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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
88/99

帝都襲撃

いつの間にか総合ポイント150越えてた……。

いつも読んでくださりありがとうございます。

 出撃前 深夜



「落としてきたぞ、砦」

「早っ。そして軽ッ‼」


 無茶苦茶仕事早いな。本当に。あと、そうも軽々しく報告するようなことじゃねぇだろ。なのに平然としてどうと言うこともなさげに……。難攻不落じゃなかったのか。


「ククク。余裕余裕。数の暴力で潰したぞ?」

「キーワード、軍隊アリ。ゾンビ特攻」

「あ゛ー。何となく分かった」


 エドワードのヒント、もうほぼ答えじゃねぇか。大方、アンデットを大量に突っ込ませて、潰された端から再生。それを永久に繰り返したってとこか。


 容赦ないな。数の暴力至上主義者の俺でも軽くドン引くわ。


「勿論、目撃者は全員抹殺したがな」

「私も、姿を見られては面倒だ」

「───ッ……。そうか」


 ……まぁ、死霊魔術師なんて存在がバレたら一貫の終わりだしな。……教国と手を組んでるんだから悪魔も論外。合理的に考えて、……全員殺すのが、……。


「泣きながらも、苦しみながらも、全員最後まで戦っておった。帝国軍人として栄誉ある立派な死に方だったとも」

「帝国はそう言う国ですよね」

「それはまた、狂った国家だのぅ。蛮族か何かかの?」

「妖精狩りにあった妖精郷の者も言っていたな。帝国軍は殺せども殺せども士気は落ちないと」


 しっかし、毎回思うんだが、とんだ国家もあったもんだな。


 富国強兵、戦勝によって繁栄した、平民と剣闘士奴隷がある貴族に纏め上げられ造った成り上がり国家。


 一応、皇族は存在するが、革命内乱で何回か代わってる。次期皇帝が弱ければ叛逆され、より強い者に乗っ取られる。その叛逆を乗り越えてこその皇帝とすら言われる。正に弱肉強食の世界。別名、竜の国。


 剣闘士奴隷とか犯罪者集団が建国に深く関わってるらしい。だからもしかしたら、あながち扇角の言う蛮族ってのも間違ってないかもしれないな。


「暗い顔だな。そういえば、貴様は帝国的思想は嫌いであったか。かの国が竜の国と言われているように、竜も似たような風潮があるからな。我としては分からんでもないが……」

「いやまぁ、な」


 違う国の政治形態やら民衆の思想に文句言える立場でもないし、内政干渉する気も更々無いんだが……。帝国主義の風潮がどうも、戦争してた時の日本と被るんだよな。勝って調子のって、戦争を再度して。


 洗脳教育のようにお国のためにって言って。嘘にプロパガンダで士気持たせて、欲しがりません勝つまではとか標語にしてさ。国家総動員法とか大政翼賛会、治安維持法で独裁政治。


 戦争始めた時の首相は戦争反対派だったけど、軍部が暴走してやむを得ず戦争を始めたって話を聞いたことあるけど。


 まぁそんな国の生まれで、平和万歳って生きてて、実際に紛争内戦にテロリズムが起こった地域見た身としては、な。戦争のために国民の血肉に魂、その全てを捧げるって生き方は賛成しかねるな。


「そもそも、戦争なんざで人材失うってのが非合理極まるんだよ。まだコンピュータもAIもない時代なら人手は絶対必要だってのに……」

「ククク。それは合理主義に見せ掛けた甘さではないのか?」

「──っ、お前。それ以上は……」


 エドワードの手がナーシェルの首を掴む。細いナーシェルの首など、引き締まった筋肉を持つエドワードには一瞬でへし折られるだろう。


 その程度で殺られるナーシェルではないが、声帯を潰せば声が出なくなる。念話はジャミングで消せる。続きを言わせないためには充分な抑止になる。


 雲が晴れて月明かりがナーシェルを照らし、白粉を塗らずとも映える蒼白の美貌を淡く映し出す。深夜に鳴くセミの声が響く。誰かが立てる砂利の音がやけに大きく聞こえる。


「ククク。なんじゃ貴様ら。剣呑に構えて」


 そう言われ、辺りを見回すと扇角とティアもそれぞれ構えている。いや、皆さん俺を心配してくれてるのはありがてぇが、いささか過保護すぎやしねぇか?


