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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
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婚約、そして領主になる

「あの、ところでお義兄さん、父上、婚約者同士の顔見せは一体どこへ?何か壮大な計画を建てていますけど、エミリアナと仲良くしないで大丈夫ですか?」


 何か王子クンが話してくるけど知らない。べ、……別に忘れてた訳じゃないんだからね‼うん。本当に本当に。ウソジャナイ。ワタシウソツカナイ。ゼッタイ。


 何て心中でのツンデレは置いといて。そーっとエミリアナの方へ顔を動かす。……というか男がツンデレしても気持ち悪いだけだな。吐きそう。


 国王?あいつはあからさまギクッという顔をしている。おいおい大丈夫か一国の主のくせにポーカーフェイスも出来なかったらやばくないか、交渉の場とか。


 エミリアナさんは静かに怒っていらっしゃった。表面上は波の無い水面のように静か。穏やかで見るものを安堵させるアルカイック・スマイルを浮かべる小さく、可愛らしい桜色の口元。


 しかし眼が、その双眸は確実に笑っていない。光は消え失せ、しかし明確にこちらを見ている。瞳の最奥はまるで深淵。全く見通せない不気味な深夜の空に映る漆黒の宵闇のよう。


 あー、エミリーもたまにこういうことあったわ。俺が完全に自分の世界に入り込んでてほったらかしにしてもたときになんかじーッとこっち見て怒っとったわ。


 おっと関西弁が出てる。やべぇ。冷静に取り繕おうとしとうけど俺、かなり焦っとるな。


 どうやって謝ろうか。確か前世では……。アレをやるしか無いのか。大丈夫だ。覚悟は、覚悟ならもう、とっくに出来ている。


 俺は、音さえ置き去りにする勢いで空へと飛び立ち、そして、掌、肘、膝、足、そして頭の九点着地を行う。そして仕上げに大声で……


「申し訳ございませんでした‼」


「「「あ、あれは‼」」」


 アイリス、エミリアナ、親父が反応する。まるでペ■ソナの覚醒のような表情で目を見開き、拳を握り締める‼


「知ってるの⁉何で⁉」


 間髪いれずに、エスタがジョ■ョのような深い影をつくりながら、驚愕と疑問ををその瞳の中にに浮かべて振り返る‼


「あれは、太陽国に伝わるという……

「あれをすれば(ほとん)どの事が許されるという……

「究極にして至宝の秘奥技、その名も……


 上から順番にアイリス、エミリアナ、親父。そして息を揃え、タイミングを合わせてその秘奥技の名を叫ぶ!


「DO・GE・ZA☆‼」


 そう、土下座である。完全にプライドを捨てた所業。そんなモノは科学者には必要無い。戦場で死にかけた時にプライドもクソも無い。南アメリカの紛争地帯に行った時に学んだ。


 銃弾が顔の横を掠めれば、もう、何もかもを棄てて命のみを優先しようとしてしまう。


「私はね、誤ってほしいわけじゃないの」

「じゃあどうしろと……」

「償ってほしいの」


 謝罪する前に贖罪せよときたか。思い出した。確かに前世でもエミリーにも同じことを言われたな。全く反省していない。また同じ愚行を侵す。


「ぐ、具体的には……」

「私にも、その、カガク?を教えて欲しいの」


 懐かしい。これはまた、懐かしい台詞を聞くな。そういうことなら喜んで。この世界での科学の布教が出来るなら、それはいいことだ。受けよう。


「その代わり、私は貴族の作法を教えてあげる。直ぐに頭を下げるあたり、高貴なる者のの責務ノブレス・オブリュージュも何も知らないんでしょ?」

「それは償いって言うのか?等価交換の取り引きな気がするが……。まぁ、そういうことなら喜んで」


 (笑)、とでも言うべき笑みを浮かべながら引き受けると返事をする。



※※※※※※



 自室に戻り詳しい話をした。


 科学のなんたるかを説明し、妖術のような怪しいモノという疑惑も解いた。本当に、前世の記憶は無いようだ。


 悲しい半面、嬉しいと喜び、安堵を感じている自分が確かに存在する。恐らく、いや、確実に自殺した彼女にどう話していいか、不安、恐怖を感じていたことから解放されたことに対する安堵だろう。


