会議開始
「んじゃまぁ、王都行くか」
「全員ですか?」
「流石にんなわけないだろ。んなもん邪魔だ。諸々雑事担当のアイリス、お前と、あとは腹黒探り合いならその手の経験があるやつが欲しいな。ていうわけで、ナーシェル。他のメンバーは別の仕事を任せる」
「ご指名いただき恐悦至極。ククク。だが、いいのかえ?エドワード殿は現役魔界領主じゃぞ?」
慇懃無礼。所作は丁寧かつ流麗だが、そんなものではマスキングできないほど失礼極まる態度が、雰囲気が滲み出ている。絶対恐悦至極とか思ってないだろコイツ。
「エドワードは正直、かなり迷ったが、別行動だ」
「何をすればいい?」
「探してもらいたいものが、つっても候補は絞れてるがな。何と神獣様直々にヒントくれてるんだ。ちょっと距離は遠いが、飛び付かないわけがねぇだろ。なぁ?」
思わず期待に顔が弛緩するが、これから探してもらう鉱石のことを考えれば仕方ない。一歩間違えれば破滅の象徴となりうる激ヤバ素材。本来なら国家が管理するレベルのものだからな。まず一般人は触れる機会はない。
「つっても、直ぐに利用は出来ないがな。制御できなきゃただの殺戮兵器だ。だが、制御できれば、……現代科学でも厳しいが、ちょっと此方の世界限定方法、いや地球でも魔ほ…魔術か。魔術が使えるなら或いは可能性がってところだな」
「いや、心当たりがあるのだけれど、それで笑うって相当ヤバイ人間だわよ、貴方。私レベルだと死なないけど、大抵の生物は死ぬじゃない。貴方それでも本当にJapanese?」
ま、シャルルの言いたいことは分かる。迂闊に踏み込んでいい問題でもないってこともな。
「大丈夫。こればっかりは俺も細心の注意を心掛ける。機材、ここに詰めてるからな。ティアも一緒に行ってくれ」
「これは、ライトか?しかし妙なガラス。というか、私とエドワード殿は夜でも昼と同じく見えるぞ?正直、いるとは思えないが、あとは説明書と手紙?」
「ライトはいるんだよ。いいから持ってけ。使い方は書いてある」
「採掘なら片方で充分と思うが、成る程な。下手をすれば神獣に喧嘩を売りかねない。で、この手紙か。大胆なことをする」
真意見透かすのが早ぇよ。全く、頼りがいがあるが、中々、イロモノというか、特殊なメンバーが集まったものだ。え、俺が指揮しなきゃいけないってしんどくない?え?いや普通に面倒臭いんだけど。
諦めるしかないよな。こればっかりは。一応優秀だし。
「まぁ、出来る限りの配慮はする」
これで仕事完璧にこなすもんな。俺よりも更に。嫌になるわ。いや、楽しいけども。ま、上司として叱咤激励くらいはするか。
「なぁに、てめぇらがしくじっても俺の首が飛ぶだけだ。気にすんな」
ティア、扇角の顔面が蒼白になる。アイリスが俺の袖を引く。相変わらずシャルルはケタケタといかにも愉快そうに高みの見物。
「流石に私の知らないところで殺されたら助けられないわよ?」
「前回で分かってる。そりゃ当然、流石の万能シャルル様にも限界はあるよな」
助けられるなら前回の通り魔事件の時に助けられているはずだ。コイツが敵対する、なんてケースは考えたくもないが、出し抜く隙はあるし万能であっても全能ではないってことだろう。
「ま、目が届く範囲なら助けてくれるってだけありがたい」
手を合わせて拝むと、鼻を鳴らして顔をそらされる。流石に白々しすぎたか。でも感謝してるのは本当だがな。どうも面と向かって言うのは、なんかな。
今となっては子供は素直理論で押しきることも出来なくなったわけだし。三十代のオジサン的にはちょっと恥ずかしい。いや、全員俺より年上なんだけど。百とかそんな単位で。
一番年齢近いのが六十代の扇角かな?それでも三十くらい離れてる。元々の寿命が違うから、老化率で言えば俺がトップかもしれないが。
「ま、守ってあげるけど、流石に本物の神に喧嘩売るとかはやめてちょうだい。ギリシャ神やケルト神は滅びの災厄、巨神との大戦で死んだけど、JAPANのタケミカヅチとか、多神教の武神。あとベルフェゴールとかルシファー。あの辺りは相手したら普通に私死ぬわ」
神獣は底が見えた。大規模殺戮兵器とか精々一つの核ミサイルだ。地球を破壊できる程ではない。が、シャルルに関しては本当に底が見えない。そのシャルルが確実に相手したら死ぬというなら、それは相当な化け物だろう。
「流石にそんな神話生物には喧嘩売らないから安心しろ」
白々しいものを見る目で俺を見てくる。具体的にいうと仲間になりたそうな目とは真逆だな。……だが、あえて鋼の心臓で無視!
