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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
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最高のプレゼント

 空気が完全に固まった。……ですよねー。和平条約を結んだとはいえ、つい先日まで敵国だったところのl国家元首なわけだ。早々簡単に仲良くなりましょうって言って受け入れられるはずもなく。嫌に重々しい空気になった。


 どうしてくれんだ、ハレスペル。


「まさかとは思うが、帝国の傀儡になったわけではあるまいな」

「いや、ちげぇよ。というか、一応戦勝国はこっちな訳だしな」

「ハッ。帝国はまだ負けてネェよ!」

「お前がしゃべったらややこしくなるから一旦黙ってろ!」


 まだ負けてないとか言われると、本当にこの都市が帝国の傀儡になったのかと勘違いされるだろうが。



※※※※※※


 とりあえず、戦勝の経緯を説明することになった。ふんぞり返るハレスペルに対するアンゴラウスの忌々しげな目線。はっきり言って空気は最悪だ。もうこの空気吸ってるだけで四日市ぜんそくになるんじゃないかってくらい。


 四日市ぜんそくは日本四大公害病の一つだな。イタイイタイ病、水俣病、新潟水俣病、そして四日市ぜんそくだ。場所は三重県の四日市市。原因は工場の排気ガスによる大気汚染だったはずだ。


 まぁ、つまり、何が言いたいかというとそれだけ空気がヤバいという訳で。この状態で話すとか冗談じゃねぇ。


「という訳でアイリス、よろしく」

「え、私ですか?」

「この場にアイリスって名前の奴はお前しかいないと思うんだが」


 ほら、あれだ。リーダーは不動って言うか、副官に説明を任せた方がそれっぽいだろ。映画の見すぎか?まぁ、何でもいいから雰囲気を出すことが大切なんだよ。知らんけど。


「嫌ですよ。それだと、私が実権を握っているように見えるじゃないですか」

「いや、そもそもお前に政治知識なんて欠片もないんだから実権なんて握れないだろ」

「それは自分でもわかっていますが、それを相手に認識してもらえるかは別問題です!」


 「はぁ、仕方ないですね。……んんっ。砦を破壊し、町を解放し、帝都に到着した我々は、早朝に決戦を仕掛けました」

「あの砦が一晩で落とされたという報告は、流石に衝撃的だったわね」


 いや、まぁナーシェルとエドワードの力によるごり押しなんだけれども。そこは言わぬが花だな。というかまぁ、言ったところで信じてもらえるかどうか。


 異世界人ということすら伝えられてないからなぁ。単純に伝えることが苦手なのかもな。だってそうだろ?今まで育てて貰ったけど、中身は違う世界のおっさんです、何てどう言っていいか分からん。


「本隊が突撃し陽動を行っている内に、別動隊が爆弾をセット。武器庫宝物庫食料庫その他諸々あらゆる蔵を徹底的に爆破、それと同時に撤退したのです」


 戦争パートの説明終了。ちなみにこの間約五十秒。短ッ。……やっぱり、アイリスに任せて正解だったな。俺だとだらだら長々と説明してもっと時間を食っていた。


「あとは、終戦交渉をしたそうですが、詳細は知りません」

「端的に言うとこっちと戦争してもメリットないし手を組まないかって話だな」

「種族の暴力による恐怖外交の間違いじゃネェの?」

「何のことだか知らないなぁ!」


 天使?吸血鬼?さてさて何のことやら。


「その作戦、全てお前が?」

「そうだよ。ちょうど、小国が大帝国に勝った戦争があったから、その作戦をパクってな」


 日露戦争モデルケースにしただけだから、そんなに驚かれても困るんだが……。立案したのは俺だけど発案者は遠い遠い昔の日本の戦略畑の方々だからな。


「……そうか、子供の成長は、早いな」

「むぅ。ゆくゆくは軍部を担う役職にするか?ベルレイズ領の跡取り問題であれば解決の目処はたっているわけで……」


 なに感傷に浸って天を見上げてるんだか。というか国王。てめぇはなに考えてんだ。嫌に決まってるだろ、そんな役職。俺は進んで戦争したいわけでもないんだが!


