事後処理と次の布石
「かくがくしかじかエトセトラエトセトラっていう訳でこういうことがあったからさ。気を付けろよ。国王。んじゃ忙しいからこの辺で」
「報告雑ッ。敬語!それから王城にどうやって平然と忍び込んだ……。警備係責任者を呼べ!」
「ハッ。直ちに」
「いや、転移で無理矢理だから警備係の人は悪くねぇぞ?」
「……追加で宮廷魔術師結界係も呼べ」
「御意に」
執事とかメイドの皆さん大変そうだな。というか王城、さっと見た感じ割りと激務でウチと同レベルの仕事量。相当ヤバイんじゃないかこの国……。
「第一だな、いきなり来て第一声が……」
『お、久しぶり。あー、あれだ。ベルレイズんとこの倅のヒグだよ。ちょっと事情あって大人モードって感じだ。体弄くった。というか弄られた』
あー。そんなことがあったような無かったような。まぁ、別にいいだろ。国王だし。多少の恨みがあるから嫌がらせしてもってノリでドッキリ敢行したんだし。
「ククク。完全なる確信犯じゃな。おぉ。タチが悪い」
「ナ……シェル、うっせぇ」
おっと危ない。うっかりナーシェルの真名漏らしかけた。
「ンンッ。取り敢えず。順を追って説明せよ」
「了解。昨日なんだが……ちょっと例の商会の会議に顔だしてな
※※※※※※
会議終了(崩壊)後。全員起きた後、待っていました事後処理タイム。アイリスも合流したし、何か疲れたから正直なところ帰りたいのだが……
「あやつは何処だ!あの術師は!」
「深追いせぬ方がよいぞ?アレが本気なら我々なぞ一網打尽よ」
「ええい。部外者の言うことなど聞くか!早くあの給料泥棒を引っ捕らえろ‼」
案の定小太りさんはご立腹。鼻息は荒く顔色も果てしなく悪い。普通にキモいおっさんだな。こいつ。
「で、先の会議でおっしゃっていた発言についてどう弁明されるおつもりですかな」
「ぐぬっ!?あれは……そう。あの術師が全て悪い!だからあの術師を出せ!早く!今すぐだ!」
これが案外否定できない。裏で暗躍していたのはあの吸血鬼だし、このバカも操られてただけ。
だが事情を知らない者にはそうは映らない。御丁寧にあの吸血鬼は自分がご高説している時の映像が流れないように魔道具を破壊していたらしい。
いくら魔術ハッキング戦に勝利できても、そもそもの魔道具本体を物理的に破壊されていてはどうしようもない。
パソコンにウィルス送り込んでもそのパソコンをハンマーで叩き壊されたら遠隔操作もクソもないのと同じだ。
いや、案外最近のならそれでもネットにアクセスとかしてアカウント乗っとりとかされるのか?幸い俺は被害にあったことはないが……
「いいから……術師を!……嗚呼!嗚呼!早く!」
ん?そういやさっきから聞くに耐えなかったから聞き流してたが……流石に様子が怪しいぞ?待てよ。麻薬か?吸血鬼が薬物つかってこいつを操ってたとしたら禁断症状とか出てもおかしくない。
いや、禁断症状とか幻覚幻聴くらいならまだいい。吸血鬼のクスリだぞ?それ以上の何かがあってもおかしくない。
「Aaaaa aaaaaッ!」
「取り抑えろ!」
「全く、世話が焼ける。……ほれ。エドワード殿の見よう見まねじゃが、多少は様にはなっているだろう?」
闇の鎖や手錠、足枷、十字架が出現し、小太り野郎を縫い止める。何か同じポーズなのにキリストとは似ても似つかない。これが貫禄の差か。というか冷静に考えて結構残虐性高いな……。いや引くわ。
でも確かに、どことなく操っている闇?影?の魔術がエドワードのやつと似てるな。
「まだ暴れてるぞ……。なぁアイリス。あれ、凶暴化して暴走したり吸血鬼化したりしないよな?」
「あながち否定が出来ないのが悲しいところです。念のため意識を奪っておきましょうか?」
「ワァオ。バイオレンス」
否定してほしかったんだけどな。というかアイリス。前々からの性質もあるが……腕折られたこともあるし……何か逞しくというか、死んでからちょっと戦闘方向に特化しだした?主に物理の方向に。
