休戦の地
実は国王が過激派組織に襲われるシーンがあったのですが、時勢が時勢ですので急遽カットし、路線変更いたしました。
暫くは銃撃シーンも控えるつもりです。
「あー、何でこんな目にあってるんだろうなぁ畜生!」
「ヒグ様、本音、少しは隠してください」
こいつらには本音を言ってじわじわと圧力かけていくくらいで丁度いいんだよ。多分な。
女性陣への説教が済んだ後、(といっても、ルクナリエなんかは、全くもって反省の色がなかったが)少し休憩してから街を案内して回ることになった。
お袋はここに残るらしいが。なんでも、腹の中の子に障るかららしい。家で安静にしてろよ。何で来たんだ……。息子の顔が見たいってことなら幸せ者極まりないがな。
……というか、それを説教の合間のついでで言うなよ。弟が出来たとか重大事件だろう。せめて、もっと勿体ぶって雰囲気作るとか、あるだろ?
誕生日プレゼントは、弟です!なんて茶化して言っていたが……。まぁ最高のプレゼントだ。将来的に考えて。
いや、普通に弟が出来て喜ばない訳でもないし、将来的にベルレイズ領を弟に押し付けれるとかいう莫大なメリットはあるんだがな。
それでもやっぱり人間は朝三暮四なもんで、多少は目先の利益を考えてしまうわけだ。借金返済させて欲しかったな。
「借金を返せないとなると……もっと国有ならぬ、領有事業始めるか?とはいえ、俺が目指してるのは自由主義的な競争……事業の国有化は寧ろ社会主義じゃないか……」
問題はそこなんだよな。全部を解決できる神の一手なんてものがあるわけでもない。殖産興業をもっと進めないと……。
「そろそろ、街案内の時間じゃないかのぅ?」
「……もうそんな時間か。思考に耽るとどうにも時間が足りねぇな」
「車はアイリスが出してくれてるって。私はさっと飛んで辺りに異常がないか確認してくるよ。仮にも国王が乗ってるなら、ヒグも気を使わないといけないだろうし」
「そいつはありがたい」
この街はもう、天使や悪魔がうようよといる。だからまぁ、今更妖精の一匹二匹が空を飛び交っても、敵対行動がない限り特に驚かれることなくスルーされるだろう。
冷静に考えて中々に魔境だな、この街。
※※※※※※
「お、おい。あの町中を横断する長方形の鉄の固まりはなんだ?デカイ車か?」
「列車だよ。正確には蒸気機関車な。レールがないと動けない代わりに、結構重いものも運べたりする。今走ったのは人を乗せるようのヤツで、物資運搬用は街の外走ってる」
これまた大変な苦労があったんだよな。唐突に列車走るとさ、魔獣が反応してなんやお前!って感じで襲ってくるからな。普通の獣は電気柵とかでなんとかなるけど、魔獣はそうはいかない。
だから地下鉄にすることも考えた。土竜型とかワーム型の魔獣はいないことはないが、陸に比べれば少ないし、奴等はそこがコンクリートの壁だって分かってたら特に襲ってこないことが多い。
だから実際に、城壁なんかは地中深くまだ作られてるわけだが、残念ながら技術的な問題と経費、維持費的な問題でこの案は放棄せざるを得なかった。
他の案もあるにはあるんだが、どうにもな。結局は人類様の不名誉極まるお得意技。環境破壊、生態系破壊。そんな系統になってしまう。
相手は魔獣だ。生態系破壊は勿論、どんな生物を相手にしてもやるべきではないことなのは確かだが、特に魔獣相手だとどんなことが起こるかわからねぇからな。
無茶苦茶遠回り路線を引くことになってしまった……。輸送コストが何気にかかっている。
「ぬあああああ!」
「え、お兄ちゃん!?どうしたの!?」
「あ゛ぁ!?壊れたか!」
「いえ。勝手に色々考えた結果どん詰まりして悶えてるだけですね。これは」
アイリスさん的確な説明どうもありがとう!その通りすぎてドン引きするわ。もうなんでも見透されてるんじゃねぇの……。
「それよりも街案内を早くせい!」
「……あぁ。発電所と工場は前にエスタに紹介したな」
「うん。でも要はお兄ちゃんが前からやってたことを大規模にしてるだけでしょ?」
「つまりこの街というよりは、貴様の特色ではないか」
国王様から呆れた目。まぁ、だいぶん魔改造してるからなぁ。
「ま、工場とかは特に見所ないだろうし、カットするわ」
と、言いながら車を走らせた先にあるのは大きな教会。もとは小さな教会だったのだが、レザナリアからの支援でなんかでかくなった。
何でだろうな。……天使が在中しているからですね。はい。
「あのバカみたいにデカイのが、この街の教会な」
「おぉ、……あんなに綺麗なのがあったか?」
「僕も中々来る機会はなかったけど、少なくとも僕が知ってる限りではなかったね」
国王と親父の二人が知らないのも無理はない。なんせ完成したのが超最近だから。というかここ数日だから。
人外パワーの超絶速度で建設しても、あのサイズ作るのにはかなり時間がかかった。周辺住民には少し立ち退きすらしてもらったし。
比べるのはアレだが、出雲大社ぐらいの大きさだ。
「ちなみに教会だが、悪魔もたまに出入りしてる」
「「「「「?!?」」」」」
「教会の建設も悪魔がかなり関与してるしな」
と、漏らしてしまったのが悪かったのだろう。咄嗟に殺気……ッ!いつの間にこんなに感覚派になったんだろうな!
