敵地に入る
誰よりも早く町に入り、宿を手配する。
それも、山賊討伐団だということを気づかれぬようにだ。
宿は旅籠ポルコから一丁角離れた場所にした。
いざというときの対応が素早くできるようにである。
シロガネ・カグヤには先に湯浴みをさせた。
部屋に押し込んでおいたのである。
やはり隠密の行動に、あの美貌は良し悪しだったからだ。
そして私は宿の外で後続の隊士を待った。
読者時間で三十分ズラシで次々と出発しているはずだ。
そろそろ到着しても良い頃合いだと思っていたら、人混みにまぎれて荷車を押してきた。
鎖の着込みや大小の刀を積んだ荷馬車だ。
しかも商いの荷車に装っている。
荷車を押す隊士たちも、平服の合わせの着物だけで袴を外しているのであまり目立たない。
見事なまでの農民風というか、商人風というか。
元々が上級の身分でないのかもしれない。
あまりにも似合い過ぎているのだ。
私は手を振って彼らを招いた。
隊士たちも応えてくれる。荷車は裏の広場に着けて、木箱のまま部屋へ担ぎ込む。
そして第二、第三の到着を受け入れて、最後に大将ナンブ・リュウゾウとクサナギ先生、アヤコの三人が宿に入った。
「お待ちしておりました、殿」
「うむ、全員揃ったか?」
「はい、大小に鎖の着込みなどもすべて配布しました」
「しかし今回は捕物であろう?」
大小は必要ないのではないか、とナンブ・リュウゾウは言う。
護身のためにござりまする、と私は答えた。
だから武器として鉄の丸棒を与え、縄の巻いたのを帯に差し、配置によっては丸杖なども携行させるつもりであった。
「照明器具の手配はどうなっておる?」
「シノビのイズミが仕込んでおります」
準備は万端であった。
そして二日後には山賊どもが商隊を襲うことになっていた。
そして盗品をその夜に取り引きする。
読者世界では即座に警察が動き、犯人割り出しに尽力するであろうが、中世世界には通報手段が無い。
犯行現場を目撃した者が番所へ訴え出るか、死体を見つけた者がそうするか?
あるいは商隊が到着しないと騒いで捜索に出るかしないと、犯行自体が露見しないのだ。




