天使と
更新遅くなりました。
……なろうのパスワード忘れてた。
「さて。アンゴラウス国王陛下サマが庭に集まるように言ってきたが、何があるのやら……」
「ヒグ様、その呼び方に敬意を表す気持ちが微塵も見えないのですが……。それでは困ります。きちんと貴族らしくなるように教育せよと領主様から申し付けられているのですから」
国王に対する適当な敬意に対してアイリスが指摘してくる。どうやら敬意が無いことがバレバレだったようだ。まぁ、最初から隠す気など微塵も無いのだが。
「教育って、親父にか?今の直接雇用主は俺だろ。ならそんな命令聞かなくていい」
「しかし、今まで雇って頂いた恩義があります。雇用主でなくなったとしても、最低限、恩義は返すべきかと」
流石に恩を仇で返す訳にはいかない、というわけか。金銭とか雇用とかではなく恩という感情論になると、こちらからは文句は言えねぇな。そこまで束縛するような悪い上司にはなりたくない。
「ククク。別にあんな子童に敬意は払わずともよいと思うぞ?妾の時代の愚王よりは幾分かましじゃが、あの程度、妾からすれば子童よ。アレではあの喰わせものの神国の教皇には及ばぬな」
そりゃ、こいつ視点なら大概の人間はガキも同然だわな。というか、さらっと不穏なこと言ってくれるな。神国の教皇が喰わせもの?領主になるところが神国のお隣なんですけど……
「安心しろ、創。今であれば教皇とやらも交代しているだろう。人間の寿命は瞬きのように一瞬だからな」
「しれっと心を読むな。それからこの世界の平均寿命は65歳周辺だが、日本は80越えてるんだぞ。医療技術が発達すればマシになる」
「15年程度ではあまり変わらない気もするがのう」
「なに言ってんだ扇角。寿命を15年も延ばすのに人類がどれだけ時と金と労力をかけたと思っている。昔なんて権力者はこぞって不老不死を求めて錬金術の研究をしていたんだぞ」
まぁ、この世界で現在進行形で行われていたりするが。あ、でも水銀は人体にはただの毒だから後で国王に注意しとかねぇとな。昔の間違ってた医学が寿命を逆に縮めることもあるから、こいつらにも民間療法はあまり信じないように注意しとかねぇと……。
まぁ、医学が必要なさそうなのが半分以上なんだが……。むしろ必要なのが俺と扇角くらいだな。アイリス、ナーシェル、グレアに関してはアンデットだし、ティアとエドワードはクソ丈夫だし。
「ヒグ、今私を見て失礼なことを考えなかったか?」
「む、ヒグよ。レディに失礼な眼差しを送るのは控えた方がいいぞ」
「分かってる。いや、お前らべつに寿命とか気にする必要なさそうでいいなと思っただけだ」
「「「「「何か化け物扱いされてる⁉」」」」」
「扇角、お前は常識の範疇に収まってくれよな」
「いや、あの領域には成ろうと思って成れるものではないとおもうのだがのう」
扇角の言う通り、ごもっともな話だ。もし俺がエドワードみたいに成ろうと思っても、人間を辞めない限り決して届かないだろう。生まれた時から負け組確定。何このクソゲー。オワコン乙。
「つか、やっと中庭か。この屋敷無駄に広すぎだろ」
本当に何k㎡あるんだ?固定資産税がどれだけかかるんだか……。考えただけでゾッとするな。でも、そういえばこの国、固定資産税無いんだったか。貴族や豪商にとっては有難いだろうな。
「扇角に乗ればどうだ?もしくは私が魔法で浮かせるか?」
「ククク、アンデットの馬もいるぞ。最も、ゾンビは乗れたものではないし、ゴーストは物理的に乗れない、スケルトンも馬具を着けないと硬すぎてろくに乗れないが、な」
ティアとナーシェルが提案してくる、が、ナーシェルの提案は言うまでもなく勿論脚下だ。一瞬骨の馬ってカッコいいと思ったが、妹とか使用人に怯えられること確定だから辞退しよう。ティアのは……宙に浮くってなんか怖い。
