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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
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戦乱前

自宅待機中の時間で書くのが捗った。

 さて、息込んでいた教国との交渉なんだが……


「なんか思ってたよりもあっさり終わって吃驚してる俺がいる」

「あの威張り散らした教国の連中がむしろ彼奴らから願いにきたのかと言う程に平身頭低。クククッ。愉快、誠に愉快!」


 天使の威光ってやっぱりすげェ。その一言に尽きる。というかナーシェルは矢鱈と教国の連中にくってかかるが……何があったんだろ。


「まぁ、ありがたいがな。お布施とか要求されると思ってたが……出費無しってのはウチの経済事情的に助かる」

「火の車」

「だからのぅ」

「ティア、扇角!そう言うことは言うなッ」


 だって口にしてしまえば絶望しかないのだから。マジでホントに戦争勝てなかったらこの領地どっかに併合されて終わるぞ。


 ここまでポケットマネー出して、設備投資して近代兵器ずらりと揃えた身としては併合されてお取り潰しの未来だけは避けたい。


「エドワード、一般兵の訓練の方は進んでるか?」

「あぁ。真っ直ぐ撃てるようになればあとは数でゴリ押すスタイルだからな、そこまで高水準な狙撃能力を求めなければ大丈夫だ。充分活用できるだけの兵は整った」

「グレア、そっちは?」

「問題ない。一部成績上位者を引き抜いて狙撃の訓練をさせている」

「OK、OK」


 そもそも誰にでも使えるように、が銃のコンセプトだからな。現代の兵隊みたいな錬度は求めないが、覚悟出来てる連中が真面目に訓練に打ち込めば、それなりの兵隊はできる。


 初見の武器は敵にとって脅威。相手が冷静になったり連絡を密にとるまでに幾ら潰せるかだな。


 あとは名のある一騎当千系の英雄は見つけ次第即時撤退。即時連絡。包囲網で叩きのめす。それだけ叩き込めばなんとかなる。 


「なぁ、本当に人間の兵を主力にやるつもりか?よければ今からでも悪魔から選りすぐりの精鋭を……」

「アンデットの不死軍隊で踏み潰してもよいのじゃぞ?」

「それじゃ意味ねぇよ。人間の、この街の兵の手で倒さなきゃな」



※※※※※※※



「あー、あー、マイクテス、マイクテス。アメンボあかいえあいうえお。マイク、大丈夫です。ンンッ創様」


 アイリスからマイクを渡される。急ピッチで作ってスピーカー配置したから有線で見た目はカッコ悪いが仕方ない。


「ンンッ、ふぅーッ」


 演説台の上で少し不安そうにしながら注目を集める。町中に配置したスピーカーからこの声が漏れ出ているだろう。そして目の前の軍隊と民衆は段々と静まり、此方に注目している。


 不安そうに振る舞うことで注目を集め、話を聞いてもらう。アドルフ・ヒトラーの用いた方法だ。


「諸君、この街で暮らす諸君!亡くなった前任の者に代わり、国王陛下から新領主として任命されたソウ・サクラダだ!」


 ヒグ・ベルレイズの名前をそのまま使うのは些か問題があったので国王に頼んで偽名として前世の名前を使っている。大人モードだからヒグ・ベルレイズとは全くの無関係なソウ・サクラダという人物だ。


「先ずはこの領地に尽くし、亡くなられた前任の領主殿に追悼の意を示す」


 まぁ、儀礼的なもので前任のおっさんの顔も名前も知らないんだがな。けど、前任者の民衆からの評価は悪くないから、ここで称えて民からの心証を上げておくに限る。


「我々は常に二つの脅威と接してきた。一つ、接する魔の森の凶悪なる魔獣たち」


 これまた厄介なんだよな。無限かって位にアホほどわんさか沸きまくるからな。ゲームなら超絶ボーナスフィールドだ。実際はただの地獄だがな。


「二つ!かの強大なる帝国だ!常に侵略の危機に怯え、今まで何とか辛くも撃退してきた、が、国境線を破られ、村を取られ、多くの祖国の英霊たちが犠牲と成ってきた」


 涙ぐむもの、嗚咽が少なからず聞こえる。


「だが、今日を以て帝国に怯える日々は終わる!我々は帝国首都に奇襲をかけ、失った国境線と村を奪い返す!」


「もう一度いう。怯えるだけの日々は終わる!今日を以て終わるのだ!怯えなくていい!戦争は終わる。いや、我々が終わらせる!怯えるだけの日々は今日を以て終わる!」


 しつこいほどに一つのことを繰り返していうことにより、民衆に言葉を確実に植え付ける。記憶に印象づける。これぞヒトラー式の奥義!って社会科の先生が言ってた。Thank You。