また順位格付けで俺の最下位度合いが酷くなるから止めて欲しいのですけど。
「流石にあやつの性格からして吸血鬼化は無いと考える故、安心せよ」
「そりゃまた何でだ?」
「ククク、カカカッ。分からぬか?簡単な話じゃぞ?」
勿体ぶってうぜぇ。頬の筋肉が異常なほどピクピク痙攣してる。こういうとこムカつくな。
「……アレを自分の同類と思いたいか?」
「あー。成る程」
確かに、アレを同族にしたいと思うのはよっぽど酔狂な好事家だけだな。まだ映画や小説の中のイメージに縛られていた訳だ。
「術師……術師……そこにおるのだろう!聞こえておるぞ!嗤っているな!この、私をッ!嗤っているのだろう。聞こえているぞ!」
「幻覚幻聴が出るタイプのクスリだったか」
「アレはもう駄目か……
「一応、長い時間かけて根本治療すれば何とかってとこだが、……こればっかりは本人次第だな」
本人がクスリを止める辛さにどこまで耐えられるか。だが評判を聞いた限り我慢が出来るような奴ではない。厳しいだろうな。
アイリスが嫌悪感を全く隠しもせずに近付き、抜刀。十字架と首の隙間に無理矢理刀を捩じ込み、峰で一撃。鮮やかな手前だが……あのゼロ距離で勢いなんてほぼ付かないだろうに、どうやってるんだアレ。
納刀。歩み寄ってくる。どれだけ嫌だったのやら、手と刀を見て苦々しい顔をしている。一応、前に作ったアルコール消毒液があるから、後で渡しておこう。
「取り敢えず、ご苦労さん。さて、この商会これからどうするかね」
「トップがあの様ですからね……」
「面倒な祟りにでも取り付かれたと思うしかねぇか」
合掌。
「ハハッ。それで済めば宜しかったのですが……
「ククク。お待ちかねの厄介事じゃぞ?」
「あー、あー。何も聞こえないー!」
俺は何も聞いていない。俺は何も聞いていない。俺は何も聞いていない。俺は何も聞いていない。俺は何も聞いていない……。
「ここの社員の大半が身寄りなしの訳アリ物件。給料がどうしても必要で社長に付き従っていた奴が多くてな」
「そちらで雇っていただけると言う証言もありますし……
嘘だろヲイヲイ……
※※※※※※
「と言うわけで丸投げに来た♪」
ウチで養う?んな訳あるか!そんな金どっから沸いてくるんだよ。そもそも王都で起きた事件はそのまま国の管轄なんだ。つまり国王にお任せ。
あ、でも有能な奴とか幹部とかの訳アリ物件じゃないメンバーは確りかっちりこっちが引き抜くけどな!
「貴様……疫病神か!」
「むしろ、国の腐敗の根本治療してやった救世主でしょうが。感謝される謂れはあっても逆ギレされる謂れはねぇ!」
「かといってどうしろと……
「知るか!そこらの法整備はお前の仕事だろ。さっき言った通り俺は忙しいんだ……。てめぇのくれた領地のお陰様でな!」
「いや、あの領地に関しては本気では……
何か言ってるがもう聞かん。……そうだ。こいつが俺に渡した領地の借金返済が切っ掛けなんだから元凶はこいつじゃねぇか。そのツケはちゃんと本人が払う。素晴らしい。全く問題ないな。
凄まじい論理矛盾とか破綻がある気もしなくはないが無視。とっととこの書類……必死に纏めたヤツ丸投げして帰るぞ。
「あ、そうそう。ちょっと帝国と戦争してなんやかんやあるかも知れないけどそこの所も宜しく。勝手に条約結んどくから」
「は!?いや、それは流石に本国の指示を仰ぐのが普通だろう」
「ん。だから今言った。んじゃ、そう言うことで宜しく」
※※※※※※
そして領地
「フッ。完璧!」
「国王が憐れだのぅ」
「というかテンションがおかしいぞ……。あぁ。鉄の生産完了。例のアレも造れる」
素晴らしい。いや、別に素晴らしくは無いか。出番が無いならそれが一番なんだが、ちょっとこのままだと絶対国防圏(勝手に推定)が危ない。これ以上侵略を許すわけにはいかない。
無情だが、まだ見ぬ何処かの誰かの命よりも自分の領地の子供の笑顔だ。優先順位は履き違えない。
「例のアレとは……嫌な予感しかしないのですが何ですか?」
