郭清一斬
足元をかかとの無い藁編みのサンダルで厳しく拵え、シャツの上に鎖を着込む。
そのうえに真っ白な詰め襟を着て準備を整えた。
もちろん腰には帯、そこに刀を落とす。
「それでは北軍、これより不義の徒であるロカタ町長を成敗に赴く! 出撃!」
いっせいに階段を降りて館の外に出る。
私はバカさまに導かれ荷馬車へ載せられた。
そのまま昼間の突撃である。
目指すは南へ二十キロ。
隣町のロカタ町だ。
しかしこの地理的条件でありながら、よくぞあのようなあからさまな不正をしたものだ。
むしろお膝元であるがゆえの慢心だろうか?
しかしその判断が間違いであったということは、本日北領長である私の同期、そして同じ憂いを抱く冷や飯食らいが証明することになる。
夕刻、ロカタ町に入り駆け足をゆるめる。
町中を武装集団が駆け抜ければ、市民にどのような動揺を与えるやもしれぬ。
そのようなリュウゾウさまの判断である。
そしてその言葉を聞いて、「意外に配慮のできる男だ」と唸ってしまった。
しかし一団は、ひときわ大きな屋敷の前に立った。
ちょっとした貴族のような豪邸だ。
「カグヤ、二十ほど連れて裏門を固めろ。事が済むまで誰ひとりとして表に出すな」
銀髪の美少女、シロガネカグヤに命じる。
この采配はリュウゾウ隊十名が突撃部隊。
カグヤ隊は制圧部隊ということを意味していた。
死地には俺が立つ。
そのような意思の現れだ。
人数が分かれたところで、リュウゾウ大将は敷地内に乗り込んだ。
さすがに門番はいない。
「ワイマール王国ナンブ男爵三男、ナンブリュウゾウが面会を申し込む! 町長、これへ!」
そう怒鳴りながらドアを叩いた。
まずは執事のような老人が出てきた。
それを押しのけるようにしてリュウゾウ隊がなだれ込む。
もちろん私も一緒だ。
「女子供には手を出すな! ねらうはロカタ町長ただ一人!」
カグヤ隊というか、シロガネカグヤも裏から入ってきた。
親衛隊長の身としては、やはり大将のそばは離れたくないのであろう。
夕日の差し込む邸内をドカドカと親衛隊が征く。
そして二階から声があった。
「大将! 発見しました!」
うむとうなずくと、大将は私をうながす。
二階へと駆け上がった。
ロカタ町長は執務室ではなく、寝室で発見された。
愛人と思われる美女も一緒だった。
お盛んなことである。
「なにごとですかな、領長さま。事と次第によっては、大事となりますぞ!」
若造めと舐めているのか、町長は堂々としたものだ。
裸の女と一緒だが。
「ロカタ町長、その方より申請のあった年貢の書類。見逃し難い不備に満ち満ちておったので、これについて詮議いたす!」
「それでは執務室の方で……」
「その必要なし! ヤハラ、不備を指摘せよ!」
「は! まず必要経費として免税対象としているこちらの水桶。これが三万五千円として計上されております。これはどう考えても三五〇円の誤りかと」
もちろん距離、重さ、金銭などの単位は現代社会換算である。
「おや? それは失礼いたしました。おそらくなにかの間違いでしょう。訂正いたします」
「いえ、町長。それだけではなく、不備は数多に及びます」
私は眼鏡をクイッとあげた。
「しかもそれらの不備はリュウゾウさまの就任以降、急激に発生しておりました」
「町長、これは予に対する不服の表れと見るが、異存はなかろうな?」
ジリ……野蛮な貴族は足指だけで間を詰めた。
「なに様か、小童が!」
追い詰められた町長は逆上した。
「俺は男爵さまの配下ではあるが、お前のような小僧の手下ではないわ!」
そう叫んだ顔のまま、首が飛んだ。
シロガネカグヤが刀を納めていた。
そして宙にあった首を、リュウゾウが縦一文字に斬ってすてる。