 いや。この言葉は誤魔化しにすぎない。訂正しよう。俺は逃げられたことに安堵したんだ。弱い。全く、心身共に軟弱惰弱。これでよく、悪魔をも越えると心に誓えたものだ。


 あのときは気分が何故か高揚して、今思えば不可思議で不自然に、まるで誰かに無理矢理、掬い上げられたかのように気持ちが前へ、上へ、龍が大空へ昇るように進んでいった。


 ───ふぅ


 まぁ、いい。と、嘆息と一緒に心の弱さも陰りも濁点も負の面

を全て洗い流し、顔を上げる。



※※※※※※



 ───ガチャ


「おい、お前にやる土地が決まったぞ」


 暫く談笑していると、扉が開け放たれる。


 国王が巻物にしては少し粗末な巻いた古臭い羊皮紙をゴミを捨てるかのような無造作さで投げ渡してくる。慌てて手を伸ばし、掌や腕の上で右に左に何度も跳ねさせながら何とか落とさずにキャッチする。


 危ない。いや、今にして思えば落としてから取った方が時間的には早かった気もするが、つい脊髄反射でしてしまった。


 羊皮紙を開き、びっしりと書かれた字を読む。そして一拍置いて驚愕。せっかく落とさなかった羊皮紙を、結局地に着けることとなった。


「これ、領主の任命書じゃねえか──ッ‼お前馬鹿なの?いや、馬鹿だろ絶対。……こんな子供(ガキ)に任せることじゃねえだろ」


 羊皮紙を破らんばかりに両手で引っ張る。羊皮紙のシワが伸びるが、ボロボロに見えて案外丈夫で意外と破れない。それもそのはず。王国では、いや、大概の国では、重要書類は破れないように防護の魔法が掛けてある。


 つまり、それだけ重要だということだ。


 七歳の子供が領主を務めるなど、普通では有り得ない異例の事態だ。一応、貧困で借金まみれな土地の領主が七、八歳前後の子供に領地を押し付けて夜逃げした例はあるが、本気で運営してもらおうなどと考えて任せたバカは過去一度もいない。


 当然だが。


 そしてそんなバカをまさかまさかの国王がやらかした。ヒグの脳が一つの結論を導きだした。──即ち、……


「この国、終わったな」

 である。

「どういうことだ。説明してもらおうか」


 国王は怒りを静めながら冷静に取り繕って話し掛けてくるが、プルプルと震える、リンゴを軽々と潰してジュースにしてしまいそうな握力で握られた手とつり上がった眉尻から、屈辱と憤激が漏れ出ている。はっきり言って全然ポーカーフェイス出来ていない。


 やっぱりこの国、終わったな。


「どういうこともこういうことも無いわ。さっき言った通りだ。普通に考えて子供が領地運営なんて出来るかド阿呆‼」

「だが、貴様は普通ではない。───出来るだろう?」

「過信しすぎだ。無理、不可能。そんな世迷い言はとっとと諦めることだな。知識云々(うんぬん)、経験云々の前に民衆とか、部下が着いてこない。結果的に破綻する。それがオチだ」


 出来ないという言葉はあまり好きではないが、今回ばかりは流石に不可能と言わざるをえない。どう考えても不可能なものは不可能なのだ。


「まぁ、普通の領地では無理だろうな。だが、今回任せる地は普通などではない。西には魔獣溢れる荒野が、東には我が国含め周辺諸国の国教である聖法教の総本山、聖国レザナリアと隣接、北は武力主義国家サイレムが位置する魔境の地、ガナラチアだ」


 うわー、厄介なとこ持ってきやがったなこいつ。魔獣対策と帝国対策の軍事費で税金と補助金食い潰してて超極貧で俺でも知ってる程に有名。その上、聖国のご機嫌とりも必要。無茶苦茶大変なところじゃねえか。


「俺に何とかしろと?」

「その通り」


 最早言葉がでない。うわーとか、あーとか、語彙力の死んだ魔獣のように低い呻き声が精々だ。よし、断ろう。うん、それが一番だ。


「丁重に御断りさせて頂きます」


 本日二度目の土下座降臨。今回はジャンピングではなく、丁寧かつ落ち着いた所作でゆっくりと頭を下げ、言葉遣いにも気を配り、なるべく失礼にならないよう、下手にでた。というか、今までの言葉は不敬罪認定されてもおかしく無いのだが。


「だが断る」


 NOoooooooォォォ‼というか何故そのネタを知っている⁉


「任せたぞ。もし失敗したら、分かっているな?まぁ、学業との両立は貴様のスペックなら難しくはあるまい。……あぁ、そうだった。この後、エミリアナと一緒に大広間に来い。いいな?」


 人生終了のカウントダウン───開始。

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