表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/193

知恵袋

そして大将ナンブリュウゾウは親衛隊長シロガネカグヤを呼んだ。

近々のうちに南領へ山賊討伐へおもむく。

そう伝えた。


シロガネカグヤは「みなにそう伝えます」と言って去った。

親衛隊長シロガネカグヤは銀髪長身の美形である。

そして大将ナンブリュウゾウのためとあらば、伽までしてくれる。

忠臣の鑑とも言える娘であった。


故にそれだけの会話で事がすべて成立する。

人集めに報酬の額、すべて言わずとも理解しているに違いない。

配慮の一貫として、あれこれ確認しなければならないだろう。

そしてシロガネカグヤが出ていったあとで、若々しい中年男が入ってきた。


「おう、これはクサナギ先生」


「カグヤさん、急ぎで出ていったようだけど、どうしたんだい?」


大将が先生と呼ぶこの男。

クサナギシロウというそうだ。

町中に道場を開く、剣術指南の先生であり、大将にとっては剣術の師匠らしい。


「いえ、南領の兄上が山賊に苦慮していると、父上から。そこで北領の親衛隊で討伐へ赴こうと」


「親衛隊だけでかい?」


「いえ、クサナギ先生にもお願いできましたらと……」


「そう来なくっちゃな。いいぜ、俺も出る」


「ありがとうございます」


なんとこの師匠も、謝礼や褒美の話ひとつ無く、簡単に出撃を決めてしまった。


「で、いつ出るんだ?」


そう訊かれて、大将は私を見る。

答えるのは私のようだ。

南領まで、ほんの六十キロほど。


今日中に文は早馬であちらへ届けられ、なすりつけられるように責任者が決まり、渋々金庫を開き金を用意する。

どうにかこうにか宿の手配が済んで、文が戻るのは早くて明後日。

出発がそれより早くなることは無いだろう。


そのように返答すると、クサナギ先生は「あの兄上だからなぁ……」とアゴを撫でた。

おや? クサナギ先生にも情報網があるのか?

いぶかしんでいると、大将が教えてくれる。


「道場から武者修行、剣術留学に出た者がな、文を寄越してくれるのさ」


商いであちこち出歩く者が情報通だということは聞いている。

しかしいがいなところに情報網というものは存在しているものだ。


「それくらいじゃねぇと領長は務まらんさ」


「おみそれしました」


そんなトコから、領地の外。あるいは諸国の動きが見えてくるのだ。

しかし剣術使いという肉体派が、そのようなインテリジェンスを所持しているとは驚きだ。


「言わなかったかな、ヤハラくん。剣術は兵法であり、兵法は兵学である。頭が切れなくちゃ剣士は務まらんのさ」


ということはナンブリュウゾウという我らが大将。

急に利口になった訳ではなく、元々頭が良かった。ということになる。


「本当に、バカの振りをするのは大変だったよ」


「いや、大将。親分ってのは少しくらい足りない方がいいんだぜ」


クサナギ先生は笑う。


「お前さんにはもう、知恵袋があるんだからよ」


二人揃って私を見た。

もしかしたら私は、なにかとんでもない荷物を背負わされたのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