「はいはい。悪魔クンは怒らないの」


 シャルルがエドワードの手に軽く触れて制止する。こいつはまたいきなり、どこから出現したんだか。まぁ、ゲームのモンスターみたいにどこからでも湧くから別に気にしない方がいいな。


「異界の吸血鬼殿、何故止める?いつもの享楽主義というなら私はこの身命を賭してでも……」

「そう怒らない。……だってそこの死体、別に甘さが悪いだなんて言ってないじゃない」


 シャルルの指摘に、一同は目を見開き、真意を問うようにナーシェルを見る。睨みではなくなり、


「答えを言ってしまうか。からかっていたのに、面白ぅない」

「確かにそっちも愉快だったけど、貴女のその残念そうな顔見るのも面白いじゃない」

「……これだから気分屋は困る。が、まぁその通りだとも」


 それから一拍置く。スッと、歌手が歌い始める時にマイクに入る呼吸音のような音がした。


「甘い?理想家?ただの夢想?だからどうした!それを叶えうるもののみが英雄と呼ばれるのであろう。だからこそ妾は民衆の英雄たらんと誓った。……さて、貴様は民衆を救えるか?」 


 その双眸は真っ直ぐに見据えてくる。ご指名の相手は俺らしい。全く、熱い視線で見つめられて、人気ホストになれるな。


「俺は別に英雄なんて大層なもんじゃねえよ。んなのやってられるか。ただの科学者にそんなの求めるな」


 勇者として世界を救ってください?異世界転生してるけど戦闘能力もチートも皆無な俺には無理だな。


 仲間募集して数の暴力で魔王ぶっ殺すくらいなら出来るかもしれねぇが、それって実際やってるのは俺じゃないし。一人で何でもできる英雄様は魔法やら魔術やら使えるやつに任せる。


「……ただ、科学者だからな。宇宙の解明なんて言ってるが、俺の持論では科学者の本懐は全体の利益の追究。だから、それが俺の仕事だ」


 第一、英雄様でも苦渋の決断はあるだろ。どこぞの王様なんて人の心が分からないなんて言われてたしな。


 切り捨てるものは切り捨てる。必要な犠牲でしたってこともある。科学なんて一歩間違えれば外法まがいのマッドな実験してるんだ。


 原初の科学は生を勝ち取ることから始まった。そして水銀に賢者の石などの錬金術、不死の探求。産業革命を経て、戦争の道具としての目覚ましい発展。


 人を生かそうとして人を殺すことなんてザラだが、それでも誰かの利益を追究する。そこだけは揺らいでない。


 一見、元素の発見とか宇宙の観察とか、余人には関係なさそうだが、それを解明してどう利用するかまで考えるのが科学ってもんだ。


「だから、悪りぃな。お望みには答えられない」

「いや、結構。成すべきことを成す。その姿勢はプロフェッショナルのそれだ。尊敬に値する」

「……はぁ。値踏みは終わったか、ナーシェル」

「グレア殿には悪いが、まだ終わっていないな。この者の性質はまだ調査の余地がある」


 値踏みされてんのね、俺。やけにナーシェルからこういう質問とかくると思った。というか、まだこれ続くのね。もうシリアスには飽きたんだけど。というか、平穏な日々に戻りたい!


 何だよ。研究室でわーきゃー言いながら少人数で楽しんでた時代はどこに行った!?


 戦争なんて何でやってるんだ。帝国と和解したら絶対に専守防衛だ。攻勢なんてもうしねぇ。アレキサンダー大王とかチンギス・ハンはよくあんな広大な土地を侵略できたな。東方遠征とか俺だったら気が狂うわな。


 日本国憲法第九条を領土法に書き足す。ええっと、何だっけ?日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、って感じのアレな。


 専守防衛。陸海空軍その他戦力はこれを保持しない!必要最低限の実力(自衛隊)しか持たない。絶対だ!