 領主生活始めてから、社会の授業真面目に受けててよかったと無茶苦茶実感する。まさかこんなところで発揮されようとは……


「凱旋を楽しみに待っていろ!」

『Wooooooooooo!!!!』


 最初は殆ど、サクラ役の職員の声だったが、熱狂が熱狂を呼び、狂気は伝播する。ボルテージが最高まで高まったところで。


「出撃だ!」



※※※※※※



「どこであんな術を身に付けたのかのぅ?」

「気にするだけむだじゃない?知識云々なら今更って感じだし……」

「前世で何をやっていたんでしょう、あの方は」

「学者とか絶対嘘だと思うんだがのう。学者は普通あんな弁舌せんて、人間に疎い自らでも分かるぞ」

「妖精の学者はもっと陰鬱としているか、……変な方向に弾けてるかの二択だった……」

「エルフの学者も同じく……


 失礼な。普通に度胸と社会科の先生の訓示の賜物だぞ?あとエルフと妖精の学者は変な奴しかいないのか……。いや、ウチの研究室も他人のこと言えないけど。


 現在は兵を馬車に入れて乗り継ぎながら輸送中。道中、奪われた村を解放しながら、その村の馬を借りている。


 車なら給油とメンテナンスで済むんだがな。蒸気機関は専ら工業用ばっかりで輸送機器用がまだ全然作れてない。俺の分と合わせて三台だけ戦車を使ってる。運転はそれぞれ、俺、アイリス、地味に才能があったエドワードでやってる。


 ナーシェルがなぁ。才能はあるんだが……ハンドル持つと人格変わるタイプって本当にいるんだなってことを思い知らされた。


 端的に言うとヒャッハーって感じになる。何処の北斗だよ。


「国境線、見えてきたのぅ」

「止まれ!砲兵用意!」


 訓練された契約魔獣、特に竜とかには重い大砲を運んでもらっている。拡張魔術がありがたい。砲弾が軽く大量に輸送できる。


「目標、敵砦。騎馬隊突撃用意。よし、撃てッ。そして突撃!」


 大砲撃って電撃速攻。馬車からの銃撃と騎馬隊による突撃で蹂躙。砦はこれでなんとかなる。何より、


「戦車で踏み潰すだけで終わるからな。上に着けてるマシンガンの意味すらない」

「こっちから攻めたことなんてここ五年くらいないですから、しょせん防戦だけだと侮られているのでしょう」

「なら好都合!せいぜい利用してやれ!」


 敵の油断は協力な御味方様だ。使い潰すとしよう。


「だが、本来の国境線を越えればこうはいかんぞ。特に首都はな」

「分かってる分かってる。魔術兵の意識を刈り取れ。その間に魔術封じを施せ。本国に連絡はさせるな!」

「といっても、油断ここに極まれり。二人しかおらんな」

「嘗められたもんだな。……っていうかグレア、お前はなるべく出てくるな」


 なるべく人間の力でどうにかすると言ったものの、流石に初陣が敗戦は嫌なので、というか敗戦したら滅亡の危機だからメンバー全員総出で来てる。


「他の国境砦は……他領の領分だな。連絡もさせていないし、流石にこっちに攻めてくることはねぇだろ。ここで野営をする!テント張れ」


 ちょっと早いがな。まだ日は上がってる。


 テッテレー。巨大圧力鍋×五!これによって兵站を圧迫する水を使わずに大量の煮物が即座に作れる。……新型爆弾の実験かと疑われた苦々しき過去があるが、何とか完成に漕ぎ着けた。