「次は扇角な。……政務全般。以上」
「のぁ!?」
こればっかりは特筆することがないんだよな。他のと比べて説明が雑すぎるが、それもご愛敬ということで。
「とりあえず、前に仕事を優先順位順に分けたからその通りにやってくれ。それから鉄の量産、軍備関係はなるべく急ぐように。ま、頑張れ。信頼してるぞ」
肩に手を、……届かないので代わりに扇角の両手を俺の両手で包み込む。殆どはみ出してるけども。
変化が解けたのか、尻尾が顕現し、大きく振られる。顔は満開のコスモス畑のように華やぐ。やだなにこの子、超可愛い。でも告白されたけど、感情的には恋愛というよりは愛玩が適切な表現なんだよな。
「ま、任せる。fight!」
一通り励ます。ほら、俺ってばいい上司だから。人は承認欲求を満たされないと努力出来ないものだ。一部例外はいるけども、な。
「グレア。鉄は頼むぞ」
「ふむ。では鉄道のレール、だったか?その工事をしているアンデットの命令権はグレア殿に委託しておくとしよう」
さて、あとはシャルル先生をどこに割り振るかだが、エドワードの護衛に廻ってもらうか扇角と政務させるか。シャルルは俺の部下ではなくあくまで対等な立場だからな。本人の自由意思が尊重される。
「私?私は観光してくるわ。別惑星に来たというのに、あまり見回ってないし、お土産くらいは買ってくるけど、何がいいかしら?」
「今後使えそうなモノと、あとやっぱり飯だ飯」
この世界独特の郷土料理は多い。主食はやはり、生産性と炭水化物優先という生物の本能にしたがって、地球と似たパンや芋、米となるが、おかずの類いは多種多様。
もしかしたら外国に似たような料理があるが知らないだけかもしれないが、新しい料理はやはり興味がそそられる。
イギリス、中東、アフリカ、あと中南米辺りは何回か行ってるから、料理についてはくわしいんだが、それ以外は日本で一般的に知られているものしか知らない。
「了、解♪……あ、あとは、その体だと侮られかねないから、ちょっと肉体改造するわね」
「おいおい。今不審な言葉が聞こえたんですけどォ!?え。何?ん?何何々!?いや、怖い怖い怖い」
魔の手がまるで蛇の鎌首のように延びる。肉体改造という明らかに不穏な言葉。そんなもの、まず安全なものではないだろう。
いや、科学者でもそこまでマッドサイエンティストじゃないからな、俺。普通に恐怖。
「大人しくしなさい」
耳元で囁かれる少ない言葉、端的な言葉だがそれでいて、蠱惑的な言葉。体が金縛りのように動かなくなる。
「……ッ!?何か魔術でも使いやがったな。てめぇ」
「創が大人しくしないからよ」
「ちょっとは謝罪しろ。何で俺が悪いみたいに言ってるんだよ!……っておい?いやいや待てぇ!何で俺の服脱がしてるんだよお前ッ。変態。訴えるぞ!」
訴えるにしても、どこに訴えるんだって話だがな。コイツを裁けるような司法機関がそもそも、この世に存在するのかどうかが怪しい。吸血鬼裁判?出来るのか?