※※※※※※



「領主様、例の作戦、結構可能です」

「よし、んじゃまぁ、作戦名・モンスタートレイン。開始だ」

「ハッ。ではそのように。明かりは今の内に消させておきますね」

「ん。頼んだ」


 それきり、軍の指揮者は去っていた。


「それにしても、トレインって。ネトゲだったら一発アウト、運営に通告されるわね」


 他のメンバーは疑問符浮かべてる。そりゃそうだわな。ネットゲーム何て知らないもんな。でも行くぞ。オープンワールドゲームが出来るまで、科学は発展させる。


 ……というか俺がやりたい。ゼ◯ダ楽しい。マジで飽きない。


「よし、自らの健脚で主に見事な一番槍を……

「いや、そういうのは戦車で押し潰すからいいわ」


 結局、突貫して大打撃与えたら直ぐに撤退、後日教国交えて条約締結って感じだからな。


「ヒグ、流石にそれは扇角が憐れでは……

「恋敵に憐れまれるとは、自らも堕ちたのう」


 扇角が某ボクシング漫画で真っ白に燃え尽きた主人公みたいになってる!?俺内容あんまり知らないんだけどあれって結局ハッピーエンドかバットエンドかどっちかの?


「ククク。前々からその気はあると思っていたが貴様ら二人は、我らが主殿に懸想しているか?」

「ナーシェル様、出来れば茶化さないであげてください。彼女たちは本気なので。……この変人のどこがいいんでしょうね?」

「おいアイリス。聞こえてるぞ」


 今日も毒舌の冴えが宜しいようで、たいへんご機嫌麗しゅうってか?ふざけんな。


「まぁ、端的に説明するとだな、魔獣の森から知能の低い魔物引っ張ってきて帝国首都、帝都にぶつけるってだけだ」

「極悪非道……」

「いや、ティア?否定はしないけど傷つくから止めてくれ」


 勝つためには手段は選んでいられないってぐらいに、ウチの軍は困窮している。グレアのあの事件から着想を得たからアレだ。全責任は当方は負いかねますのでグレア宛にお願いします。


「そんな危険任務、誰が……」

「森の探索に長けた奴にやらせてる。緊急時ようにバギー擬き持たせてるし、本人たちも自信たっぷりだったからいけるだろ。……知らんけど」


 バギー擬きってのはアレだ。板にタイヤとエンジンくっつけて骨組みのような何かを装着したバギーにはどう考えても見えないけどまぁバギー的な何かだ。


 乗り心地は保証できない。が、まぁスピードだけは保証する。良質な石炭持たせてるしな。速い速い。


「そろそろか?暗視スコープとか赤外線カメラなんて無いから分からんな。帝国軍が火を焚いてくれてりゃありがたいんだが……。無理だな」


 望遠鏡で俺が観察したところで何の成果も得られない。というわけで早々にティアに望遠鏡を投げ渡す。


「んー、見た感じだとまだ帝国は襲撃に気付いてない……?」

「今、焦って迎撃し始めたぞ」


 エドワード、こいつ望遠鏡無しでこの距離見えるのかよ。しかも昼ならまだしも深夜だぞ、深夜。昼でもギリギリ何か動いてるってのが分かるくらいの距離だぞ?今は微妙な月明かりしかないってのに。


「兵士の起床は完了しているか?」

「全員、整列済みですよ」


「んじゃまぁ、出撃と行きますか」



※※※※※※



「伝令!伝令!皇帝陛下、魔獣の大進行です!至急、東門までお越しください!」

「あ゛ぁ?……ヘェ。そりゃは戦い甲斐があるってもんだナァ!だが、どうもキナ臭ぇとは思わネェか?」

「と、言いますと?」

「このタイミングで魔獣が攻めてきた方向とは関係ネェ砦と連絡がとれない。アノ難攻不落の砦がだゼ?」


 皇帝ハレスペル・サイレムは獰猛で粗暴な見た目に反して冷静沈着で知恵が回り、洞察力が高い。


 無双の力と将としての知謀。二つが揃ってこその皇帝。それを見事に成している。


「まさか、……敵は魔獣を意のままに操ると?」

「そこまでは言ってネェよ。ンナに怯えて敵を過大評価すんな。精々が魔獣引き連れてこっちに押し付けてきたってとこだろうが。迷惑千万な押し売りダゼ。……あ゛ぁ、面白ェじゃネェか!」