「是非とも、自らに乗って欲しい。アンデットなぞに株を奪われるのは癪に触るしのぅ。別に自らは主が純潔であろうとなかろうと乗せるぞ。あ、だが、ペガサスには乗らんで欲しいかの。あやつらは気にくわんからのぅ」
扇角は最後、ペガサスへの対抗心が滲みでていたが、気にしないでおこう。ていうか、ユニコーンとペガサスって仲悪いのかよ。俺はほぼ同類扱いしてたんだが。
「自分で言ってて虚しくなるが、俺は前世も今世も童貞だよ。───って、本当に何言ってんだ俺は……」
一応純潔ということは伝えたかった。が、人として、男として大事な何かをドブに捨ててしまったような気がする。
「おい、ナーシェル、哀れみの目線を向けるな。何で目を反らしたエドワード。アイリス、おい、長考しだすな。お前らぶっ飛ばすぞ」
こいつら調子にのりやがって……。一回懲らしめたほうがいいのか?まぁ、戦力差を考えたら俺が返り討ちにされるのがオチな気もするが。一度きつく言い聞かせねばならない。
「すまんのぅ。主よ。自らのせいで変な空気を創ってしまって……。自らは、主が何であろうと主を愛するぞ‼」
「そうだとも。ヒグは何があろうともヒグだ」
扇角とティアがフォローしてくるが、微妙にフォローになっていないんだが……。
「その話はもう忘れろ‼俺は自分で歩く。少しでも鍛えとかねぇとな」
「だが、創の健康状態を見るに、不休が続いてかなり衰弱している。今日明日くらいは他の手段に頼ってもいいのではないか?」
「色々ありすぎて多少疲れてるだけだろ。カフェインで誤魔化せる範囲だ。んなもん誤差だ誤差」
後で珈琲飲んだら復活するだろう。まぁ、カフェインの摂取のしすぎは体には毒だから気をつけるか。
珈琲が苦い理由って、舌が毒物に対して反応してるからだし。野生時代の名残だな。舌が苦味を感じるものは大体毒物だ。良薬口に苦しって言うが、その良薬の類いも飲み過ぎたら副作用がでたり、体に悪影響を及ぼす。
「というか。おい、グレア担ぐなそして扇角、態々ユニコーン形態に並んでいい。アイリスも馬具の用意はいらねぇから。……人の話はちゃんと聞けよ」
結果……無理矢理扇角に乗せられた。いや、もうすぐなのに。というか、もう親父とエスタの姿が見えてるし。
「国王待たせて馬に乗って見下ろしながらご登場とは、これはいいご身分だな」
「馬上から失礼する。とでも言えばいいか?」
「降りろよ。普通に」
ですよねー。分かってましたとも。そう言われるのは。だから乗せないでいいって言ったのに。本当に有難迷惑だわ。
「んで。何するんだ?」
「これだ」
「どれだよ」
指事語で話すなよ。お前は俺の前世の祖父母なのか?物の名前が直ぐに出てこないんなら、早めの認知症予防を勧めるか。早期発見、早期治療は大切だ。
「使い魔契約用の魔道具一式だ」
「使い魔?契約魔獣のことか?」
用は何かしら魔獣を使役するってことだが、契約魔獣と呼んでも差し支えないと思うんだが。
「いいえ、ヒグ様。少し違いますよ。契約魔獣は直接的な上下関係、命令権がありません。それに対して使い魔には命令権があります。ただ、それは相手に服従するということですから、自分よりも弱い者しか使役できないことが弱点としてあげられます」
「その通りだ。今回の場合は召喚式で呼び出す。基本的には召喚主より魔力量が低い者が現れる」
魔力量が低い者が、ね。あぁ、それでエスタが呼ばれてるのか。成る程。そういうことね。
「エスタの魔力量ならそこそこ強い奴が出てくるわな。それを護衛にでもするのか。魔獣騒動でエスタが狙われてビビったか。まぁ、この異例の魔力量なら魔獣引き寄せるし、よからぬ組織も引き寄せたりするだろうな。往々にして天才はトラブルホイホイな訳だ」
「その通り何だが、説明役を奪わないでくれ」
「だが断る‼」
