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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
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終戦講和会議

「では、これより、王国帝国間戦争問題の講話会議を行います」


 天使、それも見るからに上位存在と分かるヤツが司会を務める。しかし、まさかこんな大物がお出ましだなんてな。下手したらエドワードと同レベルくらいの力持ってるぞ。


 てっきり、レザナリアの外交官が顔を出すくらいだと思っていたんだがな……。アイツ、結構影響力があるのか?


 何か測るような目で見られるのが気にくわねぇが、上位存在にお出ましいただけるのは有り難い。


 というか、そんなのがいるのに俺に向かって剣ぶん投げてきた皇帝って。天使も止めれるなら止めて欲しかったんだが。


「では自己紹介を。先ずはこちらから。エンペラーエンジェル、ロイトエル。レザナリアの調停者です」


 っ!?調停者ってアレだろ?レザナリアの天使のトップで神の代行者とか言われるバカみたいに強い天使。大物にも程があるだろ。


 というか、こっちの世界でも天使=何とかエルの法則は顕在なんだな。ガブリエルとかラファエルとかミカエル、ミハエルなんて名前のもいるのか?天使の個体数は結構多いから、何体か天使名が被ってるヤツがいるかもな。


「九十三代目教皇、アレルガンド26世と申します。その他付き添いの者の名は、今は言わずともよろしいですかな?」


 そんなにいるのかよ、アレルガンドさん。何とか何世って聞くけど、精々3から5、地球だと最高でも11世くらいしか聞いたことないぞ。


 もしかしたらもっといるのかも知れないけど。確か、東ローマ最後の皇帝がコンスタンティノス11世だった筈だ。


「では、次に王国側」

「ガナラチア領の領主、ソウ・サクラダだ」


 シャルルとティアは……別に紹介しなくてもいいか。扇角は今馬小屋にいるしな。ユニコーンとかペガサスは経典にも記されている聖獣だから大切に扱われてる筈だ。


「……そこの、剣を受け止めやがッたヤツ、テメェの名前は?」

「シャーロットよ。ああ、剣は返しておくわね」


 シャルルって呼び名を許可していないあたり、皇帝に対して心を許していないのが分かる。


「なんだ?返してくれンのかよ。次は分かんネェぞ?」

「問題ないわ。剣を抜く前に、確実に殺すから」


 完全に目が笑ってない。表情筋が仕事サボってる。そうだ、こういうときのための調停者!というわけで助けて。……いや、我関せずみたいな態度とらなくていいから、調停してくれよ!


「帝国側、自己紹介を」


 ロイトエルが動いた。というか速い。武器は……棍か?棍を突き出して仲裁している。


 なんというか、天使には到底似つかわしくない武器だな。何となくもっと、レイピアとかの可憐な武器か、もしくは大盾と大剣とか重厚感というか、聖騎士って感じの、そんなイメージだった。


 シャルルは反応してたけど、皇帝は呆気にとられてるな。天使の方を見ていた俺でも目で追うのが精一杯。マトモな人間の反応が見れてなんか嬉しいな。


 皇帝は興が削がれたとばかりに、乱暴に座って紅茶に口をつける。


「……ッ。サイレム帝国皇帝、ハレスペル・サイレムだ。自己紹介は今更だがな。貴様らも」

「近衛騎士長。ザロメス」

「帝国魔導師団筆頭、ガウェルスじゃ」


 武骨な王、鎧の塊、魔導師?なマッチョハゲジジイ。随分とキャラ濃いなー、コイツら。特にマッチョハゲジジイ。ウィンクが強烈過ぎる。


「では、終戦交渉を始めましょう」

「んじゃ、こっちの要求は終戦、貿易、それから鉱山、この三つだ」

「オイオイ。前半二つはいいンだが、最後の鉱山ってのは、場合によっては承服しかねるぞ」


 ま、そら金山銀山なんかは国の収入に関わるからな。そうそう簡単に手放せないのは当然だ。


「別に金銀は、興味ないって言ったら嘘になるが、今は後回し。国境線に近い鉱山でこことここ。銅山ともう一つは火山に隣接した洞窟だな」

「火山洞窟、ネェ。何か使えるモンでもあンのか?精々、極少量アダマンタイトが偶然運が良かったら見つけられるッてレベルだろ」

「期待してんのは火成岩の類いと、硫黄だな」


 地層深くには深成岩……マグマが地下深くでゆっくり冷え固まって出来た鉱石がある。もしかしたらレアものがあるかもしれない。


 でも一番の目的は硫黄だな。硫酸作成とか、火薬とか、いくらあっても足りないからな。特に火薬。これから領地防衛の要は銃と大砲になる。大量に消費する筈だ。


「火山の方はいいとして、銅山はくれてやれネェな。強欲過ぎンだろ」

「言っておくが、お前の国がそこまで言える立場か?」

「テメェこそ立場を弁えやがれ。帝国相手に優勢に立った気分でいられても困るゼ!」


 事実だな。実際のところ国庫破壊には成功したけど、こっちの領土の倉庫は空どころかマイナスの負債だらけ。表面の体裁整えてるだけで寧ろこっちが敗勢だ。国王は何やってるんだか。


