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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
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五十年計画

「成る程な、生物や植物的なものならば細胞分裂しているという事象で魔力が減少してもまた増えることが説明出来るのか」


 植物に近いものかもしれないというポツりと洩らした言葉を、エドワードが上手く拾って、顎に手をあてながら纏める。悪魔は知恵が高いとよく言われる由縁を知った。


 確かに、知識では地球の現代科学文明を知っている分、俺の方が上かも知れないが、根本的な思考能力や演算能力ならエドワードが勝っている、いや、エドワードだけではない、それはグレアやティアにも言えることだ。


 ぽっかりと空いている明確な格差は何か、───きっと努力とか根気とかもあるが、才能、もっと言えば種族としての能力差だろう。全く……嫌になる。


 努力とか、鍛練とか修業とか、全部すっ飛ばして生まれながらにして天上の存在がいる。あいつらとマトモに戦えるのは超一流トッププロの魔法使いだけだが、その魔力すら俺には無い。


 どう足掻いても勝てる道理が無い勝負。勝負になってすらいない勝負。


 ───いいじゃねえか。上等だ。


 なら俺はそれすら越えてやろう、


 アルフレッド・ノーベル、アインシュタイン、ガリレオ・ガリレイ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アイザック・ニュートン、エジソン、ニコラ・テスラ、平賀源内、北里柴三郎、野口英世、湯川秀樹。


 更に数えきれない程の科学者、発明家たちの努力、そして先程列挙した以外にも全員記憶しているノーベル賞受賞者たち。その努力の結晶を以て越えてやろう。


 考えろ、考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ───


 人の、いや、生物の中でほかの生物が育つのか?寄生虫的なものか、はたまた使い捨ての自身の細胞か。動物の中で植物に近い物質構成の細胞が?


 いや、この考え方は推理じゃねぇ。唯の単なる視野狭窄。元来考えていた、魔力という物質を、細胞でも何でもないただの分子で出来た物質を作り出しているという説はどうだ。


 謎元素Xとか好き放題考えていたときもあった。魔力がセルロースの他に様々な元素が結び付いた物質なら?


 それを調べるにはどうすればいい?人間の目で見えるものなどこの世のほんの一部、氷山の一角に過ぎない。なら科学の眼の出番だ。


 顕微鏡にレーダー、スキャナー、科学の眼はあらゆるものを見通す。それがあれば……。最新の機械ではスキャンするだけでそれを構成している元素を判別する。


「ヒグ、先程から黒板に書いているのは何だ?」

「顕微鏡……とやらは見たことがあるがのう、他のスキャナー?とやらは知らんのう」


 ティアと扇角が疑問の声をあげる。顕微鏡は作っているが、スキャナーは当然無い。細胞分裂ならば今の顕微鏡でも見れると思うが……出来れば電子顕微鏡が欲しいな。


「あ、スキャナーってあれですよね。光視(スキャン)の魔法を図面に表せるって言う……」

「あー、その認識であってる。大正解。10ポイントプレゼントだ。因みに、貯めても何もない」

「ないんかーい」


 アイリスにヒグポイントをあげた。貯めても何も無いという暴露に思わずエスタが突っ込んでくる。中々いい突っ込みだ。芸能人の才能があるのかもしれない。


「まぁ、……無いし、時間もかなり経って日が暮れてきた。一旦ここで打ち止めかな」

「ふむ、では次回はどうするのだ?無いものをどおするかが問題だと思うが」

「決まってるだろ。……無いなら───作るッ‼」


 言い切る。堂々と。今までしてきたように。今までしてきたことを、これからも、ずっと───。その精神は不撓不屈也。


「そうだな。……まぁ、だいたいざっくり五十年くらいの企画だな」

「「「「長ッ‼」」」」「「短ッ‼」」


 アイリス、扇角、ティア、ナーシェルが長いと、グレアとエドワードが短いと叫んだ。


「人の身だと寿命でポックリ逝っているかも知れませんよ⁉」

「いやいや、あの膨大過密な科学史を駆け上るには短すぎる‼合計何百年分踏破しなければならないのか、本気で理解しているのか⁉」


 アイリスとグレアが同時にマシンガンのように言葉を捲し立てる。わー、何ミリ口径のマシンガンだろうなー。クソどうでもいいこと考えてるな、俺……。というか同時に言われても聖徳太子でもあるまいに、分からん、聞き取れん、理解できん。


「……知らん‼俺がやると言ったらやる‼俺の好きにする。貴様らに拒否権はある。アイリスとエドワード、ナーシェル以外はな‼アイリスは逃がさん。エドワードとナーシェルはこれで貸しを返せ。他、扇角、ティア、グレアは嫌なら去れ」


 先のマシンガンも真っ青、大砲すら霧に霞む、まるでミサイルを発射したかのような大声で怒鳴り、意地を以て我を通す。しれっと逃がさない発言をされているアイリスは困惑顔である。


「いや、我も借りがある故、手伝おう。そもあの事件は我が力量を見誤った我が失策」


 最初に返答したのはグレア。無理、無茶、無謀と言わんばかりに批評していたが、協力はするようだ。


「まぁ、自らも借りを持つ者。それに、そんなものは無くても手伝うが……」

「というか、ここにいる者の大概はヒグに借りがあるだろう」


 扇角が上司の無茶ぶりに、呆れながらも何とかして健気に応えようとする部下のような顔をして答える。


 ティアは冷静な発言。……そういえばそうだった。


 ───雷電───


 というか借りが無い奴が人望の値がゼロの俺に着いてくる訳がない。レイではなくゼロだからな。ゼロは完全に無いという意味だ。


 だからもし温度でゼロ度とか言ってる奴がいたら間違い。温度の0はそのものがない訳ではない。レイ度という温度が確かに存在するからな……。たまに、ごく稀に間違える奴がいる。


 漢字や算用数字で書いたらどっちも零とか0ってかくからややこしい。


 しかし、貸しを理由に強制労働。ねぇ。………あれれー、可笑しいなーこれだとどう考えても俺の方が悪役なんだがー?何て


「おい、勝手に雰囲気を作るな。一先ずの結論をくれ」


 国王がなにやら文句を言ってくる。一先ずの結論をって矛盾してるだろ。結論は最後に出すものだから、……この場合なんて言ったらいいんだ?


「ハイ、取り敢えず。2つ説があって一、魔力細胞説。体細胞とか単細胞生物、細菌やらのお仲間っていう説だ。で、もう一つが物質説で、体の器官で食った飯やら水やらで魔力を作っているっていう説の二説、まぁ二説目は今までにも提唱されていたが、何しろ確実なことは言えねぇな。というか何処から発生してるかにもよる」

「魔力の発生源は恐らく心臓だ。心臓から血液に混ざって魔力が流れ、魔力菅という神経的な物で命令を伝えていると考えられている」


 エドワードが情報を流す。しかし心臓か。研究する気が失せる場所だな。幾らなんでも死体の心臓を使って実験するのは倫理的に、道徳的にヤバイ気がする。というか絶対にヤバイ。する奴がいたらそいつは狂人だ。


 魔力菅に魔力が通っているって言うのが昔の通説だったらしいが、果たしてどちらが本当なのか。

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