 獰猛にその双眸を見開きながら、戦斧を肩に担いで城のバルコニーに出る。


「テメェら!久しぶりの防衛戦だ。盛大に楽しめ。……派手にブッ壊すとしようゼ!」


 ───ドゴォン!


「正面から大胆にってか?あ゛ぁ?……嫌いじゃネェな、その考え方は。そのツラ、拝むとするか」



※※※※※※



「正門、もうすぐです。……魔獣騒動に駆り出されて兵は手薄!」

「よし、大砲、撃てーッ!」


 重厚な正門を大砲とダイナマイトで無理矢理抉じ開ける(破壊するとも言う)と、そのまま戦車で突貫した。


「城門まで一直線、駆け抜けろ!」


 蒸気機関の中に石炭と油をありったけぶちこむ。復水器なんてものは造ってないから水も追加で入れなければならない。


「魔力反応、罠を発動させたか」


 運転を禁じられて暇を持て余していたナーシェルが素早く魔力の気配を察知する。


「何で市街地のど真ん中に罠があんだよ……。まぁ、どうでもいいか」


 最後に付け足された「どうでもいい」という言葉に、何となく不穏な空気を感じたティアが質問する。


「……参考までに、どうするのかなーって思ったんだけど……」


 ティアにしては愚問だな。まぁ、長い付き合いだから言わなくても分かってくれって言うのはただの傲慢。付け上がった奴の怠慢。ちゃんと説明するとしよう。


「そこに地雷があると言うなら、すべて起爆させて除去するまで!」


 バギー擬きの更に酷いバージョンと言えばわかってもらえるだろうか。もう本格的に板にタイヤとモーターを取り付けただけの代物。


「行け、デカ四駆!」


 車というには余りにも烏滸がましい。遠隔操作も出来ないのでラジコンとも呼べねぇ。っつー訳で、でっかいミニ四駆でデカ四駆。我ながら渾身のネーミング。中々のセンスと言えるだろう。よくない?


 そのデカ四駆を使い捨てで大量に走らせ、罠を踏み抜かせる。罠が察知してから発動する前にデカ四駆は駆け抜ける。なので一台辺り三、四個程罠を潰してくれる。


 あぁ。去らば、貴重な素材たち。後で亡骸は拾ってやるからな。というか普通にタイヤとかモーターとか勿体ないから後で回収しないとな。


 尊い犠牲に南無。


「ってな訳で城門だ!砲兵隊、撃てーッ!」

「魔導師団、負けるな。放てッ!」


 新設の砲兵隊と、前々から存在する魔導師団。二つの部門が戦果を競ってまぁ、バカスカと撃ちまくる。整備されていた道路は跡形もなく、ガタガタな道を戦車団は駆け抜ける。


 城門を強引に撃ち破り、戦車で突貫すると、そこには相応の数の軍が待ち構えていた。全く、魔獣狩りに結構人員割いてる筈なのにどれだけいるんだか。


「いい的だ!」


 DaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLa───ッ!