「そしてキャンプ飯と言えば!」


 イギリス式カレー!米はないのでナンを。固い干し肉も煮込んだら多少は食えるようになるだろ。あとは解放先の村で貰った野菜をたっぷり入れて……。


「ちょっと煮込んでからルーの素を入れて一気に圧力で煮込むだけだ。野菜の水分が出るからあんまり水入れなくていいぞ」

「あぁ、ヒグ様大好きの」

「イギリス式って……間違ってはないけれど、日本で改造されまくった結果、アレはほぼ日本料理といって差し支えないわよ?」

「そういやシャルル、お前イギリス在住だったな」


 今やラーメンも外国人からは日本料理として認識されることが多い。一応中華の分類なんだが。


 まぁ日本人は入ってきた物を何でも日本風に取っ替え引っ替え大改造するのが大好きなんだよ。バレンタインデーとかお菓子メーカーの企業努力で見事乗っ取られたし。


 伝統的なので言ったらアレだ。平仮名カタカナも元々は漢字を改造したけど……原形留めてるかっていったら否だろ。


「いやぁ、しっかし、行軍ってこんな疲れるんだな。結構気ぃ張るし」


 ……人は死ぬし。幸い、敵の油断あって味方は負傷者だけで済んでる。が、それは敵の命を奪っているからだし、敵国本土に入る以上、今後はこうはいかない。


 さて、何パターンか攻める策は考えてあるが、敵にも出来れば犠牲を出したくない。綺麗事だがな。いや、まぁ敵さん死んでない方が後々有利なわけで、って、誰に言い訳してるんだ俺。