車内は狭い。武器は扱えない。ならば恐らく来るのは徒手空拳だろうな。腕輪蔵から盾出したところで間に合うかどうか……。
「何のつもりです?」
──スゥッ
そのアイリスの言葉に遅れて、鋭く滑るような金属音がした。
「さて、何があったんだか全くわからないんだが……とりあえずアイリスありがとな。……で、何のつもりだ。レールエスト」
俺の首をつかもうとして、アイリスに刀でその手を叩き上げられたエスタの契約魔獣の天使、レールエスト。
なんか切った雰囲気ある音がしたが、切ってはいなかったらしい。峰打ちだってヤツだな。室内用の短い刀だ。コイツ、アンデットになってからやけに刀の扱いが上手い。
まぁ、仮説としては、東藤無二斎……アイツを贄にした結果。アイリスがアイツの全てをその身の喰らった結果なんだろうな。
「神聖なる教会に穢れた悪魔を入れるなど、何を考えているッ!」
「別に、なにも?」
何を考えているとか、言われると困る言葉ランキング第一位なんだが?本当に、俺からすれば宗教関係はどうでもいい。否定する気もないが、俺には関係ない話だ。
それに、今回に関しては冒涜してる訳ではないのだ。
「れ、レールエスト。落ち着いて!」
「マスター、……しかし、これは!」
恨みがましい目で見てくるレールエスト。というかハレスペル?お前何気に寝るなよ。戦車内で堂々と寝るか?普通。
「天使と悪魔の共存。それがこの街のルールだ」
「そんな馬鹿なことが許されるとでも……
「聖王からは許してもらってるぞ?」
「嘘をつくな!」
レールエストが動こうとするが、それを先んじてアイリスが制止する。流石に速い。これと人間の生身で渡り合えるハレスペルは化け物か。
「エドワード、いるか?」
「なんだ、ヒグ?」
「偽装、解除していいぞ。それから、エルトアランテを呼んでくれ」
「了解した」
教会の脇に戦車を停める。教会の中を案内がてら、説明していく。
「さっき言ったように、この教会の存在は聖王から許可を受けているし、なんならレザナリアからバックアップされている」
「何故、そんなことを……」
まぁ、ごもっともな疑問だな。今まで散々悪魔は敵ですよって言ってた奴等が悪魔の存在を黙認していることになる。
「別に、悪魔と天使のいがみ合いが無くなった訳じゃない。それは今も続いているし、世界にとってはきっと必要なんだろうさ」
「それは、どういう?」
「まぁ、聞いても意味わかんない台詞だよな。忘れてくれていい」
こいつは多分、悪魔と天使がいがみ合っている本当の理由を知らない。まぁ、知ったところで現状だと信じなさそうだな。
「ここはさ、休戦協定地なんだよ。戦争に、生活に疲れた者たちが集う憩いの場だ」
憩いの場って言い方であってるのかは知らないが。
「別に、楽土を気取ろうって訳じゃない。楽園を造ろうって訳じゃない。たださ?不毛な争いしてるくらいなら、どっちも丸めて吸いとった方が利益が出る。そんだけの話だ」
「……訳が分からない。利益とはなんだ。何の話をしている!」
その言い方だと、利益って言葉の意味か分からないという風にもとれる。が、まず間違いなく、何の利益を指しているかを問うているんだろうな。
「まぁ、端的に言うと労働力?俺たち資本家からしたら、コスパのいい労働者はいくらいてもいいんだよ」
エドワードとエルトアランデの手首を掴む。そして持ち上げる。といっても、子供の身長だから大した高さではないのだが。
「ようこそ魔境の街へ。ここは敵対行動をとらない限り、あらゆる生物を許容する休戦地帯だ」




