計画
なにか良い策はあるか? と大将に訊かれたので、良い策は無いと答えた。
「こんな子供まがいの連中に策もなにもありませんが、しかし」
「しかし?」
「斬って捨てるのは簡単すぎますので、可能な限り生け捕ってはいかがでしょう?」
「ふむ、そいつらの顔を領民たちに見せつけて、それから裁きの場へ引きずりだすのか。良い考えだな」
「そうなりますと、連中を洞窟から出さねばなりません」
「いぶり出すのか?」
「いえ、どうやら連中も穴の中でばかり暮らしているのではないようで」
「つまり?」
「盗品を売って金を作り、その金で遊んでいるようです」
「盗品など簡単には売れぬだろう?」
「悪い奴はいるものです」
その商人の名前まで、アヤコは調べ出していた。
そしてその商人の店で、飲む食う買うをするのである。
「連中とすれば命の洗濯というところか」
「そこを襲えば一網打尽かと」
「よし、その方針で参るか」
決定した。
凶暴な山賊連中はこちらで引き受けて、商人たちは領長である兄上にまかせればいい。
兄上も顔が立つであろうし、地元には地元の都合というものもある。
「ただし殿」
「なにかね?」
「この策は機密を要するもの。例え兄上であろうとも漏らすこと無きよう」
「そこから策が漏れると見るか」
つまり、兄上の手下に間者がいる可能性がある、ということだ。
「しかし親衛隊には説明してよかろう?」
「機密であることを前提に」
うむ、とうなずいたところで本決まりであった。
そして親衛隊に間者などいないということも確信している。
大将の指示でクサナギ先生、シロガネ・カグヤ、そして親衛隊一〜三番隊長が呼び出された。
生け捕りという方針は大将の口から説明がされた。
そして盗品を買い取る商人などの話は私から説明する。
捕物は、その取引の場で行うこととした。
「して、その取引の場とは?」
クサナギ先生が訊いてきた。
「旅籠の老舗、ポルコだそうです」
「詳しくは現地で確認した方が良さそうだな」
「そして市中に紛れるために、南領へ入るときは白の詰め襟。捕物に出る際は平服としましょう」
「なるほど、山賊討伐隊が詰め襟服を着ていると印象づけておいて、実際には平服で捕物をするのだな?」
ナンブ領地は男爵さまはじめ、異人種が多い。
よその領地ならいざ知らず、ここでは合わせの着物が主流なのだ。
着物が目立つということは無い。
「とは申しましても二本差しがゾロゾロと出歩くのは目立ちます。ポルコを襲う前に近い場所で三々五々と落ち合うことにしましょう」
「槍や弓矢はどうする? せっかく持ってきたのだが」
一番隊長だ。
「私たちの宿舎に置いておきましょう。そうすれば討伐隊が動いていないと、賊の目も少しは欺けます」
すべて小声による会話だ。
そしておおむねの方針を伝え終ると、一人ひとり部屋を出ていった。
隊長たちは、これからひっそりと隊士たちに方針を伝えるのだ。
部屋には幹部だけが残った。
「そしてここからが面倒くさい話になるのですが」
山賊たちは我々がしょっ引き、悪の商人連中は兄上たちの衛兵が捕らえることとする。
つまり、地元衛兵たちとの共同作戦ということになる。
「私たちだけで手柄を立てては、兄上の面目を潰してしまいますので」
ちょっとした政治的な駆け引きだ。
「しかし南領の衛兵は足を引っ張ってくれそうだなぁ」
クサナギ先生は呑気に言う。
「ヤハラどの、援軍の約定はしかと取り付けてくだされ」
シロガネ・カグヤの目が鋭い。
「北領のリュウゾウが功名にはやり先走ったなどという誹りを受けぬよう、なにとぞ」
「たまわりました」
せっかく手柄話が向こうから舞い込んだのだ。
オラが大将の名を貶めるようなことは、万に一つもあってはならない。