「ククク、悲壮な覚悟決めておるとこ失礼するぞ?」

「ん?ナーシェルか。どうした?」


 さっと魔術で椅子を作り出し、机の上に広げた地図を見る。垂れた髪を耳にかける動作がやけに艶かしい。


「いや何、活力の出るクスリでも料理に入れてやろうと思うたら、変なクスリを入れるなと扇角に追い出されてな。流石は清廉を好むユニコーン。あの手のものには敏感だな」


 いや、本当に何やってんのこの人。ナーシェルお手製の活力の湧くクスリ。……やべぇ、どう考えても怪しすぎるし嫌な予感しかしない。


「大方、お優しすぎる総大将様は敵の死について考えていたのだろう?」

「軍人ならまぁ、俺も覚悟してるし、そこまで気にしないんだが……」

「一般人か?」

「あぁ」


 地球には戦争に関する国際法がある。宣戦布告するとか、あくまで軍人同士の戦闘であって一般人を巻き込まないとかな。だから東京空襲とか、本来はアウトだ。


「ん?可笑しなことを言う。主殿の世界は愉快じゃな。戦争にルールなぞない。勝てばそれこそが正義じゃ」

「いや、地球でも割りと守られてないんだが……」


 実際のところあんまり守られてないし、核兵器なんか使ったら一般人を巻き込まないなんてほぼ無理だしな。


「それに、帝国人なら戦乱で死ぬが本望。それは家で料理する主婦も散歩する老人も、空き地で遊ぶ幼子も変わらぬ」


 そういや、そんな信条聞いたことあるな。帝国人たるもの戦争によって殉死せよ、って。


「いつ如何なる時も流れ弾で死ぬ覚悟も、徹底抗戦する気概も備えておる」

「なにそのバーサーカー国家、怖すぎない?」

「ククク、だがら気にするなということじゃ。皇帝になる第一条件が民の死を何とも思わぬ鋼の心と本気で公言されているのじゃぞ?」


 いや、怖い怖い。狂気の国家にも程がある。無いわー。今から侵攻する国ってそんな頭おかしいのかよ。今更ながらとんでもないところに戦争仕掛けられたもんだ。


「ま。反撃だから正当防衛だしな!」

「その意気よ。知らぬ誰かの命より領地の子供の未来、でしょ?」

「おっと、シャルル殿、それは?」

「勝手に思考覗いただろ、シャルル」


 妖艶に笑って誤魔化そうとするシャルル。これでどんな悪行も赦したくなるのだから全く、不思議だ。


「成る程、貴様の言葉じゃったか。うむ。中々悪くない」

「茶化すなよ……」


 恥ずかしい。やっぱりシャルル許さない。こいつ一旦ぶん殴る。こいつ相手だとポカッ、って感じでロクなダメージにならないけど。


「ヒ……じゃなかった創様!出来ましたよ」

「さぁて、行くわよ?」

「いつか絶対吸血鬼特効の毒作ってやる……」



※※※※※※



 と言うわけで本日のメニューはカレーとナンと瓶詰めの付け合わせ。高級品じゃない普通の拡張魔術の袋は保存機能までついていないので普通に保存食を使わなければならない。


 瓶詰め、元々作っといてよかった。ナポレオンが遠征の際の保存食で作らせたってことで有名だよな。


 進化版の缶詰め作りたかったんだが、素材のステンレス作るために鉄はあるんだが、クロムが圧倒的に足りない。


 ステンレスは錆びないから、自転車とかに使われてる。クロムの鉱床さえ見つければ街はステンレスで溢れる社会になるな。


 親父のとこにクロムもあったからどっかに取れる場所がある筈なんだが。今度聞き出さないとな。そこまで鉄道敷きたい。


 アルミニウムのオーストリアとか、レアメタルのアフリカとか、南米も結構とれるし、そういう分かりやすいところあればいいんだが……。


 しっかし、考えてみれば何か金属取れるところって南半球に固まってる気がする。案外ロシアとか、開発されてないだけで大量に資源が残ってそうではあるが……


 地球のことは考えても先がないな。今はこっちの世界だ。いや、シャルルに着いていけば地球に戻ることは可能だが……こっちの人生を途中で放り出したくないしな。


 隠居したら地球行きも考えるか。


「というかカレー旨ぇ。超旨い。流石圧力鍋……あいたっ!?」

「そこは作った人を誉めてくださいよ」

「いや、とは言え文明の利器が産み出す利益はね……すいません」


 頭叩かれた上にむっちゃガン飛ばされたんですけど……。華のような美人がガン飛ばすとアホほど怖いよな。だから冷酷な顔で刀の鯉口鳴らさないでくれ。普通に生命の危機を感じるから。


「ちょっと凄まれて謝るくらいなら言い訳せずに最初から素直に謝罪しておけばいいんですよ」

「お前は俺のお袋か!」

「教育役は旦那様より仰せつかってますので」


 時々怪しくなるけど、今の直接の雇用主って俺だよな!何で立場が逆転するのだか……普通に戦ったら負けるからか。こいつらが俺に付き従う理由って義理とか利益とか、他者による抑圧だもんな。


 信用できなさ一位がダントツで自由享楽主義のシャルル。二位がエドワードの圧力で従えてるだけのナーシェル。いつ思い付きで殺されてもおかしくないって考えると怖ぇな。


「失礼、軍大将を勤めているレグロス・マックドルですが……何と言うか、想像していたのと……

「あ゛?想像していたのと何だ?言ってみろ?」


 タイミングと言葉選びが悪かったな!八つ当たりの対象になってもらう。冷静に考えて最低なパワハラ上司だな。某鬼狩りマンガのラスボスさん程じゃないけど。


「……いえ、想像と違うというか、愉快?」

「お前、今までよく首にならなかったな」

「首になれば私以外に仕事をこなせるものがいなかったもので」

「失礼な言い方自覚してんだったら直せよッ」


 で、この俺が怒ったタイミングでシャルルとナーシェルが腹抱えて嗤うと。いつもの流れだな。最早未来予知レベルで手に取るように分かる。


「……あー、今回ばかりは不問に処す。次はないと思え」

「はっ。それで、話があるのですが」

「ん?明日の話か」

「はい。別動隊から準備完了ということで、一報念話が入りました。……例の作戦、タイミングを合わせる必要があるかと」

「あぁ、アレな。了解。ティア、地図」


 ふよふよと丸めた地図が飛んできて手に収まる。それをさっと広げて文鎮を置く。


「丁度いい。飯の途中悪りぃが他の戦略畑も呼べ。会議だ。ナーシェルとエドワードだけ残って他は外見といてくれ」


 こいつら、軍指揮の経験もあるらしい。まぁ、そもそもナーシェルは不死軍隊率いて戦うのが主戦法だしな。しかしまぁ、ナーシェルとエドワードには最近よく助けられてる気がする。



※※※※※※



「ここの高台なら帝都が一望できる。意地でもこの高台をとるべきかと具申致します」

「ここで兵力割くのはキツくないか?」

「いや、ここから後で帝都に援軍を送られる方が厄介だな」


 あー。確かにエドワードの言うことも一理ある。でも難攻不落で名高いところをどうやって落とすかねぇ。


「妾がちょっといって潰してこようか?魔術で、こうドカンと」


 それじゃ意味無いってのにコイツは!会議の場でなんて発言してんだ。やっぱりコイツ、軍略会議に呼ばない方が良かったか?