アイリスがさっきの小太り男の時よりも更に苦々しげな顔をして聞いてくる。ヒグへの信頼と言うものが微塵も欠片もない証左だ。
だが、知ったことではない。
「安土桃山の幕開けだ!行くぞ信長!魔力に乏しい一般兵士を化けさせる錬金術の産み出した狂気。火薬の量産。……火縄銃を造る。三段撃ちだ!」
※※※※※※
銃火器工場
「あらあら、日帰り世界一周ツアーから帰ってきてみれば、いつの間にこんな大規模施設造ったの?あ、途中で悪魔と妖精回収しといたわよ?」
「ですよね。私たちが出発前はこんなの無かった気が……」
シャルルが地味に日帰り世界一周とか意味わからないこと言ったが、気にするだけ負けか。シャルルとアイリスが言う通り、まぁ行く前はな。
いや、様変わりしてるだけであったはあったんだがな。もうガラクタしか残ってなかった武器庫を断捨離。剣とか槍を金属に戻してスペース開けて机と材料、職員を配置やれば、それっぽくは見える。
ちょっと思わず大量に入った薬屋連中を結構使ってるがな。現状感染爆発起きてるわけでもないからあんなに要らない。勿論戦争の備えに医療器具揃えさせてるが、半分以上は火薬係りに回してる。
「と言うわけで火薬玉と弾丸を造るマニュアル作業はご近所のちょっとへそくりが欲しい奥様方を召集した」
さっき安土桃山って言ったけど思いっきりすっ飛ばして江戸時代末期の工場性手工業(一部機械アリ)だ。
勿論、産業革命時の労働環境の劣悪さからの反省を得て最低賃金は絶対尊守だ。
銃は造るのに旋盤とか使うし力もいるから男連中、退役軍人とか負傷した軍人とかにやらせてるがな。
因みに火縄銃も信長が使ってたのよりも数世代後の品だ。ライフリングつけてるし。じゃないとロクな飛距離とか威力が出ない。でも最新式ではないがな。
「結構な数ですけど……どう考えても首都中から集めてますよね、これ」
「そこら辺は気にするな。おっと、文官A君の涙ぐましい努力の演説が始まるぞ」
「何ですかそれ……」
「皆さんの努力がこの領地を。ひいてはこの国を帝国の脅威から救うでしょう!我々も戦争終結、条約締結へ向け、より一層邁進します故、どうかご協力お願いします!」
ってな感じのことを毎日違う文章態々書いて言わせてる。
「ククク。我が主殿は帝国を潰す気かえ?」
「あんなこと言っているが、戦力差は厳しいぞ」
あー、勘違いしてる奴等がいた。こういう輩が出ないように一応ビラ配りしといて良かったな。
「ナーシェル、グレア、常識的に考えて戦力マシマシ化け物揃いの帝国に正面から挑んで勝てるわけないだろ」
「じゃあどうするの、って言ってもね。日本人だからねぇ。どうせお得意のアレでしょ?」
「ああ。太平洋戦争……今は大東亜戦争の方が言い方としては段々メジャーになってきてるらしいが、あのとき失敗したやり方だな」
「いや、それ大丈夫なのかのぅ?」
扇角の疑問もごもっとも。でも問題ない。実際、日露戦争の時は成功してるし、太平洋戦争の時も寄り道さえしてなければあのやり方でも行けたと俺は思っている。
「即ち、敵に一発大打撃与えて第三の中立国に仲介して貰う作戦だ!」
何ともまぁご都合的な事に敵に回すと厄介だけど永世中立国を標榜してくれてるお国が帝国とこの領地のどちらにも面してるじゃねぇか。宗教国家様様だな。
「教国を利用するか。主殿、貴様と言うヤツは中々愉快なことを言う。庶民はともかく、アレの中枢の正体は金の亡者の寄せ集め。知っておろう?」
「あぁ。勿論、対策を考えてある」
工場見学を程々に切り上げ、元の子供の体になり、執務室へ戻る。……戻りたくなかった。一日ぶりの懐かしの職場。嗚呼。残業よ。ただいま。
だけどまぁ、今は関係ない。
「待たせたか?」
「ううん。今来たところ」
見ると、執務室の接待用の机にティアが茶を出していた。恋人みたいなやり取りをするが、ただの兄妹。
「エスタ、久しぶり。何週間ぶりか……いつ以来だ?最近時間感覚がなくてな」
「ええと、えっと……
「今はそうではなく要件かと」
エスタの専属のメイドの……誰だっけ?