 ……だけど、ここてビビって退いたら取れるものを失う。


「天下の帝国様はご自身の栄光が強すぎて目が眩み、真下に大穴が口を開けていることを痛い目を見るまで気がつかないと?」

「あ゛ぁ?今一瞬、図星って顔したナァ!」


 畜生、表情筋の僅かな揺らぎを隠せてなかったか!この超人が、どんな視力してるんだよ。全く。思考速度加速系統の魔術か?


 まぁいい。そう言ってくるのは予想済みだ。ずっと俺のこと睨んでたし、表情見られてるのは察してたしな。


「いや、帝国のアホさ加減に呆れを通り越して驚愕しただけだ。そこまで滅亡したいとはな」

「……ほぅ。ということは噂に聞いた包囲殲滅作戦は事実、と」

「さぁ。俺から何も。……ただ、火の無いところに煙は立たない、とだけ言っておこう」


 皮肉げな笑みを浮かべてやる。ま、立っているのは嘘と虚構で出来たただの幻なんだけどな。別に嘘は言ってない。


「別にただで銅山くれって言ってる訳じゃない。お前らが差し出せってずっと行ってた魔の森、税として収入の五割の条件を呑むなら立ち入りを許可する」


 釣れた!明らかに反応が変わった。王国からすれば資産にはなるが危険地帯。だが、精強な軍隊を持つ帝国なら、攻め入ることも出来る。


 こっちはただで税収がゲットできて間引きまでしてもらえる。これぞWINーWINの関係という奴だ。


「勿論、過度な乱獲や森林破壊は禁止な」

「……五割は欲張り過ぎだ。三割」


 おっとノッてきた。まぁ、五割は流石に吹っ掛けたからそうなるわな。皇帝が目先の利益に飛び付いて、銅山はこっちが貰えるってことで確定した。狙い通り。


「四割八分」

「三割五分だ」

「四割五分」

「いいや、三割五分は譲れネェな」

「五割五分」

「あ゛ぁ!?増えてンじゃネェか!」


 おっと。以外とノリがいいな、この皇帝。ていうか、今皇帝が机叩いたせいで机に亀裂が入ってるんだけど。どんな力で叩いたんだ?


「嘘嘘。冗談だよ冗談。四割な。四割」

「……四割なら……ギリギリ。一回の収益が……魔獣を何体倒せるかにもよるが……」

「というか、机割れたけど大丈夫か?……って、榧の机か。ならセロハンテープかサランラップでもかけとけば勝手に直るな。……そういや塩化ビニルはないんだった」


 榧は割れやすいけど、放っておけば勝手に直る。何年も置いて乾燥させると丈夫になって割れなくなる。将棋とか囲碁の盤に使われてる奴だな。それをわざわざ机にしてるのか。


「ええ。太陽国からの輸出品です。かの国では戦争遊戯や陣取り遊戯の高級な盤に使うそうですが、我が国伝統の戦争遊戯(チェス)の高級な盤駒といえば、専らガラスや金属製ですので」


 んで使い道がないから仕方なく机にしたと。成る程。


 というか、ガラスのチェス盤使ってるなら、こっちの世界の標準的なガラスよりももっと透明度の高いクリスタルガラス製のチェス盤とか、蛍石製のチェス盤売ったら利益でるか?


