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剣と魔法と科学の世界  作者: インドア猫
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真実

「ハッ。悪魔とは言え、大きく出たな。その余裕、へし折ってやろうぞ」


「貴様ごときに可能なはずがあるまい。油断は敗北を呼ぶ。それは認めよう。そして今の俺は油断している。だがしかし‼負けることはない」


互いに絶対なる自信に裏打ちされて放った言葉。しかしこれが戦いである以上、真実となる言葉は限られる。エドワードの右手が挙がる。深淵とも思える深い闇から獣が出でる。目に赤い光を灯し、一斉に襲い掛かる。


その行く手を阻むは骸達。多種多様なアンデットが現れ、相手をする。その中には東藤無二斎と呼ばれた男も入っている。実力者が二人では分が悪いかと思われたが、結果を言うと全くの杞憂。


数の不利という言葉は、常識は、圧倒的なまでの力に蹂躙される運命を辿ることとなった。常日頃から数こそは力。戦争は数。という現代の地球において当たり前の常識を持論にしていたヒグとしては応援したくもあり、逆に否定したくもある。


無二斎の刀を影の爪で受け流し、その鳩尾に蹴りを入れる。まるで木屑のように飛んでいく人。飛んでいった無二斎がぶつかった壁に出来た亀裂。それがその蹴りの威力を示している。味方でなければ絶望的な化物。幼い時の自分によくやったと褒めてやりたい。


闇の魔弾がエドワードを強襲。蹴りの後の硬直を狙ったナーシェルの策。それを力を以て正面から粉砕する。小細工など効かないと。そう言わんばかりに。攻撃を障壁で受け止め、その障壁が無傷であることで攻撃は届かないと伝える。


対するナーシェルもそんなことは百も承知。口上として大口を叩いたが、そもそも自分の方が格上だなんて傲慢はない。策を粉砕する力には更なる小細工を以て小癪に泥臭く対応する。それこそが流儀にして礼儀。


障壁が展開されれば向こうからの遠距離攻撃はない。そう見切り、アンデット達を横に待機させていた。障壁を迂回し、襲い掛かるアンデット。障壁を消そうとすれば魔弾が容赦なく襲い掛かる。障壁を使って防いだのではない。障壁を使わされたのだ。


更にナーシェルは弧を描く弾道の弾を混ぜ、障壁の範囲を広げさせる。一分以内に障壁は半径1メートルの半円となっていた。そこに今まで倒れたふりをしていた無二斎が縮地、距離を詰め、抜刀術の構えで一閃。エドワードの右腕が宙を舞う。


「ククク、油断が敗因となったか?まぁ、そんなものは言い訳にすぎぬがな」


「調子に乗るな。小娘。言っただろう。それとも耳が悪いのか?」

一秒。一秒後にエドワードは消え失せ・・・・・

「負けることはない。今度は耳元で言ったが、これでも聞こえないか?」


ナーシェルの耳元で囁かれる声。ほっそりとして美しい、病的なまでの死人特有の白磁の首筋に垂れ、なぞる少量の血化粧。そしてその元凶の闇の剣。


「間合いが無くなれば、数や魔法の利も失せる。魔法感知に一切引っ掛からないその妙技。さすがはデーモンロードか。ククク、敗けじゃ、負け。煮るなり焼くなり好きにせい」


「俺は貴様に興味などない。創、どうする?創の判断に任せる」


いつのまにかナーシェルと無二斎の体には闇の鎖が絡み付いており、完全に動きを封じている。劣勢に見えた筈が一瞬にして逆転。これが種族としての力量差。最強四種の一角、悪魔。


「懐かしいな、創って呼ばれるの。こっちじゃずっとヒグだったからな・・・・悪い気はしないが、それはそうとして展開急過ぎてあんまりついていけてないんだが、取り合えず、ひさしぶりでいいのか?」

「ああ、ずっと見守らせてもらっていたが、直接会うのはひさしぶりだな。約束を果たそうとした結果、このような結果になった。すまない」

「と言うかなんだ?俺って。お前がそんな一人称使ってるの初めて見たわ。クハハッ。傑作だよ。全然キャラあってねぇ」

「そうか?こちらの方が悪魔らしくていいかと思ってな」


俺はずっと気になっていて、心の奥底で蟠っていて、何年経っても消えることこのない、今でも瘡蓋が剥がれ、腐り、痛むキズについて、意を決して問う。


「エミリーは?」


その問いに対し、エドワードは、ただ一言。下を向き、辛さを飲み込むような表情をして、疼痛を堪え、ただ一言。謝罪を述べた。


「すまない」

続けて更に

「私からは多くは語れない。創、お前と同じであり、違うとしか言えない。だがしかし、近い未来いずれ分かる。いずれ出逢う。それは運命であり、必然だ。それは約束しよう」


「煮え切らない答えだが、まぁいい。今はこいつの処遇か。とは言え、不法侵入して暴力で捩じ伏せて、かなり外道だな。そこらひっくるめて責任とる。俺のモノにならないか?」


「どういう意味だ?」

「お前さんがさっき言ったのと似て非なる意味。俺の部下にならないか?」

「この裏切りの亡霊女王を部下にするか。ククク、器が大きいのか?それとも、死にたいのか?」

「器なんざクソ程小さいし、死にたくなんてねえな。というかお前さん、本当に裏切ったのか?」


その質問は軽い調子で、世間話のように投げ掛けられた。しかしそれは相手にとってそうとは限らない。相手は世間話として話すべきではないと考えていたとしたら?その配慮が足らなかった。


ぞっとし、背骨が、脳髄が、氷と入れ替わったのかと思う程の寒気が走る。エドワードはあまり気にした様子はないが、他の面々は呼吸を一時、忘れる程だった。脳が酸素を求め、荒い呼吸が再開される。


「どういう意味で言っている、妾に対する侮辱か?それとも、真実を知っていて尚その態度か。ならば貴様もあの王国の阿呆どもと同じ穴の貉か」


「話す時の呼吸、表情、何かを堪えるような話し方。否定の意志が見え隠れしていた。何よりも、お前さんと似たような顔をしていた奴に心当たりがある」


「貴様ごときに何が分かる⁉」


「ミリ単位も分かるつもりは無いし、もう二度と分かりたくも体験したくもないな。大事な人を失う体験なんて」

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