親父がそんなこと堂々と言われても……。とでも言いたそうな顔をしているが言わせて貰おう。俺はNOと言える日本人だとも。
なんなら英語をはじめ、前世の七か国語とこの世界の言語三か国分がペラペラな日本人だとも。いや、まぁもう日本人じゃねえかもしれねぇが、心は日本人だ。
「んで。それなら何でまた俺が呼ばれた?魔力量ゼロだぞ」
もう本当に。ニュース番組かよってぐらいに。負け組種族の中の負け組。本当にありがとうございました。クソ。
「だからです。これは高価で魔力量の高い貴族以外に出回ることが多いため、基本的には何かしら呼ばれます。魔力量の低い場合は失敗という例もあるのですが、ゼロの場合はどうなるのでしょうか?なにも呼ばれないのか?それを検証するためです。是非ともご協力を」
俺はモルモットって訳か。今回は俺が実験台。実験してるいつもの逆の立場ってことだな。
「多分、なにも呼ばれないと思うがな。確かに、1とゼロでは大きな差がある。少しでも、ほんの僅かでもあるのと何もないのでは大違い。1なら見下されるが、ゼロという奇妙な存在はどうなるのか、という訳だな。宮廷魔導師のお偉いさんの目に俺がとまったのか?たしか、宮廷魔導師長とか、そんな役職だったろ、あんた」
「流石、ご聡明であられる。勿論、実験である以上、費用はこちらが全負担し、協力金もお渡し致します。どうでしょうか?」
「金額によるな」
実際、受けてやっても構わないのだが、搾り取れるだけ搾り取っておこう。どうせ国の倉庫から出るんだろ。俺を勝手に領主にしやがった国王へのちょっとした嫌がらせだ。
「整いました」
算盤らしきものを弾いていた宮廷魔導師長(仮)が計算終了したと、声をかけてかる。
「十万でいかがでしょう」
破格。想像を遥かに越える額を提示された。が、ここで引き下がってやる気はない。
「その2.5倍だせ」
「……めちゃめちゃ」
俺より先に来ていたエミリアナから苦言が呈される。だが無視。強気に出れるだけの理由もある。連中も俺という被検体はそうそう手に入らない。
仮にも家は大貴族。強制的に実験台にしたらパイプのある貴族を敵に回す。中には援助金を出している貴族だっている。そこからの供給が途絶えるのは痛手。
更に情報操作で民に宮廷魔導師に対する悪印象を与えることもできる。今回の場合は特に、根も葉もちゃんとフルセットで揃っている噂なのだから。
そして最後に、俺を敵に回すとグレアやナーシェル、エドワード、ティアと、そうそうたるメンバーを敵に回すことになる。特にエドワードにかかれば人間など雑魚。
この四点を踏まえて、さて、賢く頭の回る奴はどう考えるか。
「成る程。自分の商品価値を理解した上でこちらが断らないギリギリを見据えた。いくら大貴族の子とはいえ、十万の大金を提示すれば直ぐに食いつくと思いましたが、評価を改めねばなりませんね。いいでしょう。金に糸目はつけなくていいと、国王陛下から言われています。条件をのみましょう」
よっしゃあああッ‼二十五万ゲットだぜ。ククク。俺をうつけと侮ったな。国王が凍りついている。が、無視‼
「あぁ、勿論、金は先払いだよな。逃げるだなんて、赦さねぇぞ?ンン⁉」
国王はぶっ倒れた。自分で言うのもなんだが、今かなりあくどい顔をしていると思う。お、ずっしり思い袋。あれだな。重いけど硬貨も悪くないよな。紙幣にはない重厚感がある。
「というか、先にエスタの分だけでも始めていいか」
やけに疲れた声で親父が問う。
「どうぞ、ご自由に、リラックスしたタイミングで。我々としましても、エスタ様の結果には興味がありますので」
俺もぶっちゃけ、気にならないと言えば嘘になる。どのくらいの奴が出てくるのか。見てみたい。……ってそういえば。
(なぁ、エドワード。エスタの魔力量ってどんぐらいだ?)