 先手必勝。ハッチから顔出して、戦車の上部に設置した機関銃を容赦なくぶっ放す。血臭がやけに鼻に付くわ。手が震えて銃口がぶれるわ。たまに変なところに銃弾が飛ぶわ。……情けねぇ。


「それでも、随分と思いきったわね」

「他人に汚れ仕事やらせて、自分は関係ありませんって顔すんのが嫌いなだけだ。シャルル、お前も……いや、お前の場合は油断しても問題ないか」


 油断しようが何しようが、自殺でもしない限りはシャルルがここで死ぬことは無いだろ。銀の毒も太陽光も効かない最強真祖様だからな。チート過ぎて笑えるわ。


 ていうか、悪魔とか吸血鬼が銀に弱いって何なんだろうな。銀イオンが流れ込むと死ぬのか?どのみちシャルルには効果ないし、今考えることじゃねぇな。


「ここからは剣槍の間合いだ。突撃!戦車はそのまま引き潰せ!」

「魔導師団、防御用意。敵の狙撃を防げッ!」


 戦車が人をはね除け潰して押し通る。大砲は用意に鎧を打ち砕く。


 ただまぁ、敵さんの数が多すぎるだろ。これ何人いるの?……って、危ねぇ。機関銃のバレル、そろそろ交換しないとな。って言うわけで、


「意地で戦車にしがみついてる皆さんにプレゼントだ」


 肉の焦げる臭いだ。生々しい音だ。


 ……あぁクソ。何だこれ。気持ち悪い。目ぇ逸らしたい。全部全部、見なかったことにしてぇ。何だよこれ。やっぱり軍人って凄いわ。


「……悪いな。吹っ飛べ!」


 兜の隙間や額に拳銃の標準を合わし、撃つ。殺した人間の罪科の有無なんて知らないし、人間性も分からねぇ。それでも殺したって感覚だけが残る。


「伏せて」


 戦車から飛び出してきたシャルルに頭を無理矢理押さえられる。その上を仰々しい斧が通過していった。何の気配もなかった。ラノベの主人公みたいに殺気を感知何て出来なかった。


 っていうか……マジで死ぬところだったじゃねぇか!?……でも、自分が死にかけるのはかなり慣れたな。嫌な慣れだ。地球にいた頃は銃弾にむっちゃビビってたのにな。


「テメェが大将だな」


 斧を振るった主、一際豪奢な戦装束を身に纏った男が問う。


「そういうお前こそ、えらく立派な鎧だこって」

「あ゛ぁ?当然だろ。皇帝だからナァ!」


 おいおい。武闘派って聞いてたけどまさかこんなに白昼堂々と前線に出てくるかよ。……いや、俺も他人のことは言えないか。


「サァ。一騎討ちと洒落込もうや!」

「……だが断る!」

 

 即座に斧の間合いの外に下がり、アサルトライフルを味方に当たらない範囲で乱射する。シャルルもマイ拳銃で暇潰しがてら戦ってる。というか、遊んでる。マイ拳銃は乙女の嗜みらしい。……何だそりゃ。


 やっぱりアサルトライフルの弾だと弾いてくる鎧もあるか。でも銃弾は鉄じゃなくて鉛だから柔らかい。反射はせずにそのまま潰れる筈だ。それに多少なりとも打撃ダメージは入るだろ。


「チッ。何だコリャ。目には見えネェが金属の塊が飛んできてやがる」

「流石に、皇帝の鎧は頑強だな」


 一応、腕やら頬やら掠めた銃弾によって血は出てるが……致命傷にはどう足掻いてもならないな。


「っつー訳で、爆破だ。フレイムボム!」


 何かそういう名前の魔術があった。それのフリをしてるけど実際はただの破砕手榴弾だ。これなら鎧に隠れてない部分も纏めて攻撃できる。


『ヒグ様、国庫らしきものをティアが発見しました!』

『よし、壊せ!目標は大打撃を与えることだ。勝利じゃない。国庫と城にダイナマイトぶちこんで放火したら撤退だ』


 完全勝利や皇帝殺害なんて成功してしまったら余計に戦況は悪化する。適度な大打撃でないと、余計なヘイトを買うだけだ。だから皇帝さんには地下防空壕にでも引き込もって貰いたかったんだがな。


『火炎瓶と火薬、定位置に設置完了。……あー、これは。一級の魔術師にロックオンされたようだのぅ』

『扇角、直ぐに下がれ。お前の脚力なら逃げ切れる筈だ』

『それは可能だがのぅ。放置しておいたら加勢されてちと不味いのではないかの?』

『ククク。問題ない。妾が出よう』


 ナーシェルが外套で全身を覆って駆け出した。流石に、速いな。というか、ヒールでよくあんなにジャンプできるな。折れねぇのか?