「とりあえず散れ。恥ずかしいわ!シャルル以外はどっか行け!」
「私はいいのね。まぁ、許可がとれなくても居座るつもりだったけれどもね」
「やろうな。うん。知っとった。お前についてはもぅ諦めたわ」
※※※※※※
貞操は無事だが尊厳が奪われた気がする。だが流石というべきか、肉体改造が終われば体は見違える程変わっていた。
………というか大人になってるよな、これ。
前世と全く同じ肉体だ。そして前世と全く同じ服、シャルルが確保していたものを着ている。違いと言えば堂々と銃を携帯していることと、腕輪蔵の存在くらいだ。
「本当に、ヒグ様、……ですか?」
「そうだ。というか二十代の肉体だぞこれ」
「仕方ないじゃない。私の記憶を再現してるんだから。享年二十五だったのが悪いのよ」
アイリスなんかは信じられないものを見る目で俺を見ている。まぁそりゃそうなるわな。
「んー。取り合えず、私さえいれば自由に肉体を子供版と大人版で変えられるようにしておいてわよ?でも出来れば子供でいた方がいいわ」
なんでも、無理矢理体を魔力で増設している状態。このままでは筋肉にかかる負担も小さいため、筋肉が育たず、貧弱な肉体で成長することとなるらしい。つまり大人バージョンは今回みたいに人前に出るとき限定のフォームってことだ。
「了解。結果的には助かった。方法がアレだがな!」
そこは確りと釘を刺さないといけない。誉めるだけだと調子に乗る。誉めないと拗ねる。案外、シャルルは子供のような単純な性格をしていたりする。
いや、流石に子供に失礼か。どんだけひねくれた子供だよって話になるな。
「ククク。しかし、以外に色男よなぁ。ユニコーンと妖精が見惚れておるぞ?妾も流石に驚きだがな」
横を見れば顔を緋色に染める扇角とティア。そんなに格好いいか、これ?髪はボサボサ。髭は剃り残しがある。白衣は所々シワが目立つ。全くだらしない大人だ。
「なんというか新鮮じゃのう」
「そこまで卑下するようなものではないと思う。むしろ、その……格好いいと……」
頬染めんなよ。こっちまで恥ずかしくなるわ。というか顔が熱い。あーあ。絶対後でシャルルにネタにされるやつじゃねぇか。
「ま、ありがとよ」
自分で言ってて明らかに声が小さい。ニヤニヤしているシャルルには取り合えず実弾発砲。手には今までよりも軽い反動。疑似肉体で筋力が再現されているから、今までの子供用に調整された火薬量だと反動をある程度押さえ込めるのか。
直撃。だがしかし、無傷。
「チッ!」
「あら。何かしたかしら?」
死なないんだよな!というか傷ひとつないんだよな!火薬量増やしたら内出血くらいはするか?
「そういや、銃で思い出したが、肩当てだけは新調しねぇとな」
「肩当て?」
対物ライフルとか発砲した時に下手をすれば肩の骨が砕ける。それを防止するために肩当てを着けていたのだが、……。
「まぁ、対物ライフルが必要な事態なんて早々無いわな」
「対物ライフルというと、我の体を穿ったあの長棒か。
「長棒って。でも、分からないわよ?何事にも例外はあるというし」
「ヒグ様は危険事態に首を突っ込みたがる癖がありますからね」
「んな訳あるか。俺とて避けられるものは避けたいわ」
決して自ら危険に対して突撃している訳ではないと否定の声明を上げる。事実かどうかは疑わしいが、実際、エルフの馬鹿事件やヒュドラの件などは単純に運が悪かっただけ。
「って、そんなことどうでもいいわ。……さて、気を取り直して、行くか」
※※※※※※
「お待ちしておりました。ナーシェル様」
「その名は聞かれると不味い。シェル、ということで頼む」
「分かりました。ではそのように」
わざわざ出迎えてくれたヒノキ。その傍らには執事のようなまだ年若い紳士。何か知らんけど大物感の出る構図だ。大企業の上役なんだから当然だけども。
「しかし、立ち歩いて大丈夫なのか?」
「貴方は……?」
