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討ち入り

そしてアヤコが掴んできた山賊たちの犯行予定日。

夜になってイズミが帰ってきた。

山賊たちが犯行に及んだという情報を携えてだ。


イズミにはポルコの見張りをたのみ、宿で待機していた私たちは即座に戦さ支度をはじめた。

槍や幟といった目立つものは置いてゆく。

そして支度の整った者から少人数で集会所へ移った。


春先とはいえ、戸を閉め切った集会所は蒸し暑い。

顔面に脂汗を浮かべて私たちはイズミの情報を待った。

昨日辺りから今日の日中にかけて、ポルコでは新しい客を入れていない。


集会所からこっそり様子をうかがうと、表に貸切の札が下がっていた。

一般の客は受け付けていないということになる。

そして酒や料理の材料が大量に運び込まれるのを見た。


山賊たちが飲み食いする分である。

となれば、酒宴が始まったときにはすでに盗品は別の場所に移されている可能性がある。

あれだけの材料が調理されるのに、一〜二時間と見て、それまでの間に決着をつけなければならない。


そのことを大将、ナンブ・リュウゾウに進言する。

われらが大将は「うむ」とうなずいただけであった。

落ち着いている。


おかげでこちらも落ち着くことができた。

するとイズミが現れた。


「大将、全員宿に入ったぞ」


「取り引きがはじまるまでどれくらいと見る?」


「慌てるな、まだ盗品を宿に運び込んでいるところだ。全部運び込んだところで突入するか?」


「そうだな、ヤハラどの。見立てをたのむ」


命じられて窓のそばに立つ。

戸板の隙間から、盗品らしきものが運び込まれるのが見えた。

まだ表には、何人もそれらしい連中がいる。

そいつらが全員宿に入ったところで、大将に声をかけた。


「北領親衛隊、出撃する!」


威勢よく戸を開いたりはしない。

あくまで静かに、ゆっくりとだ。

しかし表に出るのは素早い。

あっという間に全員通りへと出たのだ。


そして有無を言わせず押し込んでゆく。


「旅客改めである、神妙にしろ! 手向かいいたすは容赦なく斬り捨てる!」


盗品は一階のフロアに積み上げられていた。

盗賊どもも闇商人も、みんなそこにいる。

虚をつかれた形ではあったが、犯罪者の反応は素早い。


すぐに抜いてきた。

しかし準備万端の大将はもっと速い。

剣の下にもぐりこみ、賊の顔面をしたたかに殴りつけていたのだ。


乱闘の始まりである。

商人が逃げようとしたが、私がそれを知らせた。

すると裏に回っていた連中が、どっと押し込んできた。


バタバタと賊が捕らえられる。

縄をうたれた者も多いが、気を失い転がっている者も多かった。

それらも残さず縛り上げ、屋内にまとめておいた。


「イズミ、番所へ報告を」


大将が命じるとシノビは姿を消した。

大将が表に出る。

なんごとかと集まった野次馬が人垣を作っていた。

私たちは使うことのなかった照明器具で大将を照らした。


「北領地御預ナンブ・リュウゾウ、兄上に代わりこの地の山賊、ならびに取引のあった商人を捕らえた! 諸氏はあすから枕を高くして寝られるぞ!」


「おぉ、北領さまか」


「北領さまの山賊退治か!」


野次馬たちはようやく事態を飲み込んだようだ。

そこでもうひと声。


「この中にもまだ引っ捕らえられていない悪党の類がいようが、なにかをしでかした日にはこのナンブ・リュウゾウ!」


見事に見得を切る。


「北領より現れて汝らを懲らしめる由、肝に命じておけ!」


そこへ完全に出遅れた捕り方たちが現れる。

ほんの四〜五人だ。


「おいおいダンナ方、そんな人数で山賊たちをしょっ引けるんですかい?」


人垣の中から声が上がった。

野次馬たちは一斉に笑い声を上げた。

もちろん牢獄までの道のり、私たちも護送の手伝いをする。

その有り様は、まるで北領親衛隊の凱旋のようであった。


「ヨッ! 北領の大将大手柄!」


「兄の窮地に弟が立ち上がる! イカシてるぜ!」


一夜にしてウチの大将は、南領地の人気者になったようであった。

その頃にはすでに槍に幟、腰の大小も届きそれらしい拵えができていた。

しかし野次馬の大半は、北領軍が無手で賊に立ち向かい、一人として斬ることなく全員をお縄にしたことを知っていた。


そこがまた粋であるとして、ナンブ・リュウゾウの人気がさらに上がった。


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