構想
戦さの気迫満ち満ちて、私による一軍の編成を待ってから出撃と相成った。
今回もまた、男爵さまへ御挨拶を入れてからの出撃である。
「殿、ニノ兄の気性はいかがなものですか?」
道中、親分に訊いてみる。
じつはその答え、男爵家に仕えていたときから、私は知っていた。
しかし、ナンブ・リュウゾウがそれをどのように見ているか、そこが知りたかった。
「そうさなぁ、男爵家の人間だから食うには困らない。そして相続などという野心も無し。怠け者貴族の典型だろうよ」
ナンブ・リュウゾウは次兄をそのように見ていた。
そしてその見立ては、私の見立てとほぼほぼ一致している。
ボケナスの次男坊なのだ。
だから自分の支配地が荒れていても、まるで気にしないのである。
気骨もへったくれも無い貴族の次男坊。
それが次兄の評価でしかない。
しかしナンブ・リュウゾウという大将は、さらなる難題をふっかけてくる。
「なあ、ヤハラどの。これだけ人の集まる場所だ。なにか商いはできんかな?」
「武家が、商いですか?」
「そう、戦さというのはロハでは叶わぬ。なれば筋目の通った金銭が湯水のごとく湧きい出てくるような、そんな美味い話は無いものかな?」
ウチの大将は、男爵さまの懐具合を気にかけている。
南領の遠征も、実質男爵家の財布から褒美がでていた。
防衛戦、すなわち利益の出ない戦いでありながらだ。
そしてこの男、経済を薄っすらながら気にとめている。
三男坊とはいえ、貴族。
その身であるが故に。
ナンブ・リュウゾウは一人で旨い飯を食らい、旨い酒を飲む男ではないのだ。
貧しいならば民とともに貧しい飯を食らい、富めるならば民に旨い飯が行き渡ってから美食を楽しむ。
男一匹親分の道しか歩めない男なのだ。
だから褒美の金子は惜しみなく兵に与え、算盤方の私ごときにジロリと睨まれる。
馬鹿と笑うならば笑え。
これが俺の惚れた親分、ナンブ・リュウゾウなのだ。
これが任侠道、これが親分たる者の生き方なのだ!
このヤハラ、だからこそこの親分に仕える。
そしてもしこの男が、子分の飢えるを見ながら美食に舌鼓を打つならば、私は必殺の刺客団を編成し、かくじつに葬るだろう。
そのときはヤハラの死。
ともに腹を斬って行く先の道案内をしましょう。
いや、殿は極楽、私は地獄行き。
行く先を照らすことはできませんなぁ。
いや、俺と大将の将来の話ではない。
金儲けの話だ。
「でしたら殿、娯楽都市を作ってはいかがでしょう?」
「娯楽都市?」
「そう、遊興の三本柱とはなんでしたかな?」
「飲む、買う、打つ」
「左様、ならば東領地のあらたな姿は、享楽都市。酒と女と博打で興すべきでしょう」
「上手くいくかね?」
「殿は酒はお嫌いですかな?」
「いますぐ『酒ヲ愛ス』という詩を吟じれるほどだ」
「でしたら女は?」
「恥ずかしながら、輝夜の世話になっている」
「古今東西に誇る美形ですな。では命をベットした戦さはお好きですか?」
「俺が死ぬ訳ないだろう。賭けにもならん」
「ですが戦さは常に死ぬか生きるか、五分と五分にござる」
「その五分を確実な勝ちに持ち越すため、俺はヤハラという男を呼んだのだ。親父どのに無理を言ってな」
「可能な限り尽くします」
「ならば答えよう。俺は戦さが好きだ。命懸けだから面白い。勝ち戦さが確定してればなおさらだ」
「結局、殿も飲む、買う、打つが大好きなのでしょう。民草莽の男子、すべからく殿と心はひとつです。ですから遊興都市カジノを作りましょう!」