「おぉ、そう言えばこの方、魔術師団長に新任された方では」

「反発した前任者を実戦でボコボコにされたとか!」

「何でもその前任者も今では現師団長の猛烈なシンパだとか。それが貴女のような美しい女性とは……」

「成る程、前任の師団長もかなりの実力者でしたが、そんな懐刀を用意しているとは……流石領主様」


 そりゃ強いやつがいるならそいつを使おうとするわな。というかナーシェル、なにやってるんだ。あとお前の美貌は目立つから人前ではなるべく隠せと言ったのに……。いや、隠してもこれか。仮面でもつけさせるか?


 俺の目指す形態ではないが、確かにコイツを行かせるのが安全策……でもなぁ。


「何を悩んでおるのじゃ。強いものを適所で使う。これも必要な戦術の一つじゃぞ?……あまりグズグズしておると判断力がないと思われるぞ」


 小声で耳打ちしてくる。……一人で砦を潰させれば死霊魔術が目につきにくい。ナーシェルを活用するならここしかない。メリットしかないし……。


「不安というなら私も行こう。私も魔術にはそれなりの自信があってな。私と彼女の二人なら如何なる砦も国も落としてみせよう。何なら竜殺しでも始めるか?」


 エドワード、コイツはなに火に油を注いでるんだ!……いや、まて違う。ナーシェルひとりの功績だとそれが目立つ。が、二人に分散することでナーシェルの実力を隠そうとしてるのか。


「なら安心だ。任せた」

「ククク。何、皆殺しにしてやるとも」


 皆殺しにっておいおい。死霊魔術は確かに晒さない方が良いからそうなってしまうのか?エドワード主体で戦ってもらうとしよう。というか絶対そうしよう。


「では我々は帝都攻めに集中できますね。例の作戦発動後、砦の方から合図を頂き、一気に攻め入るとしましょう」

「帝国軍人の朝は早いです。今の内に兵を休ませ、夜明け前にというのが理想的かと」


「それが得策だな。作戦発動が上手く行けば敵は混乱する。その際に俺を筆頭とした戦車三台と移動砲兵隊で一気に駆け抜ける」

「えぇ。今日もそうでしたが、領主直々に自ら前線に立つなら兵の指揮も上がるというもの」


 そんなもんなのか?俺としては領主には街で閉じ籠ってもらう方が安心なんだが。銃や大砲の指揮をロクにとれるのが俺しかいないってだけで。


「では我々はここの小砦を落とし、待機すると致しましょう」

「合図は念話で……

「いや、念話だとバレる恐れがある。ちょっと別のものを使う。極めて隠蔽性が高い連絡道具の開発に漕ぎ着けてな」


 端的にいうと遠隔で鳴らすアラームみたいなものなんだがな。会話は出来ないが、モールス信号的な何かを送信するくらいなら充分こなせる。


 傍受できる機器なんてこの世界に二つとない筈だから隠蔽性どころか誰にもバレない。完璧!


「さてもう寝ろ。明日は早いどころか殆ど夜だからな」



※※※※※※



 亡者と悪魔の進軍である、通る所に生はなく、相対すればただ死のみ。いくら潰しても湧くアンデットが砦の壁に群がり、悪魔が魔術で全てを蹂躙した。


「何でこんな天災がッ」

「連絡だ!本国へ連絡を……あ?」


 全員息絶えた。


「本丸は潰したかえ?」

「あぁ。問題ない。一般兵はどうだ?」

「ククク。主殿に聞き及んだ軍隊アリとやらの戦術を再現してみれば屍兵と思いの外噛み合ってな。もうじき終わるとも。何でも密林の覇者だそうだ。もしかするとこの世界の秘境にもいるやもしれぬなぁ」


 仲間を踏みながらひたすら数だけを頼りに前へ前へ。数の暴力によってなされる作戦により、砦の表面が白骨と腐肉で埋るのは時間の問題だった。


「ん?魔界にはいるぞ。地球のものよりも更に大規模で厄介極まる災害だ」

「クハッ。ククク。悪魔を以てしても最早災害とな。それはみてみたい」

「やめておけ。興味本意で手出ししていい相手ではない」


 難攻不落の砦は圧倒的実力と数量によってものの数分で落ちた。

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