他に聞こえないように、小声でエドワードに耳打ちして聞いてみる。ナーシェルに聞くことも考えたが、この中での最優は間違いなくエドワードだ。エドワードの方が正確な意見を出してくれるだろう。
『端的に言うと、最早人間ということを疑う領域だ。エルフなど遥かに越えている。分かりやすい判断基準として竜を使わせてもらうと、下手な魔力量の低い下位竜よりも上だな。しかし普通の竜や悪魔、天使、上位妖精にはおよばない、といったところだ』
成る程、よく分かった。頭がおかしいということがよく分かった。下位とはいえ、竜に魔力量だけで並ぶとか、人間じゃねえ。というかエドワード、念話使えるんだな。原理を解明できていないものを認めるのは科学者として癪だが、便利だな、魔法。
竜を退治したあらゆる実在が確認されている英雄の中にすら竜の魔力を越える者はいなかったぞ。魔法の効率化とか武器とか数とかで優位をとって戦った英雄はいるが、素の力比べで勝てるとか。
しかも幼女だぞ。ロリだぞ。発展途上だ。現状より強くなる可能性大。どう考えてもおかしい。どうしてこうなった。妹に負ける兄貴。……ダサい。超絶ダサい。元々微弱だった兄としての威厳が死に絶える。
「ええっと、始めるね」
そういえばどうやって召喚するのか知らねぇな。見て学ぶか。
あれか、触媒用意して過去の英雄とか呼び出せねぇのか?それとも虹色の石を大量に使ったら強い奴が出てくるのか?なら即効でコンビニ言って白いリンゴが描かれた青いカード買ってくるけど…。というか運営詫び石くれ。メンテ延長していいから。
転生した今では関係ないけど。
しかし、石って着眼点は案外悪くねぇかもな。魔石でブーストとかしてそのあと直ぐに契約で縛ってしまえばより強い奴を配下にできる可能性はある。やってみるか?
いや、今回の実験サンプルとしての役目は「魔力ゼロの場合」だ。魔石使って魔力量誤魔化したら実験にならねぇな。今回は諦めよう。どうせ費用はかからないんだから捨て回だ。
「答よ、答よ、答よ。我が求むは汝。贄はここに」
贄って何か持ってるな。あれは、ミスリルか?たしか魔力を通しやすくて丈夫。魔法の武器に向いているが加工が難しいって言う金属。
「ククク。成る程。ヒグ、どうやら今回はミスリルを代金とするらしいぞ。働いて貰う以上代金は必要だからな。希少金属か、宝石か。あるいは魔道具や魔法的に価値がある品が選ばれる。その中でもミスリルは最上級の一角。勿論、余程価値がある神代の品なら別だがな。しかもかなりの純度。金をかけたな」
違う。あれに見覚えがある。……あれは、親父のコレクションだ。よく見ればお袋がニヤニヤしてる。親父が疲れた声だったのはそういう訳か。
「契約を認めるならばここに馳せ参じ、忠義を示せ。我が名はエスタ・ベルレイズ。出でよ、我が使い魔‼」
青白い雷光。人影、人形魔獣か?
「どうやら我が天敵の類いらしい」
エドワードの天敵⁉悪魔の天敵だから天使か。
「安心せよ。我の目にはアレはエドワードには劣る。ティアより強いが、ナーシェルよりは強くない、といったところか。エドワードが自身にかけている隠蔽も見破れないだろう」
すかさずグレアの解説。悠久の時を生きた竜の観察眼なら信用できる。最悪エドワードに対して突っ掛かってきても問題ない訳だな。
まぁ、そもそもエドワードが悪魔ということに気付かなかったら突っ掛かってくるもクソもない。
光輝く頭上の輪。大きく広げられた純白の翼。質素だが、汚れがなく清潔な白銀色の貫頭衣。金糸のような毛髪に空を写したかのような蒼い眼。人とはかけ離れた美貌。
「……美人」
エスタが漏らす。だが素直に賛成はしかねる。贔屓目かも知れないが、ぶっちゃけ俺の仲間の女性陣の方が美人じゃね。とは思っている。
「問おう、貴女が私のマス「■■■■■をぃ止めろ」
天使の言葉を無理矢理遮る。あれ以上は言わせてはいけない。何がいけないのかはよく分からないし発言は個人の自由だと思うがあれはいけない。青い騎士王がチラつく辺りが特にいけないけど
「なんですか貴方は。天使調べ、全五百の知能ある魔獣に聞いた、召喚された使い魔の言いたい言葉ランキング第一位を邪魔して」
ヤバイ。今度は言う相手間違えたマイフレンドが脳裏に。いや、あのゲーム面白いけどね。結構嵌まったけどね。ダメだ。
「やり直しましょう。先程の言い方に文句があるようですから。
……ンンッ。問おう、貴公が私を求めし主殿でしょうか」