「あー、こないだのガキだ。ちょっと魔術で体を改編してるというか、アレだ。幻覚だとでも思ってくれ。見かけが立派じゃねぇと嘗められるからな」
当然、そりゃそうなるな。いきなり八歳やそこらの子供が二十五歳になってたら基本誰でも吃驚するわ。特にエルフの感覚だと成長に百年くらいかかるだろうしな。
「そうですか。それは失礼を。体調のことでしたな。ハハハ。なに、会議終了まではもたせる所存にごさいます。此度の件は流石に大事。ならば老骨に鞭打ってでも空元気を出さねばなりますまい」
背筋は伸び、ハキハキと喋っている。が、確実に無理している。それを隠そうともしていない。それでも、無理をしていますが何か!とでも言わんばかりに、あまりに堂々としている。
「無理はするなよ。ヒノキ。何せ妾と昔話ができる者がもう殆どいないのでな。貴様に死なれては茶会の相手に困る」
「出来る限りの善処は致します」
「……うむ。一先ずはそれでいい」
いやいや、絶対に無理するだろコイツ。ナーシェル、普通に説得諦めたな。本人の意思が固すぎて無理ってことか。
「で、会議会場は?」
今回の目的は不正の告発による現トップの失墜。そのために幹部総会を利用する。この会議は基本、幹部のみが関与できるのだが、唯一、魔術で職員に生中継される方針討論会議を使って不正告発。
職員の目にそれを見せ、判断してもらおうという計画だ。
「あちらに建っているホールの一室を使います。ナーシェル様とヒグ殿は私の補佐官ということで通しておきます。各幹部は三人まで同行者を連れていけますから、今からこちらのパースバーと共に私に続いて会議室に来ていただきたく」
「了解だ。では少し時間を潰すか」
ん?何言ってるんだ。もうすぐ会議が始まるというのに、遂に長年の脳の作動でナーシェルもボケた……ハッ、殺気!怖ッ!
「こう言うときは思わせ振りに遅れて威圧をかけるのがいい。相手を激昂させ、冷静さを奪えれば上出来だとも」
実に冷静に策略を語って見せるが、それ以上考えたら殺すという確固たる意思が宿っていた。
流石にシャルルやエドワード、グレアがいない場所でナーシェルに襲い掛かられればただではすまない。場合によっては死ぬ。
ナーシェルが俺を殺さず上司として扱っているのは、俺を無下にした場合の報復を考えると割に合わない賭けになるからだ。
つまり御味方様々って訳だな。全く、不甲斐ねぇこった。
※※※※※※
「遅い!あのジジイめ。代々仕えているから雇用してやっているというのに。ハッ!エルフもついに耄碌したか。時間も守れぬとは!」
男の怒号に答えるは扉を執事に開かせた老紳士。
「いやはや失礼を。このジジイめ。年のせいで体が思うように動かず、時間がかかってしまいました。従者に迷惑をかける次第で。耄碌。えぇ全く、その通りにございますな」
流石は歴戦の猛者。潜り抜けた修羅場が違う。商会に奉公するものとして、あらゆる人を観察してきたその瞳と、交渉をしてきた胆力は王候貴族を相手取っても必ずや商談を成功させるだろう。
だが、そんな堂々とした威厳を放つヒノキを、会議室にいた者は誰も見ていない。いや、視界には留めているのだが、それよりも別の要因に気を取られている。
圧倒的美貌。その全てが黄金比。金色の絹の毛髪と薄紫の宝石眼に陶磁器のように艶やかな白磁の肌。即ちナーシェル。その美貌と存在感に全神経を奪われていた。
ヒグの仲間の顔面偏差値は平均よりもかなり高い。が、アイリス、扇角あたりは大都市であれば一、二名はいるだろうという程度。ティアは国に一人いるかいないか。
だが、ナーシェルとシャルルは本格的に格が、段階が、位階が違う。天と地の差とはまさにこの事。世界に唯一の美貌と言われてもいいほどの壮観な美麗さ。
どこでどう人という種の性質が変わっても不変であり続ける絶対の女神の黄金比。シャルルは神に近い、条件次第では神すら弑せるだけの領域であるが故に理解できる。もう諦めるしかない存在なのだと。