 金属は、確か魔法鉱石で作るチェスの盤駒が贅沢な嗜好品らしいな。ミスリルで白を、アダマンタイトで黒を作るのが金持ちの証しだとか。


 世界で一番高価なものだと総オリハルコン製の盤駒があるらしいけど。俺だったら絶対融かして他のものに転用するな。


「傷口だけ覆っておけよ。ゴミが入ったら綺麗に直らないからな」

「お気遣いありがとうございます」


 それにしても、やっぱ石油欲しいな。石油あったらセロハンテープとかサランラップとかも作れるんだけど。


「燃える黒い水って知らないか?」

「知らネェな」

「残念ながら、人間界の素材には疎く」

「ふむ。それなら、獣王国あたりで一時期噂になったな。とは言え、森林火災を焚き付けるだけで何の利益にもなりゃせんわい」


 やるじゃねぇかマッチョハゲジジイ。流石、年の功だけあるわ。見てるだけでSAN値がガリガリ磨り減りそうとか思ってすまん。


「いや、情報感謝する」

「何がしたいのか読めネェが、どうでもいい。今は貿易の話を詰めようや。何を輸出できて何を輸入したい?」

「輸出は鉄と綿糸、あとは医薬品の類いだな。輸入は綿糸の材料になる綿花。大量に頼む。あと、赤鉄鉱、……錆び鉄鉱石とかも輸出してくれていいぞ」

「穀物は出せネェのか?」

「大規模な生産計画は立ててあるけど、軌道に乗るまで三年は欲しい」


 蒸気機関といえばやっぱり製糸業。因みに、綿糸作るのが製糸業、絹糸作るのが紡績業だったはずだ。


 やることは日本のお得意の加工貿易だな。綿花生産に関しては、帝国は支配地とか奴隷も多いから大量に作れるだろ。


 いや、そういや帝国の土はそこまで生産に適してはなかったな。穀物を求めたのもそれが原因だろう。今している戦争も大体が肥沃な土地が目的だ。これは、最初からつまづいたか?


「随分と加工技術に自信があるようじゃな」

「あぁ。画期的な加工道具を造ってな」

「是非ともソレを売ってもらいてぇモンだが……」

「そりゃ無理だ」


 というか、蒸気機関とか高炉を解体して送ったところで、組み立てと使用方法が分かるとは思えないしな。


 それに、せっかくこっちが産業でリードできるチャンスだってのに、そう易々と機会を手放してやる義理はない。


「ンじゃ、あの武器。大きい砲と小さい砲、アレ売ってくれや」

「高いぞ?」

「別に構わネェよ。量産品ッて感じだったが、アレも発明品か?偉く優秀な技術屋がいるモンだな」

「まあ、全部創が作ったんだけどね」

「「オイ!?」」


 何で言うんだよシャルル。技術目的で誘拐とかされたらどうする気なんだ。子供モードだと流石に対処できないぞ。


「で、輸出できンのか?」

「分かった。小さい方が火縄銃、大きい方は大砲っていう。何丁ぐらい欲しい?」

「試験運用で……ざっと火縄銃が五百、大砲は二十」

「それくらいなら用意できるが、それ使ってウチに戦争吹っ掛けようってなら甘いぞ?」


 くれてやるのはちょっと優秀な中古の火縄銃だ。今回戦争で使った奴な。で、その隙に俺たちは新式の銃を開発する。


 それに、銃の本体はつくれても火薬は作れない筈。魔術式に置き換えも出来なくはないんだがな。


 それなら火薬よりも連射力が落ちる、兵士を選ぶ武器になる、使う度に兵士の体力魔力を損耗する、っていうデメリットがある。


 それなら魔術師は魔術師として運用した方が話は早い。超一流の魔術師は戦略兵器みたいな存在だからな。それを帝国は多数保有している訳だが。


 まぁ、だからこそ、最低でも技術優位っていう防御陣がないとな。サイレム帝国はレザナリア聖国に次ぐ超大国。王国は経済力では負けてはいないが、軍事力では敗北している。


 そんな大国同士がなんで、よりによってガナラチア領で隣接しているんだか。嘆いても仕方ないけどな。


「もし帝国が第一次世界大戦でもやらかそうって腹積もりなら、俺は玉砕覚悟、全力で止めるぞ?」


 自領の経済回復のためとはいえ、武器を売るんだ。それによって世界が戦火に包まれるというなら、責任はとらなくてはな。


「ハッ‼東の沃野の巨人相手に戦争を吹っ掛けるだけだ!」

「全っ然安心できる要素がない情報なんだが!?……でもそうか。農地がないからな。つまり巨人の平原を農地にしたいってことだな」

「オゥ。一緒にやるか?あンだけ広いんだ。勝った暁には出来高で分けてやンよ」

「これは持ち帰って堅実に議論することを前向きに検討しておくとしよう」


 断る!と言うわけで議論すると言っておきながら実質的になにもしない。関与してたまるか。聖国、何か国際社会の秩序的に不味いだろ。お前らが手出ししろよ。


「なにか勘違いしているようですが、別に我々の教義では人道に反しない限り生存競争は肯定しています」

「……えぇ。ほっとくと最大級の大絶滅を引き起こすぞ?人間ならやりかねない」

「その時は私や天使軍を派遣して強制的に止めます」


 人が増えて組織とか国が発達して複雑化したら、その程度では止まらないんだがな。  


 命令系統が確りしてたら、トップが死んでも次に指揮権が移るだけだ。そこのところ分かって言ってるのか?