「えっと。はい。ぐだぐだですけど……」
じと目が突き刺さるが無視。
「して。貴女は何用で私の力をお求めでしょうか」
「私、多分色んな人とか魔獣から狙われます。だから、守っ、じゃなくて、戦力が欲しいんです」
魔力があることは将来的には有利だろう。職場なら引く手は余多。勝ち組なのは確かだ。好意的な人もさぞ多いことだろう。
だが、それ以上に否定的で悪意がある人間の多いこと。認めてもらえるように頑張っても無駄だ。頑張れば頑張るだけ認められないのだから。功績を挙げれば挙げるほど叩かれるのだから。
天才とは、命を狙われ、能力を利用され、期待され、そのくせ少しのことで失望され、云われ無くとも嫉妬され、嫌悪され、すり寄られ、見放される。
吹きっさらしの嵐の中を裸で通るのと大差ない。好意悪意問わない感情の嵐。エスタはまだ七歳。まだまだ未熟なたった七歳の子供にはさぞや辛かろう。
変わってやりたいと思う。勝手な感慨で、エスタにとっては変わって欲しくなんてないかもしれないが。
俺の成熟された精神なら並大抵のことには負けない自信がある。そんなもの、直接的に命の危険がある銃弾の嵐の中、医療キットを持って走ることに比べればましだ。
「了解しました。マイマスター」
契約はここに成された。
「さて、次は俺の番か。その対価は用意してあるのか?」
「今回は一回目は何もなしで、二回目はミスリルを持ってやってもらいます」
了解の意を片手を挙げてヒラヒラと振ることで示すと、魔法陣の前に立つ。親父が呪文の紙を出してくるが、いいと手で制する。呪文ならさっき覚えた。
「答よ、答よ、答よ。我が求は汝。贄はここに。契約を認めるならばここに馳せ参じ、忠義を示せ。我が名は桜田創出で……
呪文の途中で空間に亀裂が走る。硝子のようにピキリ、ピキリと言いながら空間が欠け落ちていく。その先を覗けば、そこは深淵のように暗く、黒い。
そしてその深淵から風が、嵐が吹き荒れる。白衣がバサバサと音を立てながら縦横無尽に風に靡く。
「何が起きている‼説明せよ‼」
「国王陛下、これは私にも分かりかねます」
少なくとも原因は人間の理解できるものではないと。最近常識の外のことが多くないか?
「マスター。お下がりを‼どうやら早速我が力の見せ所が出来たようです」
「ククク、ほざけ。貴様ごときが対処できるか‼これは何だ。この体になってから久しく感じなかったエドワード以上の寒気。邪神の欠片でもお出ましかえ?」
「いや、そんな生易しいものではない。我が竜眼の見立てではそれ以上だ」
「見覚えがある。多世界からの干渉だ。創の世界だ。しかしこれは、かつて創の世界で見たベルフェゴール様には劣るが、ルシファー様並みの‼」
「つまり、ヒグ様に関連が⁉」
「というか、俺が召喚してるときに起きてんだ。十中八九、いや、百パーセント俺が原因だろ」
「とにかく逃げるが勝ちかのう」
しかし逃げる間はなく、亀裂が大きくなり、空間が破壊されたとき、それは姿を表した。
「Hello Sou.How are you today?I was lonely.I wanted to see you! 」
英語だった。流暢な発音。発音の差からして、アメリカやオーストラリアではなく、イギリス人だと分かる。
因みに訳すと『今日は、創。気分はいかが?私は寂しかったわ。会いたかった』という感じだ。
不定詞が混じっていたりするが、文章は中学校、いや、教育指導要領が改定されたからもしかしたら小学校で習うかもしれないレベルの簡単な英語。だが、それでもこの世界の住人からすれば訳が分からない謎言語だろう。
「……あれは私の記憶が正しければ英語だろう?創、君のことを呼んでいたが、知り合いか?」
あぁ。何でここにいるのか。何で亀裂の奥から出てきたのかは分からねぇが、一ヶ月に一回くらいのペースで会っていた仲だ。
「I'm fine.But I cannot understand.Why did you come from tean in air,?っておい⁉シャーロット⁉」『まぁ元気だ。でもなんで空間の裂け目から出てきたんだよ?っておい⁉シャーロット⁉』
目にも止まらぬ速さで移動する。
「Please call シャルル。前から言ってたでしょ」
最後はこれまた流暢な日本語で俺の首に鋭い牙をあて、血を啜った。
英語、辞書引きながら書いたのですが、間違っていたら誤字報告お願いします。