 そういえば、俺がヒールの文化教えたら何かいつの間にかナーシェルが量産して流行らせてたんだよな。


 元々ヒールはフランスとかで都市に落ちてるゴミが酷かったからそれを踏まないようにって目的で作られたんだが、今やただのファッションアイテムだ。


 さてさて、それはいいから煙幕展開っと。幾ら城内に火を焚いて照らしても、暗がりで煙幕を張ったら当然、見えなくなる。


「だが、無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」

「──ッ!?……変な石仮面で人間止めてねぇよな?」


 DI◯様だったらスタ◯ドいないし勝ち目ないぞ。……じゃなかった。破砕手榴弾三個モロに喰らった癖に元気だな、アイツ!


「ッて!?危なっ」


 おいおい。鎧まで傷付いて体は血塗れなのに何で戦えるんだか。まぁいい。取り敢えず、腕を吹っ飛ばす!


 ドパンッ──


 鎧越しでも威力特化カスタム拳銃のアルとブレッドなら貫ける。片腕は潰した。これであとは足でも潰せば……


「あ゛ぁ。調子にのるな!」

「……って、どんな筋肉してんだよお前!」


 斧頭の大きさ、柄の長さ。どう考えても両手用の立派な斧だろ。それを片手で振るうとか。でも確実にスピードは落ちてる。


「おいおい、皇帝……確かハレスペルだったか?お前、そのままだと死ぬぞ」

「だからどうしたってんだ。あ゛ぁ?皇帝なら戦死は本望に決まってンだろ」

「随分と無責任なことで」

「ンナもん知るかよ。後はセガレか強ェ奴が皇帝になるだけだろ」


「……自信がないのか、お前」


 凍り付く。駆け寄っていたアイリスが、皇帝の周囲にいた近衛騎士団が、そして何より皇帝自信が凍り付いた。


「……そう言えばヒグ様ってナチュラルに不躾でしたね」


 最早、桜田創の偽名のことすら忘れてアイリスが呟いた。


「ん?何だこの空気。だってそうだろ。自分に自信がある奴なら無責任に皇帝何て重要な責務を放り出さねぇよな」

「……あ゛ぁ゛?テメェ──ッ」

「少なくとも俺には無理だな。出来ることをしないで、成せることを成さないでこの世を去るなんてな」


 堂々と、武器を突き付けられて絶体絶命の状態でありながら、皇帝を見据えて断言した。トッピングに不適な笑み付きだ。


 しかし、バカにして煽ったら生きようとしてくれるか?というか生きててくれなきゃ困るんだが……。下手したら帝国と全面戦争だからな。皇帝殺したとか文句つけられたら終わりだ。そんな余力はない。


 あー、いや、煽りすぎたか?これじゃ今後の終戦会議の先行きが怪しいぞ……。国王に迷惑……個人的願望としてはかけてやりたいが、流石にそれは不味いだろ。


「───いい度胸してんじゃネェか。魔獣なんざけしかけてきた時は他力本願のクソ野郎かと思ってたが……正面から突撃してきてあまつさえ皇帝にその物言いだ」


 あー、キレてらっしゃる?怒らせすぎた?もう帝都ごと爆破しちまった方が早ぇか?


「嫌いじゃネェぜ、その肝っ玉はよォ」


 ???


 文脈が全く繋がらないんだが……。気に入られた、のか?


「ヒ……じゃなくて創様、そろそろ撤退を」

「あー、また来るわ。てな訳で、国庫だけ潰すからヨロシク」


 閃光が弾けた。轟音が帝都を震わす。朝焼けの空に大輪の炎が立ち上る。いやぁ、絶景かな絶景かな。


「チッ。テメェ……。戦士でもなけりゃ策略家って訳でもネェな。こんなバカやる策略家は五流も良いとこだ」


「科学者だよ、科学者。そこだけ覚えとけ」


「……ンナ馬鹿げた学者がいてたまるかよ」

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