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モミジという娘

さて、北領庶民の盛り上がりは翌日になってもおさまらず、ナンブ・リュウゾウ自らがパレードを行い区切りをつけてやらなければ、どうにもけりのつかない状況であった。

急遽貴族用の馬車を手配する。

シロガネ・カグヤと親衛隊各隊長を呼び出し、警護の打ち合わせをする。


裁縫場に『キョウカちゃん人形』の作成を大至急で依頼し、大将の嫁はこのような娘であるとアピールすることが決定。

執務室はあれやこれや、大車輪の忙しさとなった。


パレードのプランが固まり、領内に告知を出す準備をしようとしていたところ、邸宅の門前でなにやら集団が押し寄せていた。

この忙しいのになにごとかと顔を出してみる。


「あ、ヤハラさま。なんでもございません」


門衛は親衛隊隊士である。

なんでもないという割には、困っているような顔をしていた。


「あ、アンタお偉いさんだね? 聞いとくれよ、こいつじゃ話になんなくってさぁ!」


ポニーテールの娘が乗り出してきた。毛先が丸くカールして、華を感じさせる娘だ。

いわゆる和服ではあるのだが、娘装束ではない。

袴を履いて二本差しの男拵えだ。

まっすぐに私を捕らえるその目力に、つい話を聞いてみることにした。


「アタシら暇持て余してる次男三男の集まりなんだけどさ、今度ウチらの親分が伯爵さまの娘さん、お嫁さんにもらうっていうじゃないか!

アタシらもなんかお手伝いできないかって集まったんだけど、この朴念仁が通してくんなくってさぁ……」


「こら娘! 朴念仁とはなんだ!」


まあまあと、とりなして。

この時代、この世界では家業は世襲制だ。

つまり職業選択の自由など存在せず、農家なら農家、職人の家なら職人の家を『長男』が継ぐことになっていた。


そして次男三男はというと、昼頃まで兄や父の手伝いをして、昼からは小遣いを貰って職業訓練の寺子屋に通ったり、日雇いの仕事にありつくものだった。

それが暇を持て余してるというのは、いわばゴロツキ。

半分無職のような集団。

いわば不良の集まりというところか。


「しかし娘、お前は二本差しではないか。ずいぶんと勇ましいな」


「こう見えても天神一流の目録だよ! ちょっとしたもんなんだから♪」


天神一流剣術。

親衛隊長シロガネ・カグヤと同門ということになる。

そして「お手伝い」などとしおらしいことを言っているが、要するに小遣い銭稼ぎに来たのである。

小遣い銭欲しさとはいえ、今は火急の要件だ。

本当のことを言えば人手は数あっても構わない。


「これ娘、名はなんという?」


「モミジだよ、手伝わせてくれるのかい?」


「うむ、間もなくパレードの告知を出す。その折にはお触れ書きの立て札を辻々に立ててきてもらいたいのだ」


「……地味だね? アタシら、こう見えても腕っぷしには覚えがあるんだけどさ」


「コラコラ、戦さではないのだ。そういう元気は合戦のときまで取っておきなさい」


こういった手合いならば、私のポケットマネーで賄うことができる。

子飼いというのも悪くないものだ。

少し重宝させてもらうことにする。


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