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突入

血桜が動き出すと、鬼神党の拠点、木造平屋建ての前で様子をうかがっていた若い者が屋内に飛び込み、開戦を告げたようだ。

鬼神党の連中も着物の裾をからげて、股引脚絆の旅姿まがい。

タスキをかけた喧嘩装束でわらわらと表に出てきた。


互いに口上を述べるところまでは勇ましいのだが、そこからは後ろへ引っ込み、「用心棒先生、お願いいたします」というのだからヤクザ者などこの程度のもの。

もっとも私とて腕におぼえは無い。

ナンブ・リュウゾウと親衛隊の後ろに引っ込んでいるのだから、あまり大きなことは言えない。


そして用心棒先生同士の対決が始まる。

お互いにまだ抜いてはいない。

鞘の内である。


そのままもったいぶったような足取りで間を詰めていた。

居合で勝負をつける気なのだろう。

つまり一瞬で終わるということだ。


居合という武術は『刀』という武器を用いるナンブ領特有のものだ。

その特徴は鞘から刀をパッと抜いて、抜いたと思ったらパッと斬れていて、サッと鞘に刀を納めるという、電光石火の早業に特徴がある。

どちらが勝つものか?


素人の私には予想がつかない。

親衛隊の手練れに意見を求めたいところだが、そのいとまさえ惜しい。

食い入るようにして『その瞬間』を見逃すまいと、目を皿のようにしていた。


いつ抜くのか?

両者はすでに危険な間合いに入っている。

一刀一足という間合いがあるが、私の見立てではそれよりもはるかに近い。


ほぼ胸の合う間合い。

そう思ったとき、刃が一閃した。

刀同士が当たる金属音は聞こえなかった。


ぬれ手ぬぐいを引き裂いたような音だけである。

そして、仁義だなんだとうるさい方の鬼神党の用心棒が斃れた。

刀を半分だけ抜きかけたまま絶命している。


血桜同盟の用心棒の方が、相当に早かったようだ。

上に抜いた刀をそのまま斬りつけて、真っ向から脳天を唐竹のように割ったのである。

ふい〜〜と息をつく。


今の斬り合い、親衛隊はどう見たのだろうか?

ひとつ意見を聞きたい。


「本職の剣士から見て、両者どのように映りましたか?」


しかし、部屋はもぬけの殻。

親衛隊のしの字も見当たらない。


「……居ねぇし……」


どういうことか?襖は開きっ放し。

全員出ていったことは確かだが、それにしてもどこへ?


「おうおう、鬼神党の! 肝心の用心棒先生が殺られちゃあ、もう手立ては無ぇだろう! おとなしく手前ぇらの縄張シマ、残らずこっちによこしやがれ!」


「おう、血桜の。オレっちの縄張り仕切るにゃ、ずいぶんと人手不足なんじゃねぇのかい?」


「なんだと!」


血桜の頭が振り返ると、すでに手下はすべて地に伏していた。

シロガネ・カグヤとクサナギ先生の手による仕業だ。

そして二人は小太刀の血を拭い、鞘に納めたところであった。


「な、なんだ手前ぇは!」


と叫んだ血桜の首が飛んだ。

シロガネ・カグヤの一刀である。

そしてクサナギ先生は。


用心棒の太刀筋など足元にも及ばぬ、いや、何をしたのか見ていた私にも分からぬ一刀で用心棒を葬っていた。

血桜の用心棒先生は、刀に手をかけることさえ叶わず地に伏した。


鬼神党の面々が湧いた。

歓喜の雄叫びを挙げている。

しかし私の真下で戸が開き、行方不明だった親衛隊士がどっと飛び出した。


虚を突かれたように、生き残ったヤクザ連中は棒立ちになる。


「男爵さま、ナンブ・ダイサクの命である! この東領に根をおろす無頼の徒党、すべて根絶やしにすべきことと仰せだ! 一人残らず叩き斬ってやる、覚悟いたせ!」


ナンブ・リュウゾウの声である。

そして早速一人斬られた。

ヤクザどもは一斉に逃げの姿勢に入った。


しかしすでに、クサナギ先生とシロガネ・カグヤが回り込んでいた。

悲鳴と絶叫。

腑抜けたヤクザ連中は、刀を抜くことすらなくことごとく斬られて果てた。


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