刺客
そして夕刻。
人数で勝る血桜同盟が夜間に鬼神党を襲うという情報が入ってきた。
これは一方的に血桜同盟の勝利となることを予告していた。
それは私たちにとって良くない。
私たちとしては両者共倒れが望ましいのだ。
一方的な勝利など望んでいない。
この話を受けて、幹部を召集する。
殿もクサナギ先生も、シロガネ・カグヤも出払っていた。
人を遣って、三人を戻してくる。
緊急の会議だ。
一方的に壊滅しそうな鬼神党に助勢するしかない。
それには……。
「クサナギ先生、カグヤさん、出てもらえますか?」
「かまわん」
「行かせていただく」
二人はすぐに立った。
夜。
いよいよヤクザ連中が、私たちの眼下で決戦となる。
殿の部屋のすぐ下で、鬼神党の拠点と血桜同盟の拠点が見えた。
すでに血桜同盟は路上に人を出していた。
そしてその背後には、クサナギ先生とシロガネ・カグヤが迫っている。
いつ出る? いつ出る?
そのように見ていたら、血桜同盟のトップが宣言した。
「血桜同盟の精鋭諸君! いよいよ鬼神の阿呆どもを葬って、ナンブ東領を我が手に納める日が来たぞ!」
ヤクザどもが沸く。
しかし私としては東領を納めればナンブ領全体に手を伸ばし、果ては国全体にヤクザをはびこらせる積りだろう、としか考えていない。
ヤクザなどダニ。
つまり寄生虫に過ぎない。
国を弱らせ細らせる存在でしかない。
もしも彼らが次男坊三男坊の就職先をまかなっているとホザくなら、それはナンブ・リュウゾウがまかなってやろう。
もしも彼らが庶民の娯楽をまかなうとホザくなら、それもまた我々が管理する。
チンピラヤクザなどの出る幕など、どこにも存在しないのだ。
すべてを我らで管理し、効率的に軍費をまかなうしかない。
そしてついに、血桜同盟が動き出した。
鬼神党へと歩み始めたのである。
見ていると、その最後尾にクサナギ先生とシロガネ・カグヤが迫っていた。
みんな窓から身を乗り出して観戦する。
クサナギ先生もシロガネ・カグヤも、血桜同盟の構成員を背後から口を塞ぎ、胸に小太刀を突き込んで命を奪っていた。
一人、また一人と。そして鬼神党の拠点に一行がたどり着いたときには、その数をずいぶんと減らし、まら辻の奥へと姿を消す。
これは……。
用心棒先生の出陣となった折に、生き残りを葬るつもりではないのか?
そうすると宿で観戦している親衛隊士たちに出番は無くなる。
それは少し理不尽ではないだろうか?
さすがの私も心を痛めてしまった。