しかしナーシェルはどうだ?生まれはたかだか人間の貴族。血統の美しさはあれども、美の神の領域に踏み込むものではない。突然変異で生まれた究極個体。それがナーシェル。
普段は面倒事を避けるために、ナーシェルという存在を気に止めなくなるような認識阻害系統の魔術と顔を隠す道具で誤魔化すが、今はその美貌を全面に押し出す。普段はシャルルと同じく素っぴんだというのに、化粧まで自分で施して。
多くの者がその美貌を狙い争い、ナーシェルを卑劣な罠に嵌めようともした。だがその全てを悉くはね除けたその実力がある。それ故に、数名を除いてナーシェルは段々と疎まれ、人間ではないかのように扱われてきたのだが、今はその経験が幸いする。
下劣な目でナーシェルを見るものもいる。だがナーシェルは全てを厭わず、ただの蟲として扱う。冷淡な瞳。それすらもナーシェルを引き立てる。
ある者は純粋に驚いた。ある者はその目と口で侮蔑されることを望んだ。ある者は手に入れたいと願い、ある者は屈服させたいという欲望を抱いた。
御伽の亡霊女王は八百年近い年月で脚色尾ひれが大量につき、悪辣な醜い顔の老婆とされているが、この傾国の美貌を見て誰がそんなことを言えようか。
「ンンッ。宜しいですかな?」
「……そ、そうだな。会議を始めよう」
「え、ええ。早く始めないと」
いや、これナーシェルの思惑全然成功していないどころか斜め明後日の方に飛んでいってるんですけど……。やっぱりエドワード連れてきた方が良かったんじゃねぇの?
人数は、席に座ってる幹部が一二三四、……九人ってとこか。ま、仕方ねぇ。俺は最後を気配消して歩きますか。ナーシェルのお陰で注意が逸れて俺たちが何処の誰か素性を探られないのがありがたい。
「では、定例の売上報告からだな。最近私が範囲拡大に勤め、売上が伸びていることは存じているだろう」
立ち上がっておもむろにそんなことを言い出す小太りの小男。こいつ自分で自分の功績自慢するタイプか。別に自慢する分にはいいけど、何か「存じているだろう」って言い方が結構ムカつくな。
「勢力拡大反対派の皆様も納得いただけただろう。初代も喜んでいる筈だ」
「その方法に問題があると言っている‼」
ヒノキとその他二名が声を上げる。こりゃ、向こうが優勢だな。いや中立派がいるかもしれねぇが、現状の勢力図的には六対三。数からして負けてる。意見も黙殺。
多数決の原理に従うのであれば半数以上、つまり五人を味方につけなければならない。あと二人。さて、どうだか。中立派がいるならそいつらを味方にするのが一番手っ取り早いが、……何となく席の構図的にいなさそうだな。
長方形の席。六人と三人が対岸で睨み合ってる状態。そら、甘い汁吸えるならそっちの方がいいわな。扱い的にはこちらは頭の固い老害といったところか。
厳しいな。
「次に方針会議だが、現状維持で……
「異議あり!」
味方陣営の、幹部にしては少し若い男が叫ぶ。
「現状維持でいい訳がない」
「そうじゃ。最近の不正や賄賂の噂の絶えぬこと絶えぬこと。初代様も喜ぶ?戯け!若僧が調子にのるな!」
こりゃ、荒れるな。
「証拠を出してみろ、しょ、う、こ、を!証拠が無かったら噂はただの噂なんだよ!」
テンプレ極まるセリフを放つ髭面の男に対し、ヒノキも負けてはいない。
「ホホ。火の無いところに煙は立たず。何かあると思ってここ三日で、信頼できる外部組織に探ってもらったわい。さすれば出るわ出るわ錆の数々。さて、開示してくれ」
はいどーも。その外部組織でーす。まぁ、実際のところ調査頑張ったのはエドワードとナーシェルだけどな。
「では、資料配布します。全員分、付き添いの方の分は足りないですが一応数はありますので、」
二十枚ほど刷ってた(人海戦術の手書き)んだが、ちょっと数が足りなそうだ。付き添いの人は二人で一つ使ってもらうしかない。
「では、証拠を読み上げます」




