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ヤハラ、力士隊に興味を持つ

そして更新再開です

「よし、それじゃあ槍兵と剣士隊、中庭に集まれ!」


クサナギ先生の号令で、北区画の在兵たちは中庭に躍り出た。

それに加えて甲冑を装備した力士隊である。

槍兵というのはモミジたちのような一般人に、みちのく屋で二流以下とされている者たちの集まり。


いわば雑兵であった。

対して剣士隊はナンブ・リュウゾウ筆頭、シロガネ・カグヤ率いる親衛隊の面々。

それに力士隊が加わっている。

槍兵と槍兵、片方の背後には剣士隊と力士隊が控えていた。


「ヤハラどの、これよりナンブ家兵法の一端をご覧にいれよう。ナンブ家の兵法は基本的にこのようなものと心に留め置かれ、実際の戦さ場の参考となさるが良い」


ナンブ・リュウゾウはすでに戦さ人の顔であった。

これは血を見るか、と予感してしまう。

しかしボスであるナンブ・リュウゾウは私に一礼。

槍兵の後ろに陣取る剣士隊にもぐり込んでしまった。


「それでは、合戦始め!」


クサナギ先生の号令により、黒半纏に黒袴の若い衆たちが木槍を薙ぎはじめた。

右、左、上、下。

槍は突くものと考えていたが、こうしたファランクス陣同士の合戦では、そうならない。


実際には敵の小手、もしくは拳を叩くのだ。

そうして戦闘不能者を数多く出す。

その方がより効率的に敵兵の数を減らすことができるのだ。


そして敵の数が減ったところで、現場の決戦兵器剣士隊が突入する。

それに合わせるようにして、力士隊が混乱を広げた。


実戦稽古は案外に整然としている。

これは訓練展示でありいわばデモンストレーションだからだと思う。

結果、ナンブ・リュウゾウを含む連合部隊の勝利で部隊訓練は終了した。


訓練終了の号令。

兵士たちはそれぞれの部隊でひとかたまりになる。

剣士たちも道場へと戻っていった。


槍兵は長得物のため、中庭に残り整列。

そのまま号令にあわせての戦闘訓練を再開する。

私の目をひいたのは、甲冑姿のまま稽古場にもどる力士の群れだった。


あのまま戻ってどうするつもりかと見ていたら、あのままの姿で相撲の稽古を始めたのである。

基礎の四股踏み、すり足に股割りの柔軟体操。

驚くべきことに彼らは、巨体に似合わぬ柔軟性と身体能力を兼ね備えていた。


そして土俵で一対一。

甲冑姿のままぶつかり合いの立ち合いだ。

ガシャンとかゴツンとかいう音がするたび、本番前に甲冑が壊れるのではないかと肝を冷やしたが、さすが匠の鍛えた鉄である。

安っぽい足軽の鎧とは拵えが違った。


「ヤハラどの、相撲に興味がおありかな?」


背後に、ナンブ・リュウゾウである。


「ヤハラどのならばもう少し賢そうな、槍兵や弓矢の運用に興味があるかと思いましたが」


「いえ、あまりにもバカっぽいこの大男の群れを、どのように戦場で活用するのか? そこに興味がございました」


「まあ、それはさきほどの訓練展示で」


「忖度ですな」


「ほう?」


「あれはあくまでも訓練展示。いざ実戦本番においては、あの力士隊かなりの威力になるのではないかと……」


「なるほど、白兵戦ではこのような表現はしませぬが、力士隊は白兵戦の大火力であると?」


そう切り出してくるということは、ナンブ・リュウゾウは力士隊をそのように活用して欲しいということか。

となると、膠着した前線を強引に突き破る破壊力。

あるいは丸太を抱えさせ、ハンマーを担がせての攻城兵器。


頑丈な鎧にモノを言わせての突撃隊。

騎士ほどの機動力は無いが、遠征に同行できて河に橋をかけるなどの手作業が可能性なことを思えば、馬なんぞよりよほど役に立つ。

ファランクス陣形が槍兵の真骨頂ならば、それを打ち破るのは甲冑に身を固めた力士隊なのではなかろうか?


とにかく不死身、そのうえ怪力。

陣を破られれば、これほどの厄介はなかろう。

しかしそこに、鉄砲隊が来れば別だ。


いかに匠。鍛えし鎧とはいえ、鉄砲玉にはかなわない。

ここは用い所と言えよう。

超人的な決戦兵器、無駄に死なせてはならない。


ここはヤハラの得意の戦術。

鉄砲弓矢の飛び道具で、存分に敵を叩いてからの運用である。

しかし、状況を有利に運ぶための鉄砲が、まだ届いていない。


とにかく飛び道具には力を入れて、数を揃えるしかない。


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