 三國志演義やら封神演義は読んだけどな。あとは信長やら秀吉やらの戦いをちょっとかじってるだけで、そもそも軍略なんてさっぱり何だが……。


「とりあえず、そこの皇帝のせいで予定が狂ったけど、誕生日おめでとう。ヒグ」

「あ゛ぁ?何だテメェ、誕生日なのか?」

「正確には一日か二日前だがな」

「誕生日くらいちゃんと覚えておこうよ。二日前だよ、兄さん」


 そうらしい。まぁ、重要なのは誕生日プレゼントということでここの領地の借金を帳消しにされるということ。よぉし、タスク減少!ありがたい。


「誕生日プレゼントの件だけど、借金帳消しは無理よ」

「……え?、ちょ、嘘だよな。……後生だからお願いしますお母様。マジで押し付けられた借金がやばいんで……」

「そもそも額が多すぎるし、誕生日プレゼントに借金返済とか、前代未聞よ」


 知らない。前時代のことなんて知らない。歴史と知、万象を開拓してこその科学者だ。常識なんて18歳までに身に着ける偏見なんだよッ!というか、そうでないとマジでヤバい。


 ヒグ、知ってる。借金、無茶苦茶多い。馬鹿みたいに多い。阿保かと思うぐらいに多い。帝国からふんだくった利益でも返せるか微妙。


「なら余が肩代わりしようじゃネェか。一億か?十億か?好きな額を言え!」

「……なぁんか裏がありそうな感じがするんだが?」

「これから義息子(むすこ)になる友のためにひと肌脱ごうッてだけだ。気にすんじゃネェ」

「それ借金肩代わりしてほしかったらお前の娘と婚約しろってことだよな!」


 ゴゴゴゴゴゴゴ!   そんな、ジ○ジョの奇妙な効果音が流れた。まぁ、これは、俗にいう……


「修☆羅☆場☆ね♪」

「何楽しそうに言ってんだ!って、シャルルてめぇ拘束魔術とか卑怯だろ!」

「ククク。愉悦じゃなぁ」


 この愉悦部員どもがッ!


「……どういうこと?」

「待てエミリアナ。とりあえずその右手に纏った厨二くさい不穏な魔力を止めてから話し合おう。昔、五・一五事件の折に犬養毅首相は言った。話せば分かるんだ」

「死亡フラグwww」


 シャルルは横で草を生やすな。というか室内でわざわざ魔術を使ってまでリアルな草を生やすな。おハーブは需要皆無なのですわ‼


「あら、王国内のもともと親密な貴族とこれ以上婚儀を結んで一体なんの利益になるのか……無学な私には分かりませんので、教えてくださる?」

「ヤル気か?ならこちらも臨戦態勢、なのじゃ!」


 煽るな煽るな。あとヴァルヴァベートは本気を出さなくていいから。さっき馬鹿みたいにデカい大剣振り回して戦ったばかりなのに、まだスタミナが持つのかよ。化け物が。


「どうやら、一時休戦のようだのぅ」

「力で競ってヒグの嫁を決めるというなら、我々の方が勝率は高い。どうやらエミリアナはエスタと組んでのタッグ戦。互いにライバルとはいえ、ここは組むのが妥当だね」


 あの?扇角、ティア?大真面目にこんな戯言に付き合う気かよ、お前ら。


 さてさてさて。残念ながら俺はマジシャンでも何でもないし、どう逃げるか。フラッシュバンは知ってるやつも多いから当然対策されるよな。


「グレア、助けろ」

「助けてもらう立場にしてはえらく尊大だな。あい分かった。とはいえ、我が微力があの吸血鬼に敵うとは到底思えぬが」

「頑張ってくれ」



※※※※※※



 大騒動(部屋を崩壊させるほどのバトル)後、今回は未定ということで結論に至った。書類と貴重品の避難はアイリスがそれとなくやってくれていたおかげで助かった。


 というか、本当にこの時間何だったんだよ。


「じゃあ誕生日プレゼント、結局どうしましょうか」

「もう弟ぐらいしかないのだが……うむむ」


 え、は?弟……あぁ、前にそんなこと誰かが言っていたような気もしなくもない。というか、弟できるなら俺はベルレイズ領継がなくてもいいんじゃねぇの。


 やった。最高のプレゼントじゃねぇか!


 ……いや、借金返済をプレゼントって言ってた俺が言うのも何だが、プレゼントが人間の生命ですって冷静に考えてヤバいな。


 というか八歳差の弟ってかなりレアというか、差があるよな。第一子の出産年齢が早いからこそか?お袋はもう三十半ば。きちんとした医療設備整えるか。


「よし。借金返済はあれだが、誕生日プレゼント代わりに株を買わないか?」

「「株?」」


「あぁ。県立病院を作る!」

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