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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
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慣れることの恐ろしさ

 エドワードを研究室の外に連れ出し、詰め寄る。余りの驚きに事情をほとんど飲み込めていないが、こいつが関わっていることは確かだ。


「アレは、エミリーでいいんか?」

「ああ、恐らくな」


 相手がエドワードだから油断した。思わず日本語、それも関西弁が出てしまった。


 エドワードからは何んとも煮え切らない返答が返ってくる。恐らくも何も、あそこまでそっくりで名前まで似ているなんて偶然があり得るのか?


 数学的に考えれば偶然など存在せず、見えない変数で全ては決まっていて、それを把握できないから偶然などと呼称しているだけなのだが、一旦それは置いておく。


 何にせよ、あそこまで酷似しているのに無関係ということは無いだろう。


「エミリー、彼女を転生させた時期は調度戦争の真っ最中でな、正確に把握はできていないのだ。何か命に関わる危機があれば対応できるようにはしていたが、部下に任せていたのでな。部下に確認をとらないことには」

「バカかてめぇは」

「面目次第もない。至急、確認をとろう。ただ……」


 すらすらと出てきていた言葉が突然とまり、しどろもどろになるエドワード。何か言いにくいことがあるかのように。ただこれだけはしっかり聞いておかねばならない。もう、彼女に関わる資格が無いかもしれなくても。


「ただ、なんや?」

「ただ……、創、君のように不慮の事故や他殺で現世に未練があったならともかく、自殺したと言うのに無確認で転生させたのだから、もしかすると私は嫌われているかもな」


 そうだ。あいつは、……あいつは自殺したんだ。もし、もし俺が助けていたら。手を差し伸べていたら、きっとそんなことにはならなかった。


「創、君のことだ。どうせまた、自責しているのだろうが、そんな必要は無い。君とて、事情があっただろう」

「そんなん、言い訳やろ。俺が怖がっただけや」


「それに、俺は、……」


 アイリスのときに少しの違和感を感じ、牛頭のときには決定的な違和感を感じた。俺は、


「仲間が死ぬんに慣れてもたんや」



※※※※※



 その頃 室内


「※■・■■ωψД」(アイリスたちにはこう聞こえている)


 外から聞こえる謎の声。よく分からない言語らしきもの。いったい、ヒグ様たちは何を話しているのか。


 あの少女がきた瞬間、ヒグ様はあり得ない、まるでこの世に存在しないはずのものを見たかのように戸惑い、青ざめていた。


「ふむ、アレが聞いていた異界内の一国の言語か。中々に興味深い。なるほど、今ならアレを使うだけでこの世界の者からすれば暗号そのものよな。今度伝授してもらうとするか」


 ナーシェルさん、私を起こしてくれたおとぎ話の亡霊女王。おとぎ話よりは怖くなさそう。


 ナーシェルさんがクツクツと笑いながら発言する。その発言からしてアレはヒグ様のもといた世界、地球のニホンと言う国の言葉らしい。


「なあ、知らない人が増えてるのだが……信頼してもいいのか?」


 レオン様、ヒグ様のお父上が聞いてくる。……動く死体(アンデット)と悪魔。……確かに信用出来ない気がしなくも無い。いや、多分ヒグ様が大丈夫とおっしゃっていなかったら信用していないと思う。


 すると、レオン様の契約魔獣が姿を現す。鱗は純白で、まるで発光しているかのような美しさを感じるドラコン。なんだろう。以前は強大な力を持っていると思ったが、あのグレアというヒュドラとエドワードさんに比べれば、大したことが無いように感じる。


 しかし、滅多に人前に出ないドラコンの筈だが、どういう風の吹き回しなのだろうか?


「レオンよ。あの者たちは強大なる力の持ち主。戦いとなれば真っ先に逃げよ」

「お前がそこまで言うとは。ヒグは何処であんな知り合いを作ったのだ?」


 確かにヒグ様はどこからともなく何だかよく分からないけど強い知り合いを作ってきますから……。最早苦笑いしか出来ない。多分顔は引きつってるだろうなー(現実逃避)


 ガチャ


「すまん。待たせた」


 ヒグ様が何故か妹のエスタ様や、……王子の、確か、ナントカさんを連れて部屋に入ってくる。名前は忘れました。



※※※※※※



「それに負い目を感じているのか?ニンゲンとは奇妙だな。決して人死にを悲しむなという訳では無いが……、一つ言っておこう。他者の死には慣れておいた方が楽だぞ」


 ゾッとするくらい寒い、冷たい言葉だった。人死に自体にはかなり昔から慣れている。敵に対しては情けをかけないし、何処の誰とも知らぬ人物であれば悼みはするが、そこまで悲しまない。


 こいつは問題の本質を理解していない。問題の本質は、恐怖したいるのは他者の死に慣れることではない。問題なのは、家族や仲間、大切な者の死にすら慣れてしまうことだ。


「兄さん、と……誰?」

「お久し振りです、お義兄さん」


 エスタと、王子の、……ナントカが現れた。名前は、……忘れた。まあ、今はどうでもいいか。


「取り敢えず、お前にお義兄さんと呼ばれる筋合いはない」

「何を言っているんだ。君は」


 エドワードが呆れたように言ってくる。でもやっぱりこれはやっておかないと。妹が変な男に騙されることだけは避けたい。


「えっと、妹のエミリアナと父が向かったはずなのですが」

「ああ。中で待ってもらってる。そろそろ入るか」

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