「それに、巨人やトロールは人を食べますから。いずれにせよ、戦乱は避けられないでしょう」


 ……ワァオ。進◯の巨人じゃん。今すぐワイヤー式の機動装置を開発しないと!それとも、壁を築く方が先か?確か北欧神話とかでも巨人が人を食ってたな。


「下手したら王国に巨人やトロールが流れ込むかもじゃな?」

「脅しかよ、このジジイ。そうなれば強制参加か。別に、この世から一匹残らず駆逐してやるッ!とか思ってる訳じゃないんだけどな」

「あー、日本のマンガとかアニメーションのアレね」

「聖国の自国防衛は勝手にするので、そちらはどうぞご自由に」


 ていうか、貿易の話からかなり話が脱線したな。取り敢えず、話の路線を戻して領事裁判権と関税自主権だけ確り確保しておかないと。



※※※※※※



 皇帝ハレスペル、彼には生まれつきの特殊な技能がある。一般的に魔眼とか邪眼と言われるアレだ。目の性質を考えて厳密に分けるなら、分類的には精霊眼に属すのだが、議論すべき点はそこではない。


 精霊眼の能力は、魔性の者を見抜く、というものだ。この場合の魔性は種族適正的な魔性と、当人の性質的な魔性、どちらも見抜き、分別できる。


 もっとも、本人は単なる超直感だと思っていて、精霊眼の影響であるとは知らないのだが。


(サクラダからは魔性の気配はネェ。城内戦の時に見た仲間のヤツにアンデットとか悪魔がいるのには驚いたが、アイツらの性質は正。魔性じゃネェ)


 座った後に、紅茶を口につけ、先程自身の剣を掴んだ女を睨む。


(後ろの闇妖精の力かと思ったが違ェ。間違いなくこのシャーロットって女はヤバイ。サクラダもシャーロットを警戒してる節がある。多分だがこの女、超強ェぞ)


 彼の精霊眼は神獣にすら通じた。神獣の本質すら見抜いた。だというのに、シャルル・シャーロットに関する一切は、何も見えない。


 確実に人間だ。人間だと精霊眼は訴える。が、人間相手にこれはあり得ない。少しはそいつの性質が、正よりか邪よりかは見えなければおかしい。が、干渉の全てが防がれ、分からない。


 直感は人間だと言う。だが、感性は人間ではないと訴える。直感を数々の場面で信用し、それによって巧く世渡りをしてきたハレスペルだが、今回に限っては長年積み重ねた感性を信じる。


(コイツは、人間じゃネェ。最低でも神獣以上のバケモンだ。災厄が服着て歩いてンだ。あ゛ぁ。下手したら世界ごと滅ぶ。冗談じゃネェぜ)


 同刻、隣にいたマッチョハゲジジイことガウェルスも、同じ判断を下し、念話でハレスペルに忠告した。


(このサクラダは、中々交渉上手だが、策略家には珍しく腹の中がキレイだ。好感が持てるじゃネェか)


 聖邪が見抜けるということは決してよいことばかりではない。特に、腹の中がドス黒く濁ったオッサンを見ると吐き気がする。


 そんな奴がおべっかを言ってくる訳だから、ハレスペルは、外面と中身の差にイライラしながら毎日を過ごしている。


 その裏返しで、一本の芯が通った漢気のある者には広く心を開いて接する。その点では、ヒグは彼に気に入られた。合理を信条として重んじる科学者であることが幸いした訳だ。



※※※※※※



「ヨォし。コレで終わりか?」

「ん?あぁ。細かいことは後々ってことになるな」

「ンじゃ、ソウ、宴だ宴!オイ、ザロメス。酒は持ってきてンだろうな!」

「……いや、ここで馬鹿騒ぎはアウトだろ」


 仮にも教会だぞ。教会。いや、でも、神道だったら御神酒とかあるしな。以外にアリなのか?


「料理は用意しましたが、酒を元服前の子供に呑ませるのは教義に反するため、黙認しかねます」

「流石にそうだろうな。って、元服前の子供ってまさか……」

「えぇ。貴方のことです」

「……何時から?」

「最初からじゃな。ほれ、そこのシャーロットなる女、わざと術にヒントを残しておるわい。大方、子供と知って態度が変わるかを見ていたのじゃろう」


 シャルルの方を見てみると、にんまりと狐のような笑みを浮かべている。傾国の美姫が本当にいたら、こんな感じなんだろうな。


「帝国は実力主義だからな。頭がキレたり、力があンなら子供でもいいンだよ」

「実際、魔導師団では大人顔負けの活躍をする1腕白なクソガキがおってな。まったく、手を焼かされるわい」

「それは御愁傷様」


 というか、俺だけ酒が呑めない流れ?大人モードなら肝臓機能も成人男性レベルに引き上げられてるから問題ないんだけど……。


「飲んではいけませんよ」

「殺生な!」

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