(……マキナさんですよ)
そうそう。あとアイリスさん。呆れた顔しないで。いや、ちょっと出てこなかっただけで覚えてはいたんだけどなぁ。
「ん、いや、ちょっと天使貸してくれないかなと思ってな」
「レールエストね。ちょっと待って。今呼ぶから」
そんな名前だったんだな。これに関しては普通に初耳だ。
「はっ。アークエンジェル、レールエスト。推参致しました」
こんな面倒なこと毎回やってるのかコイツら。ウチの悪魔なんか呼んだらひょいッと影から出てくるぞ?
でも多分、エドワードとレールエストは会わせない方が良いだろうな。悪魔の方はあんまり気にしてないらしいけど、天使は悪魔を忌み嫌ってるみたいだし。
「主が兄君、要件は何でしょうか。悪魔討滅でしたら直ちに」
「いや、んな物騒なこと誰もいってねぇよ。……教国との顔繋ぎ頼みたくてな」
「申し訳ございません。私はかの地とはあまり縁がなく……
「あぁ、ぶっちゃけそれはあんまり関係ないからいいぞ?天使という象徴が欲しいだけだからな」
「はい?」
取り敢えずの経緯を、ちょっと大事な部分はエスタもいるので伏せつつ伝える。
「つまり、教国に帝国との戦争の仲裁をして欲しい。が、教国の腐敗も進んでおり、そんな教国に協力させる資金もない。故に天使の力を笠に着たいと?」
「ぶっちゃけるな、お前。だがまぁ、大筋は間違ってはいない」
「そのようなことでしたら、御断り致します」
うぇっ!?交渉に入る前からそれかよ。こりゃ脈なしか?二次策三次策も考えてあるが、そっちの方はできれば切りたくない札なんだよな。
「流石に条件とか聞いてからでも遅くはないんじゃないか?」
「我々の権威を笠に着る輩に用はありません。次に戯れ言を言えばその素っ首……ッ!?」
大剣構えて切り落とすとか言おうとしたんだろうが、残念ながらウチのメンバーの方が数も質も上だ。
シャルルがレールエストの頭を机に叩き付け、ティアが剣を大量に展開、アイリスも抜刀術の構え。グレアとナーシェルは魔術行使一歩手前だ。
「お前ら、一旦落ち着け。これじゃ交渉じゃなくて強迫だろ。それからレールエスト……それ言ったら教国も天使の力を笠に着てるんじゃないか?」
「……一理あります。が、その辺りは上層部の判断すること。私に口を挟む権利はありません」
上層部って。天使の中にも権力の上下構造があるんだな。生々しい。それもそうか。竜はそうでもないが、天使、悪魔、妖精は割と社会性のある生物だからな。
「その教国の腐敗の原因に心当たりがあると言ったら?」
「……何?貴殿は何を……」
「帝国と太陽国はまだらしいが、この国もそいつに食い潰されかけててな。ついこの間、というか昨日追い払ったばっかりだ」
教国は千年前はそれは清廉だったらしいが、少し戦乱に巻き込まれた九百年前から腐敗し続けている。それで体裁保ててるのは天使のお陰だとか。
確証はないが、腐敗の元凶は十中八九あの吸血鬼だろ。間違っていても責任は取らないが。
ナーシェルの見立てではアレは千年以上生きててもおかしくないらしいし。エドワードもそのくらい生きてるけど。
「その情報と引き換えで、上層部に打診、と言うことなら考えて差し上げます」
「交渉成立。賢明な判断ありがとう」
シャルルにレールエストを解放させ、握手する。
「エスタ。折角だし、町を案内してやるよ。半分はそっちで呼んだしな。久しぶりに遊びに行こう」
「うん!あ、でもそういうことはエミリアナちゃんにやってあげてね。今度お父様たちと来るって言ってたから」
「了解」
※※※※※※
「……何か兄さんが造ってた物が巨大化して大量にある」
「大量生産の時代だからな。どうしても工場は都市近郊に造らないと輸送コストがかかるからな。鉄道網作った後で道路整備もその内やるか」
「いや、そうじゃなくてね。ここじゃないところが見たいの」
つっても市場も寂れてるし、見所は軍の演習と魔獣戦してる防壁くらいしかないんだがな。つくづく観光業に向かないな。
「ここが軍の演習場な。魔獣部隊はどちらかというと戦闘指導よりもいかに早く城壁とか柵を建て直すかを訓練してるみたいだな」
「おぉ。兵隊さんが……あれ?そんなに多くない。大丈夫?うちの街みたいにならない?」
