂の臭いが鼻についてきた。

荷馬車の中で町長の亡骸と同席ということを思い出した。


大将の本拠地、カワチ市へ入る。

そして邸宅へ。

庭先には準備のいいことに焼き場が丸太で組まれていた。


大将の指示で亡骸は焼き場に。

油をかけられ、すぐに火をかけられた。

「当直の者は配置へ! 当直班長と非番の者はすべて屋敷へ入れ!」


隊が分かれた。

番兵が配置につく。

その他の者は私をふくめて屋敷へ入った。


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