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あてにならぬ

夕刻、南領に到着して窓口係のナニガシが宿をあたる始末。

これは下手をすれば……。

「殿、申し訳ありません。ともすればこよいは野宿となるやもしれませぬ」


私が申告すると、親衛隊が気色ばんだ。

「なにっ! おそれおおくも若君に山賊退治ごときで野宿もありうるとかっ!」

「待てっ! 軍師どのに咎はなかろう!」


シロガネ・カグヤは親衛隊をおさえようとするが、親衛隊は親衛隊で先程から不満がつのっている。

どうにも止まりそうにない。

「親衛隊長! あの役人ぶった斬ってやりましょう!」


「バカ者! それでは山賊どもとなんら変わりがなかろうが!」

「あんなのと一緒にせんでください! 俺らは殿と隊長一途なんスよ!」

「だったら言うこと聞けっ!」


シロガネ・カグヤの一喝で、親衛隊の暴発はどうにか止まった。

「いいか? 殿を野宿させてもかまわぬという南領の遣り口に激怒しているのは私も同じだ。しかしここで我らが暴発しても、山賊どもが喜ぶだけであろう!」


事実、そうである。

私たちが騒ぎを起こして得をするのは山賊どもでしかない。

ならば、ここは自重だ。


というか、親衛隊というのはここまで危険な存在だったのか?

まあ古今東西親衛隊というものはこんなもんだとは思うが。

「いいか! この場の不満はすべて胸の内にためておけ! これを晴らすはただ一事! 山賊をこらしめる一事のみ! その瞬間まで怒りはおさめておけ!」


つまりはその時にこそ本領を発揮するということか。

そのことは念頭に置いておこう。

まあ、それはそれとして。


夜もとっぷり暮れてからナニガシとやらが帰ってきた。

それなりには誠実な人間なのかもしれない。


「まったく、何故それがしがこのような仕事を!」


私の見立てもたまには外れる。

ナニガシとかいう者はいつまでも怒っていた。

それをなだめる紋付きの大将。


「いや、大変に助かり申した。少ないがこれは賃金に御座る」


そう言って駄賃を握らせた。

折衝役ヤハラ、またまた失態である。

そうした役は私の仕事なのに。


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