涙目で幼子に心配されるか。いや、確かに人手不足極まってるが。そういや、魔獣騒動以来エスタの魔術訓練が激しくなってるって聞いたな。
「大丈夫大丈夫。都市壁は堅牢だし、お前みたいな子供が気にすることじゃねぇよ。分かったら頼って笑って過ごしとけ」
「……うん」
イマイチ納得してなさそうな顔だな。それもそうか。あんな大虐殺見たらな。
「そもそも邪神の欠片なんて早々出てくるシロモノじゃないしな」
「あぁ、パンドラの箱の中身のこと、こっちだとそう呼んでるのね」
「そういやパンドラの箱って悪感情とかが入ってるんだったか?で、開けてしまったけど閉じて、最後に希望が残ったとか」
「そうそう。でも、アレが人間に影響を及ぼすことはないから忘れなさい」
通りで邪神の欠片の話が何処かで聞いたことある話だと思った。まぁ、でもシャルルの言う通り今は関係無いか。
「ま、安心しろ。ウチは寧ろアレだな。魔獣よりも帝国の方がヤバイ。けどまあ、相手と話が通じて、利得の話ができるなら何とかなる。多分」
「ご安心を、マスター。マスターの命はこの不肖私めが守護させて頂きます」
「レールエストもそう言ってるんだ。ガキは気楽に生きろ」
「ガキって、兄さんと同じ年齢でしょ」
「はいはい。そうだな。んじゃ訂正、妹は兄貴アテにして気楽に生きてろ。いざってときは助けてやるさ」
※※※※※※
「あー、あの後散々連れ回されたお陰で財布がまた……。炉の建設とかでかなり使ったからな」
「では、帝国から回収するとしよう。それから創、すまないが例のものは無理だった」
エドワードか。そう言えばレールエストがいる間は下がらせてたんだったな。一応、こいつなら自分が悪魔ってことを完璧に隠蔽できると思うが、享楽主義者のシャルルが何かやらかすかもしれないしな。
「ウラン?あぁ。まぁまた今度でいい。当分は火力で、国境線が安定したら水力発電も使うとするか。……というか、シャルルが回収したって言ってたけど、早い帰還だったな」
「ウランは見つかったのだが、神獣の黄龍に案の定目をつけられてな。そこをシャルル殿に助けて頂いたと言うわけだ。黄龍を殴って」
マジか。シャルル先生強すぎないか。……でも冷静に考えたらそれって監督責任で俺が殺される流れでは?
「大丈夫だ。穏便に済ませてきた」
「ならよし。最悪アンデットにしてもらってから首差し出して夜逃げって考えたんだが、普通に暮らせるならそっちの方がいいわな」
だからこその密書というか、最悪俺の首で済ませてくださいって手紙だったんだが、使う機会も無かったか。デュラハンになる必要なくて良かった。
「そんなことを考えていたの。最悪自分の首が飛ぶだけとか言ってたからてっきり死ぬ気かと」
「あのなぁ、ティア。んな訳あるかよ。交渉して、それで無理なら何とか出し抜いて生き延びるつもりだったぞ」
しかし、これで原子力発電の望みは途絶えたか。二酸化炭素排出量が少ないし、災害が多くない土地で戦争地から遠ざけて管理体制を厳重にしておけば安全に運用できると思うのだが。
日本は災害が多いからアウトだが、実際、原子力発電所で経済は潤うしな。フランスとかは八割原子力で賄っててドイツとかにも電気を輸出してた筈だ。
でもまぁ、黄龍とやらが何処かの国を擁護しない限りどこの国も核を持てないってのはいいな。
核抑止は有効な手段だが……。発動したときの何せ破壊力とその後の爪痕が大きすぎる。核拡散防止条約とか全然守られてないし。
魔石は供給量が安定しないから電気を普及させたい。環境も考えるなら水力発電所大量に造って軌道にのせるのが一番いいのか?でも結局森林は切り開くし……
「難しそうな顔してますね。ミルクティーです。どうぞ」
「Thank You。っと、明日の資料纏めますかね」
「そう言えば、教国の使者が来るとか。天使の方から圧力がかかったら動くのが早いこと。妖精の私も教会からは神聖視されてるから、なにか手伝えることがあれば言ってくれ。役に立てるとうれしい」
「頼りにしてる。……さっさと纏めて今日くらいは早めに寝るか」
さてさて、明日が勝負だ。
厄介なことは他人に押し付けるに限る。byヒグ
ついにコロナに罹ってしまった。
皆様もお気をつけを。